デジタルで新しいビジネス価値を創出するプロデューサーを養成 デジタルビジネスデザインコース/産業能率大学

産業能率大学キャンパス

POINT
  • 1925年創立の日本産業能率研究所を起源とし、即戦力となるプロフェッショナル人材の育成を通じ、産業界の発展に貢献し続けてきた大学
  • 経営学部、情報マネジメント学部の2学部を展開し、入学定員810名に対し一般入試・センター利用入試で8085名の志願者を集める(2020年度入試)
  • 2021年4月情報マネジメント学部にデジタルビジネスデザインコースを設置し、デジタルを用いて社会に新しい価値を創出できる人材を育成する


産業能率大学(以下、産能大)は情報マネジメント学部現代マネジメント学科で2年次から選択できるコースとして、デジタルビジネスデザインコース(以下、DBD)を設置する。その設置趣旨について、川野邊 誠教授にお話を伺った。

新しい価値創出に軸足を置いたデジタルプロデューサーを育成する

 川野邊教授はデジタルコンテンツ系企業の顧問を務める経験から、「日本のデジタル領域には人材育成において、おざなりにされている部分がある」と言う。

 具体的には、理系を中心に技術者を育成するスキームは確立しているが、技術をどのようにビジネスに活用するかを考える人材の育成フレームが未成熟だという。「日本はどちらかというとニーズの充足が重視され、純粋な発想から入ることに関してはあまり重きを置いてこなかった。この風潮がこのまま続くようでは、デジタル領域において日本が発展する可能性は低いのではないでしょうか」。では活用を見据えた時にどのようなことが必要なのか。「本来AIやIoTというのはそれ単体で捉えるものではありません。横断・連携しなければソリューションはできず、お互いが発展しない。そのため、いかに関連づけながら全体として学ぶかが肝」と川野邊教授は言う。そして「新しい価値を創る」マインドセットが重要だという。

 「新しい価値創出」について、川野邊教授は昨今の「問題解決型学習」との違いをこう話す。「問題解決とは既存の問題に対して解決に取り組み、マイナスをプラスに転じようとする考え方。それはそれで必要ですが、DBDで育成したいのは、今ある問題を解決するに留まらず、“まだないものを創る”という思考を持つ人材です。新しい技術でどのような価値を創造するのかを発想し、その実現に向けてプランニングすることに重きを置きます」。

 グローバルで見ると当然視されるこうした観点が、日本は非常に弱いという。「日本は既存の物事を発展させることは得意ですが、ゼロから1を生み出すことが苦手といわれています。しかし日進月歩の情報技術において、何を使うかはもとより、何を実現したいのかを構想できなければ、細かい方法論に振り回されて目的を見失ってしまう。技術的に何ができて何ができないのかを押さえたうえで、いかに速くビジネスで価値創出できるかが勝負です」。既に顕在化している問題を技術で解決していく人材ではなく、世の中をより良くしていくためのプランニングをゼロベースで思考できる人材を育てる。

 また、産能大はマネジメント領域において社会で活躍する人材を育成してきた歴史と実績があり、DBDはその基盤を活かす絶好のチャンスともいえる。そうした競争優位性を発揮できることも設置の追い風となった。

一次情報の収集と考察の蓄積がプロデュースの軸足

 価値創出に必要な発想力はどのように培われるのだろうか。川野邊教授は、「特定の科目で育成するのではない」と言う。「そこは課題解決のフレームと同様ですが、そもそも問題意識がなければ、問題に気づくことすらできない。あるものをそのまま受け取る消費者マインドのままでは、新たな価値につながるような発想はできない」。川野邊教授は学生に対し、「一次情報フォルダになれ」と声掛けしているという。これは、「加工された二次情報や伝聞ではなく、原典や実体験情報をたくさん集めるという意味」である。「誰かのフィルターがかかっていない情報や、自ら五感を使って獲得した情報について多角的に観察し、人と違う視点で物事を考察することで、そこに技術を掛け合わせた価値創出を見出すことができるようになる。それこそがDBDにおけるプロデュースの軸足です」。

 川野邊教授によると、人間の発信パターンには以下3つのタイプがある。

  • 情報を得て深い理解をせず反射的に発信してしまう人
  • 興味・関心を持って自分なりに考えて拡散する人
  • 見て知って体験して、その体験を踏まえて自らの考えをのせて発信する人

 世の中で圧倒的に多いのが①だが、「プロデューサーにとっては当然③が一番大事」と川野邊教授は強調する。これは言い換えれば、放っておけばただの「コト」でしかないものに意味付けと価値付けができるということである。

必要分野を最初から横断的に積み重ねる融合型カリキュラム

 カリキュラムのポイントは大きく4つある。

  • 先端的なデジタル分野の知識×ビジネスに強い産能大ならではのビジネスプロデュース力の育成
  • 分野横断の科目構成×学年間交流を取り入れた演習授業による縦横無尽なカリキュラム
  • 先端的デジタル分野の専門家+ビジネスの現場を熟知した教員による実践的な学び
  • 盤石な就職実績

 コースカリキュラムは講義と演習をセットにし、仕入れた知識は即使うという発想で設計されている(図1)。2年次後期から演習科目が配当されているが、ここでは「成果物のクオリティを求めているわけではない」と川野邊教授は言う。まずはやってみて、その後の学習に必要な感覚を掴む。演習の後で本来のビジネス企画にまとめるスキーム(コスト計算やマーケティング手法等)を学んでいく順番だ。演習科目の一部では科目間において数回2~4年生の合同授業を導入する。これが「縦」。2年生は先輩が企業に提案する様子を見て憧れを持ち、その一方でその提案が企業側に評価される厳しさ等、様々な刺激を受ける。高学年も、慣れによって発想力が委縮し行き詰まっていた学習が後輩の新鮮な意見でリフレッシュされる、後輩にアドバイスを求められることで知識の再定着が図れる等、双方のメリットが大きいという。


図1 DBDコースカリキュラム概観
図1 DBDコースカリキュラム概観


 次に「横」は、講義科目の学び方だ。通常大学の授業は1科目で1分野が当たり前だが、DBDでは図2に挙げる5領域を個別にセグメント化せず、どの授業でもこの5領域全てを取り扱う。

 入門から応用まで、通底する概念についてオムニバスで学ぶことで、5分野が地層のように積み重なっていく。後から足し算するのではなく、一見ばらばらなものが授業の中でつながり、融合していくイメージだ。

 この利点は大きく3点ある。まず、常に活用を前提に横のつながりを意識して学べること。次に、頻繁に反復学習が生じるため、確実な知識定着が見込めること。最後に、学習対象領域の情報更新が可能であることだ。「通常の半期科目では、科目が終わるとその後の学習対象領域の更新情報をインプットできません。しかしこのやり方ならば、日進月歩の各領域の最新情報を学生がキャッチアップできる」(川野邊教授)。最初から必要領域を全て押さえ、徐々にその中でバージョンとレベルを上げていく修得スキームだ。これにより個人の方向性が徐々に磨かれ、自分なりの型ができてくるという。


図2 DBDで扱う5領域
図2 DBDで扱う5領域


産業分野全体のデジタルシフトを背景にニーズの高い人材を輩出

 教育体制としては内部の教員に加えて、研究者や実業界での活躍人材を適宜招聘する。「スポーツやコンテンツに限らず第一次産業含め、あらゆるものがデジタルシフトする中で、こうしたコース設置は業界問わずニーズが高い。産学が同じ方向を向いて同じスタートラインに立っている分野です。学生が産業界と同じ視点に立てる滅多にないチャンスであり、産学がしっかりタッグを組める。双方win-winの関係性です」。

 今のところ募集は好調だ。「今年既に実施した5回のオンラインOCで600名を集客し、注目度も非常に高い。むしろデジタルネイティブ世代にとっては普通の概念なのかもしれません」と川野邊教授の声は明るい。ビジネスに強い産能大らしい価値創出が多く生まれることを期待したい。

カレッジマネジメント編集部 鹿島 梓(2020/8/25)