産学連携・文理連携 興味と探求の幸せな偶然をひき起こすアカデミックシアターの仕掛け/近畿大学 アカデミックシアター

近畿大学キャンパス


世耕経営戦略本部長、萩原管理部長

 大学は「社会の公器」であり、より一層の産学連携が期待されている。しかし、全学を挙げて地域や産業界とどのように連携を進めていくかについては、課題も多い。産学連携は、もはや理系だけのものではなく、文理の連携も必要になってくる。キャンパス戦略の中にどのように、そうした理念や取り組みを反映させていくか。そして、教職員や学生のやる気に火をつけていくか、新たなステージに向けたチャレンジが始まっている。

100周年に向けた「超近大プロジェクト」

 2017年にオープンした近畿大学東大阪キャンパスの学術拠点「ACADEMIC THEATER(アカデミックシアター)」。4つの号館の間を埋めるようにランダムに配置されたガラスキューブのユニークな造形は、今や近畿大学のシンボル的存在だ。

 このアカデミックシアターは、近畿大学が掲げる東大阪キャンパスの大規模整備「超近大プロジェクト」の一環として造られた。「超近大プロジェクト」は2014年7月にスタートし、2025年の100周年に向けて現在も進行中。昨年9月に次世代型新食堂「DNS POWER CAFE」と「THE CHARGING PIT & DINER」がオープンし、東大阪キャンパスは今も進化を続けている。

志願者数の推移

 キャンパスの中心となる学術拠点アカデミックシアターは理事長のビジョンから造られた。「理事長が掲げたのは3つのテーマでした。1つは大学のシンボルになる建物を造ること。東大の赤門のように、近大といえばこの建物と思い浮かべられるような施設です。2つ目はどこにもない図書館を造ること。そして3つ目が文系理系や産学の垣根を越え、連携の拠点となるような場所にすることでした」(管理部萩原理実氏)。

 そしてできあがったアカデミックシアターはこれまでの大学になかったような斬新なものだ。ガラスキューブ部分は2階建てで、その通路が全て図書館。図書館づくりは、監修として携わった編集者・松岡正剛氏のアイデアがふんだんに盛り込まれ、これまでの司書分類とは異なった陳列がユニークだ。

 図書館は4つの号館をつなげる通路の役割も担い、入館管理のフラップバーがない開かれた場所。また通路は複雑に入り乱れていて、知らない場所に迷い込むこともある。「あえて迷うようにしています。そこで本との偶然の出合いを経験してほしい」(萩原氏)。つまりそれも計算のうち。

学部を越えたプロジェクトの拠点

 図書館を回遊する途中にはACTと呼ばれるガラス張りのスペースが42カ所あり、学部を越えた学生のプロジェクトの拠点として稼働している。プロジェクトは年に一度審査があり、文理学部を越えたもの、産学連携のものに限られる。見事パスしたプロジェクトがACTのスペースを割り当てられ、活動の拠点とすることができる。プロジェクトにはUHA味覚糖と近畿大学の産学連携などもあり、ここから新商品も生まれている。

 こういった産学連携の窓口となっているのが、アカデミックシアターの一角を占める「オープン・キャリアフィールド」だ。産学連携だけでなく就職支援、卒業生の校友会、自治体との連携といった機能を備え、大学と社会をつなげる窓口が集約されている点が特徴。社会との接点を一元化することによって、より効率的で一体的な実学支援の実現に結びつけようという仕組みだ。

 図書館で知識を広げ、ACTで実学にチャレンジする。近畿大学の建学の精神である「実学教育と人格の陶とうや冶」を目指した校舎として、様々なアイデアが盛り込まれたアカデミックシアター。オープンして3年となり、「学生達が勉強している姿を見る機会が多くなりました」と萩原氏は語る。開かれた図書館とガラス張りの環境は、学習行動の可視化にもつながっている。理想的な校舎を造るため、職員達は他大学、塾、予備校、海外の施設までも見て回り検討を重ねてきたそうだ。ACTのガラス張りのスペースも計画当初は「見られると落ち着かない」等の反対意見があったが、同様の施設を視察してうまくいくと確信を得た。「大学は外にアピールしていく場でなければいけないと考えています。ACTも現在、順調に活用されています」(経営戦略本部 世耕氏)。

 「将来は図書館を24時間開放して、学生達がいつでも学べる場所にしたいですね」(世耕氏)。創立100周年に向けてまだまだ新しい驚きが飛び出してきそうだ。



アカデミックシアター夜景

アカデミックシアター全景。ガラスキューブ状の図書館を通って4つの号館を行き来できるようになっている。夜にライトアップされた姿も美しい。


近畿大学図書館1

図書館2階は「DONDEN」と呼ばれるエリア。「笑いとオチの現象学」「恋する女の生きる道」「革命ごっこと戦争モード」など独自の32テーマで書棚が作られ、漫画と新書が配置されている。1階に行くと、そこは天井まである書棚が圧巻の「NOAH」と呼ばれるエリア。大学らしいテーマの書籍がずらりと並ぶ。2階DONDENのマンガで関心を持ったら、その横に関連した新書でスムーズに興味を広げられる。さらに深く知りたくなったら1階NOAHに専門書もある。興味をきっかけに学生の行動を促す仕組みになっている。


近畿大学図書館2

1階と2階の図書館は通路でもある。静まり返ることなく、適度な人の動きがあることで心地のよい空気が流れる。様々な椅子や机があり、学生は勉強に集中できるお気に入りの場所を見つけることができる。


近畿大学プロジェクトルーム

ACTは全てガラス張りのプロジェクトルーム。プロジェクトの活動が誰でも外から見えるようになっている。全てをオープンにすることで、見る人も見られる人もいい刺激を受ける。


近畿大学プロジェクトルーム

【写真右】
2019年9月にオープンした食堂「DNSPOWER CAFÉ」。カロリーやたんぱく質量を計算したメニューをスマホで予約し、お弁当として受け取ることもできる。

【写真左】
広々とした自習室は24時間利用可。スマホのアプリで席の予約もできる。写真は女性専用の自習室。深夜でも安心して勉強に没頭できる。

(文 木原昌子)



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