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コロナ禍×入試改革で高校生は何を考え、どう行動したのか

 2021年春の入学者選抜は、大学入試改革に加え新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、従来通りが通用しない事態となった。高校では学習指導要領改訂を睨み、答えが一つではない課題に取り組む探究学習が広がっている。変化のただなかにおいて、高校生はどのように学び、どのように成長し、進路に向かうのか。今回、リアルな声を聞くために今春入学した大学1年生と高校3年生にオンラインで座談会に参加してもらった。彼・彼女達の生の声から実態を探ってみた。


写真 小笠原さん、金重さん、松原さん



Ⅰ 大学入試改革の影響


 今年春、学力の3要素を総合的に判断することとされた入試改革1期生が大学に入学した。入学者選抜においては、大学入学共通テストをめぐる混乱もあり、高校も大学も新たな対応が求められたが、当事者である高校生はこの変化をどのように受け止めているのだろうか。座談会に参加した大学生からは、こうなると聞かされてきた入試改革とは違うものになった、という厳しい意見も出された。

──大学入試改革で何がどう変わるのか、皆さんの高校生活への影響はありましたか。

小笠原 萌さん/大学1年生 中学の時、教育熱心な家庭の友人が多くて、塾から「君達の代は入試が大きく変わるからしっかり勉強しろよ」と言われたと聞いていました。高校に入ったら、高3で入試改革に当たる初めての学年ということもあってか先生達が熱心で、学校の中でも外でも積極的に色んなことに挑戦しなさいと言われました。ですが私自身は、そうなんだ、というぐらいで重く受け止めてはきませんでした。

金重光祐さん/高校3年生 僕は医学部医学科を目指し ているんですが、ある大学では入試での評価方法が変わると聞きました。今までの医学部は学力だけを見て面接はおまけみたいな感じだったけれど、今の1回生からは面接でも人物をちゃんと見て、本当にこの人が医師になるべきかを見極める。あるいは、研究医が向くのか、臨床医になるべきなのかを見るということでした。

 オープンキャンパスに参加した大学では小論文と面接重視ということだったので、医療について自分の考えをしっかり持つ必要があると意識しています。

松原沙奈さん/高校3年生 学力テストでは文章を読ん だり書いたりする量が多くなったと聞きました。そのためなのか、学校では国語も英語も文章を書くことが多くなりました。今、ちょっと大変なのが、宿題に出されるとほかの学習に手が回らないこと。大学入試改革と関係があるのかどうかは分からないのですが、高校では、コロナ前まではグループワークや意見を発表するような授業が増えたことも変化だと思っています。


入試改革「聞いていたのとは違う印象も」

──学習歴の活用も提唱されていますが、ポートフォリオに記録を残すことはしていますか。

小笠原 高校時代はポートフォリオを書かされました。なるべくこれが埋まるように色んなことをやりなさい、と言われていましたが、私は活動的ではなくいつも空白のまま。ポートフォリオに向かう度に、自分が書くことがないことに落ち込みました。とはいえ、自分は何をしてどう考え、どう変わったのか、振り返る癖はついたと思います。それは大学でも就活でも役立つだろうと思っています。

 もう一つ、積極的に活動している友達には影響を受けました。ボランティアや海外に短期留学、高校生でもできるインターンに参加したり、起業した友達もいました。

松原 ポートフォリオはうちの高校でも書けと言われていますが、多分、みんな書いてないと思います。まず、アプリを開かないので存在を忘れているし、開こうとしてもシステムがうまく動かなかったり。習慣化していないので、なかなか書くことがありません。

──そのほかに、入試改革の影響を感じることはありますか。

金重 僕の学校は半分以上が指定校推薦や総合型選抜で進学するし、医学部を目指す人もほとんどいないので、正直、入試に関して学校よりも、塾頼みです。ただ、医療に関しての自分の考えを深めるという点では、医学部を目指す友達と議論をすることがよくあります。コロナ禍の今でなければ、こんなに考えるきっかけや材料はなかったと思います。

小笠原 色んな活動をしてきた同級生達は、早い段階で総合型や学校推薦型で進学先が決まっていきましたが、私自身は一般選抜で受験しましたし、結果的に影響はなかったと思っています。大学入試改革は共通テストの方針が二転三転して、元々こう変わるよ、と聞かされていたのとは違ったものになったという印象です。

 もし私自身が入試を設計できるなら、堅苦しい面接じゃなくて、本来のキャラで話して、自分の良さを伝えられる場を作りたいです。

松原 そうですね、勉強が得意じゃなくても探究が好きとか、手先が器用とか。自分の個性を出して大学に合うかどうか見てくれる方向に入試が変わるといいなと思います。


Ⅱ 新型コロナウイルス感染拡大の影響


 昨年3月の休校から始まり、分散登校、行事や修学旅行の中止、授業においてはグループワークの禁止やリモート学習など、高校生活はかつてないものになった。また、大学もリアルでのオープンキャンパス中止が相次ぎ、高校生の進路選択行動にも制限が出た。今回の座談会の中では、オンライン開催により遠方に足を運ばずともオープンキャンパスに参加できたことのメリットや、進学先の所在地もコロナ前後で変わったという声が聞かれた。


休校中の苦しい自習。生活ペースの乱れも

──新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受けて、生活はどう変わりましたか。休校期間中は、どう過ごしていましたか。

金重 3月から休校が始まり、その後はしばらく分散登校が続きました。学校からは課題範囲が示されて、休校明けにテストをするという指示が。1年生の春休み前からだったので、受験生と比べたらヤバい感じではなかったと思いますが、勉強の癖をつけていかないと受験に間に合わないという焦りがあり苦しかったです。

 初めての範囲を自習でマスターするのは大変です。先生の指導がないから、自分の理解が合っているのか間違っているのか分からない。考え方を一つ間違えたら、その後の理解が崩れていくんじゃないか、という不安。休校明けの授業も、自分達で勉強したからいいやろ、と自習範囲は飛ばして進んでいったので…。塾の先生とLINEで相談できたのが救いでした。

松原 最初は授業がなくてラッキー!と思ったんですが (笑)。いざ休校になったら、自分がどれだけ学校で勉強してたかが分かりました。勉強をしようにも、何から手をつけたらいいかが分からなくって。

 学校再開直後は分散登校で始発に乗らないと間に合わなくなってしまったので、8時起きから5時起きに。体調を崩してしばらくしんどい時期もありました。ちなみに去年の岡山県立高校の夏休みは9日間、全国最短らしいです。

小笠原 私も学校に行かなくていいのが最初はうれし かった(笑)。うちの学校はみんながパソコンやネット環境があるわけではないから、という理由でオンライン授業はなくて、基本自習。科目によっては課題が出ました。学校に行かなくなると勉強癖がなくなって生活リズムはガタガタ。学校が始まってからもペースを戻すのが大変でした。

 去年は受験生でしたが、一緒に勉強頑張ろうって励まし合う友達もいなくて、愚痴も言えなかった。3カ月間の休校中、気分は落ち込んでいく一方でした。

──ほかに、学校生活に変化はあったのでしょうか。

松原  休校が明けてからのことなんですが、それまでグループワークが多くて、にぎやかで楽しかった授業が静かになってしまったのが寂しいです。感染拡大防止のため、ということで話す時もコソコソ話のように小さな声で。議論をしたり、考えを発表する代わりに、1人でする作業が多くなりました。


オープンキャンパスに参加できず後悔

──進路選択のプロセスについてはどんな影響があったでしょうか。

小笠原 1、2年生の時にオープンキャンパスに行っていなくて、インターネットと大学から送ってもらった資料だけで情報収集をしました。影響は結構あったなと思います。

 大学という場所そのものに一度も行ったことがないまま、初めて入試で足を踏み入れました。大学には「行けたらいいな」ぐらいで、勉強に身が入らなかったんですけど、試験当日に、建物が素敵でここ行きたい!と強く思った大学があって。受験前に行っていたらモチベーションが違ったんじゃないかと思います。

 やっぱり写真より実物を見た方が雰囲気が分かるし、オープンキャンパスに行けてたら学生の様子も分かったと思います。高校生にはオープンキャンパスじゃなくても、大学には足を運んだほうがいいよ!と言いたいですね。

──オンラインでオープンキャンパスを開催した大学もありました。

金重 関西圏の大学のオンラインオープンキャンパスに参加したんですが、学長の話やキャンパス紹介、模擬講義の録画された動画を見るだけで、YouTube見るのと変わらない感じでした。

 僕は行きたい学部を決めていたので、1年生の時にオープンキャンパスに行ったことはありました。高2までにほかの大学のオープンキャンパスにも参加して、高3は勉強に時間を費やそうと思っていたんですが、コロナで計画が狂いました。詳細な入試情報は行って、会って、聞かないと分からないこともあるので、直接話せる場がほしいです。

小笠原 私が参加したオンラインオープンキャンパス は、リアルタイム配信でしたよ。予約制で定員があって、zoomでの開催でした。校舎紹介は編集された動画でちょっとリアリティに欠けましたが、大学紹介と入試説明はその場で話してくれて、在校生の声も聞けました。東北地方にある大学で、オープンキャンパスのためだけに行くかというと微妙だったので、却ってありがたかったです。


実家と行き来しやすい大学に志望変更

──志望校の選択基準に影響はありましたか。

松原 私は全国の教員免許の取れる大学を端から調べ て、他県の大学のオープンキャンパスに高1で参加しました。その大学に一番行きたいと思っていたのですが、今は諦めています。

 コロナ以前は、家から遠くてもいいと思って関東の大学も候補に入っていたんです。今は関西より遠くは親の反応が気になって…。家から近いほうが安心すると思うし、私も、家には頻繁に帰ってきたいので、今は中国地方の大学に範囲を狭めて調べています。

 まだ第一希望は決まっていません。選択基準の一つは、高校の探究学習で取り組んでいる活動を、大学でも続けていけるのかどうか。研究をどうやっているのか、学生に直接聞いてみたいと思っています。

金重 僕も東京の大学に行きたいと思っていたんですが、志望を変えました。東京からだと移動に気を遣わなければならないし、実家にすぐに帰れないこともあると考えてのことです。関西圏だったら、大阪から少し離れている滋賀県でも車だったら1時間以内、電車でも1時間半ぐらいで通えます。家から通うほうが安全、と今は考えています。


Ⅲ 高校での探究学習


 入試改革は高大接続改革であり、高校のカリキュラムも学力の三要素を育てるものにシフトしつつある。次年度から本格実施される新学習指導要領においては、これまでの「総合的な学習の時間」が「総合的な探究の時間」に変更されるなど、大学の学びともつながる「探究」が重要視されている。「自己のあり方生き方と一体的で不可分な課題に取り組む」こととされる探究学習は、高校生のキャリア形成、進路選択にも大きな影響を与えているようだ。

──高校での取り組みを大学でも続けていきたいというお話がありましたが、何を探究しているのですか。

松原 総合的な探究の時間で、VR(バーチャルリアリ ティ)を使った授業を作っています。中学生向けの、短い国語の予習動画。これから、実際に中学生に受けてもらう予定です。1つ上の先輩が市内のVR制作会社と組んで、瀬戸高校の広報キャラクターを作る活動をしていたのを見て、先生も作ったら面白いんじゃないかと思ったんです。

 コロナでオンライン授業が話題になりましたが、どうせなら自分の好きな先生の授業を受けたいと思って、無料アプリを使って理想のイケメン先生を自分で動かしました。声は、校内でも人気の先生に頼んで入れてもらいました。

 自分のやりたいことを提案して、実行に移していくのが楽しくて、ほかにもできることがないか考えたい。せっかく作ったキャラクターだから、もっと活用したいです。


授業だけではなく生徒会でもプロジェクト実行

──ほかの皆さんの取り組みも教えてください。

金重 2年生の時は、学校のある泉大津市の課題につい て自分達で調べて、改善のための提案をしました。1年間、グループで活動してまとめ、2月に校内でプレゼンするという流れでした。発表会には市の人にも来てもらって、その後、生徒の提案を学校から市役所に渡しているようです。

 僕は、医療分野の認知症の課題に取り組む班に入りました。いわゆる「勉強」って感じじゃなくて、一般の人と認知症の人の脳のMRI 画像を比較したり、医学的なこともできたのが楽しかったです。認知症は独り身の人に多いので、行政が主導してコミュニケーションの場を設けることや、医師会が一般の人に分かりやすい、認知症についての講演をしてもらうことを提案しました。

小笠原 私の行っていた高校は2年生と3年生の時に課 題研究という時間があって、論文を書きました。自分で集めたデータを必ず入れる、という条件でテーマは何でもOKです。

 飽きないで最後までできるテーマにしようと思って、自分の好きなアーティストがどれぐらい収益を上げているのかを試算しました。ファンにインタビューをしたり、数字が公表されているアーティストとの比較をしました。最後にレジュメとスライドを作って、15分間で発表するのですが、テーマ的にちょっと恥ずかしかったですね(笑)。

 志望する学部に合わせたテーマで取り組んで、総合型選抜の武器にした子もいて、今思えば、自分の志望学部に近いものにしておけばよかったかも、と思います。


探究学習を通じて自分の力を実感

──探究学習を通じて、どんな力がついたと感じていますか。

小笠原 高校では最後の論文を2、3日の徹夜で書き上 げる子が多く、私もその1人です。2日で1万字書きました。大学では、毎時間レポートを課される授業がありますが、数百字のレポートは苦になりません

金重 30人のグループで、自分が中心になって進めていたのですが、みんな色んな意見を出してくれたし、仲良くなることができました。意見の違うたくさんの人をまとめる力がついたと思っています。

 授業ではありませんが、生徒会長としては学校内でのコロナ感染防止のプロジェクトに取り組みました。コロナに関する情報はかなりチェックして、大阪の状況を把握し、危機感を持っていました。少しでも医療現場の負担を減らしたかったのも動機の一つ。実際にやったのは、生徒会でマスクを買って、つけてこなかった人に配布するという活動です。行事の開催について、先生と話し合うこともしました。学校では、行動力を発揮する場面もあったと思います。

松原 私は自分の好きなことを追求したり、納得するところまで考えたり調べる、人の話を聞いたりして考えを深めていくことが得意です。探究活動を通じて発揮してきた力で、実際にやってきたからこそ自信を持ってそう言えます。


充実した今を将来につなげたい

──高校生活で培った力や深めた考えを、どう大学やその先の進路につなげていきたいと考えていますか。

小笠原 高校生2人の話を、こんな活動してすごい!と 思いながら聞いていました。私には2人のように明らかにすごい、というものはないけれど、人と話すのが好きで誰とでも話ができます。

 小学生の時から客室乗務員に憧れてきましたが、この先、募集があるかは分かりません。今考えているのは、外資系で公用語が英語の会社で働くこと。大学受験で行動が遅かったという後悔から、1年生の今から就職先について調べています。

 実践的な英語を身につけることを目指しているので、今は必修に加えて選択講座もとって週4日は英語漬け。入ったのは第一志望の大学ではなかったけれど、英語を使う、会話をする機会が多くて充実しています。

金重 コロナ感染拡大防止や認知症予防について校内で 発信をしてきたから、大学ではさらにレベルの高い知識を得て、ほかの医療分野でも発信ができるようになりたいです。

 僕は地域医療に興味があって、1回生から地域医療の現場に出て、体験的に学ぶ機会があればいいと思っています。机上の勉強だけではなくて、自分の目で見て、経験を積みながら、色んなことを考えたいです。

松原 入試の場面では問題解決の力、発想力、行動力をみてもらいたいです。上手にはしゃべれないかもしれないけど、発表や前に出るのも得意なので、それも評価してもらえたら。

  私は教育学部志望で、VRを使った授業について研究しながら、実際に活動もできる大学を探しています。住んでいるのが田舎で、小中学校で1クラスの人数が減っているのも問題意識の1つです。大学で学びたいのは、どうしたら子どもたちが望む学習環境を作ってあげることができるのか。そして、いつかVRを使った授業ができる学校を作ることを夢見ています。



(文/江森 真矢子)


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