小規模ならではの環境と道徳教育でグローバルリーダーを育成する/麗澤大学 国際学部

POINT
  • 1935年開設の道徳科学専攻塾を前身とし、道徳教育を基盤とした大学
  • 創立者の廣池千九郎氏は、知徳一体の教育を基本とし、学生生徒の心に仁愛の精神を培い、その上に現代の科学・技術、知識を修得させ、国家・社会の発展と人類の安心・平和・幸福の実現に寄与できる人物を育成する理念を掲げた
  • 既設の外国語学部、経済学部に加え、2020年4月国際学部を新設予定


 麗澤大学は2020年に国際学部を新設する。多くの大学が国際系の学部を展開する首都圏において、何故今国際学部なのか。学長補佐で国際学部設置準備担当の野林靖彦教授にお話をうかがった。

大学教育の質向上のフラッグシップ

 2020年に開設する国際学部は多文化共生・国際協力の観点から国際領域の専門家を育成する国際学科(日本学・国際コミュニケーション専攻、国際交流・国際協力専攻)と、英語でビジネスを学ぶグローバルビジネス学科(グローバルビジネス専攻)の2学科3専攻構成である。新学部で育成するのは「どんな環境でも異質のものを変換してつなぐタフさと応用力を持った人材、変化に立ち向かうマインドを持つ人材」であるという。それは「国際社会でリーダーシップをとれる人材ということでもあります」と野林学長補佐は言う。

 何故このタイミングで国際学部かという問いに対して、野林学長補佐はこう続ける。「国際系は社会からの人材育成ニーズも高い注目領域であり、受験マーケットでも注目されている分野であることが理由の1つです。大学教育の質保証や学修成果可視化等に象徴されますが、昨今の実利を求める風潮の中で、人文系は厳しい側面に立たされており、社会ニーズを今まで以上にくみ取る必要がある。本学が既に持っているリソースを再編して対応するべく、かねてより外国語学部の改組を構想してきました」。

 なお、麗澤大学の事業計画書(2018年度)には「学部改組に伴う大学教育の質を上げていくことを最優先事項とする」とある。既存の教育体制の単なるリニューアルではなく、学部の多様性は担保しつつ、フラッグシップとなる学部を作る必要があった。国際学部は新たなマーケットを開拓するだけでなく、大学全体の教育の質向上を牽引し他に展開できる知見を蓄える役割も担うのである。

 では、首都圏では多くの大学が既に先行する国際マーケットにおいて、他大学にない魅力をどう作るのか。それについては、麗澤大学のルーツが軸になるという。「本学の国際学部は、“外”一辺倒の志向ではなく、“足元”への眼差しを基盤とした国際人を養成したい。小手先のスキルではなく、人間性を高める教育こそ真の教育の名に値すると考えます。リーダーとは品格を持ち、知識だけでなく英知を身につけた人間です」。海外だけでなく、地域の多様な人々の間でコーディネーターとして機能するような人材を想定する中、「知識をよく知る人材」「人格が優れている人材」どちらかだけではだめで、1つに調和すべきと考えたという。留学や語学はその方法論であり、まずは建学の理念である「知徳一体」を国際フィールドで具体化しようとしているとも言える。

「つなぐ」カリキュラムで新しい知を創出する

 カリキュラムのキーワードはDiversity(多様性)×Linkage(つなぐ)。人文科学(語学、日本文化研究、多文化共生学、国際交流・協力等)と社会科学(グローバル経営・経済、国際開発論、国際関係学、国際地域研究等)をつなぐため、6つのカテゴリーからカリキュラムを構成した。実社会において人文科学と社会科学は強く連関するものだが、学問上は別々になっている。しかし、実際の社会活動においては、社会を科学する社会科学だけではなく、人間理解やコミュニケーション・思考力等の人文科学的アプローチも必要となる。実社会に合わせたハイブリッドな組み合せで教育を提供したい。つないだことで理解しづらくならないよう配慮しながら、幅広い学問分野を武器に、新しい知を創出することのできる人材を育成したい。目指すのは多角的な視野を持つリーダーだ。具体的には、図表に示す6つのカテゴリーを自由に組み合わせ、かつそれらを「つなぐ」方法論・思考方法を学ぶことで、麗澤流の国際学カリキュラムとして設計した。「連関として学びの幅を捉えるのが大事です」と野林学長補佐は話す。1つひとつが独立するのではなく、重なりつつずれていき、隣接する領域を巻き込んで、トータルで幅広い基盤を形成する。こうした思考により、抽象と現実がつながっていくという。

図表 6つのカテゴリーを軸にしたカリキュラム

実社会の縮図で多様な経験を積む

 英知を培うには経験値も重要だ。国際学部では外国語学部同等の留学システムを備え、短期の海外プロジェクト等を含め、卒業までに一度は海外に出て“つなぐ”学びを実践してみることを推奨している。また、ダブルディグリーを採用し、例えば3年麗澤大学国際学部で学び、残り1年をオーストラリアの大学で学ぶといったスタイルが可能だ。オーストラリアでは学位修得者には2年間の就労ビザが与えられるため、現地企業への就職活動を行うこともできる。グローバルキャリアパスの可能性がタイムラグなく用意されているのは大きなメリットであろう。

 正規留学生が多いのも特徴の1つである。短期留学や交換留学ではなく、彼らを社会に輩出するべく育成する対象として捉えている。日本語や日本文化を学びに来る留学生との接点が多いことは、日本人学生にもメリットが大きいという。日本学・国際コミュニケーション専攻では概ね1/3程度は多様な文化背景を持つ学生を確保する。「留学生と日本人学生の合同編成クラスで多文化共生について活発にディスカッションしたり、多様なメンバーと多様な価値の中で過ごすことで、他者を理解し、異質の価値をつなげることが新しい価値を生むのだということを、肌感覚を持って理解できるようになります」と野林学長補佐は言う。世界は協働・共生社会であり、学生が将来飛び込む実社会の縮図を教室に作る意義は大きい。

 麗澤大学はショルダーキャッチに「小規模にこだわる。国際性にこだわる。」を掲げる。「小規模を守ることは教育上メリットが大きい」と野林学長補佐は言う。「教員からは学生が見える、学生からは教員が見える。概ね40名程度の小規模授業が多く、個人の志向や成長にコミットした指導を行いやすいのも特徴です「少人数の教室に多様性を確保することで、異文化交流の経験を積み、友と切磋琢磨して、卒業後に始まる本当の学びに備えてほしい。多くの経験で人格を磨き、英知を培って、個人として生きていく自信をつけてほしい」。大学と社会をつなぐ国際教育の開始まで、あと1年を切った。

カレッジマネジメント編集部 鹿島 梓(2019/9/24)