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【TOP INTERVIEW】タフな人間力を身につけた『拓殖人材』を育てる


鈴木 昭一氏

拓殖大学 学長 鈴木 昭一(すずき しょういち)
1964年生まれ
1992年 明治大学大学院経営学研究科博士後期課程 満期退学
1992年 拓殖大学商学部助手
1993年 拓殖大学商学部専任講師
1996年 拓殖大学商学部助教授
1999年 米国カリフォルニア州立大学ヘイワード校(現イーストベイ校)客員研究員
2005年 拓殖大学商学部教授
2011年 拓殖大学商学部長
2015年 拓殖大学大学院商学研究科委員長
2017年 拓殖大学副学長
2021年 拓殖大学学長


120年にわたる国際大学のパイオニア

 本学は東京都文京区と八王子市に二つのキャンパスを持ち、商学部、政経学部、外国語学部、国際学部の文系4学部、工学部の理系1学部、学部の上位に連なる6つの大学院を持つ、学生数約9000人を擁する総合大学です。

 創立は1900年、当時日本の統治下にあった台湾の発展に貢献する人材の育成を目的に、桂太郎公爵が設立した台湾協会学校を起源とします。建学の精神「積極進取の気概とあらゆる民族から敬慕されるに値する教養と品格を具えた有為な人材の育成」が示すように、創立以来120年にわたり、多くの卒業生が世界各地で現地の人達と汗を流しその地の発展に貢献してきた歴史を持つ、国際大学のパイオニアです。

 15言語もの選択肢を持つ外国語教育とアジア、アメリカ、オセアニア、ヨーロッパ、アフリカの世界中に広がる留学制度を整備しています。また毎年多くの外国人留学生を積極的に受け入れています。学内外含め様々な国の学生同士の交流が深まるよう支援してきた国際教育の伝統校なのです。

教育改革『教育ルネサンス2020』

 2015年、創立120周年にあたる2020年に向け、拓殖大学『教育ルネサンス2020』グランドデザイン(以下、『2020』)を策定しました。これは、国際大学としての伝統を守りつつ、建学の精神と教育方針を現代的に解釈し、教育改革の3つの柱として「専門性」「人間性」「国際性」を備えた人材の育成を掲げ、国際的視野を持ち、タフな人間力を身につけたグローバル人材『拓殖人材』の育成を目指すものです。2020年までの5年間で、教育・研究、国際貢献、社会連携、学生生活支援、社会的責任をテーマに改革・改善計画を推進してきました。

 人材育成の柱として最も力を入れた「ゼミナール教育の強化・充実」においては、地域貢献プロジェクト活動で社会人基礎力育成グランプリ全国決勝大会にて大賞を受賞するゼミも現れるなど、着実な成果に繋がっています。

 同じく「専門性としての職業教育の充実」においては、本学の卒業生で、日本フランチャイズチェーン協会(以下JFA)の山本善政会長(当時)の協力で、2016年度からJFA会員企業のトップや実務責任者による寄付講座「流通マーケティング特殊講義A(フランチャイズビジネス研究)」を開講してきました。2020年度からは、商学部の専門科目「フランチャイズビジネス論」として継承し、本学の実学教育の一つの特徴になっています。

 一方、「国際性」の強化では、2020年の4月に外国語学部国際日本語学科を新設しました。定員50名のうち、日本人と外国人留学生が半々の環境で、相互に意識しあうことで日本語教育能力のみならず日本文化の発信者になれる人材の育成を目指しています。さらに2021年度から、商学部と政経学部に外国人留学生特別枠による定員増も認可されました。都内23区で適用を受けたのは本学が初めてで、日本語学校の教職員が選ぶ留学生に勧めたい進学先「日本留学AWARDS」を5年連続入賞、2020年には大賞を受賞するなど、外国人留学生教育においても本学の実績には定評があります。

『教育ルネサンス2030』が目指すもの

 今年度から、2020年の10年先を見据えた中長期計画『教育ルネサンス2030』(以下、『2030』)がスタートしました。2030年に向けた課題意識として、2040年の18歳人口減、SDGsへの対応、AI、IoTなど第4次産業革命による急激な社会変化への対応などが挙げられます。特に「SDGs(継続可能な開発目標)」の理念は本学の建学の精神と近しく共通する理想を持つと考えます。そこで『2030』は『2020』での改革を発展的に継承、昇華させ、3つの柱「専門性」「人間性」「国際性」はそのままに、従来のカリキュラムに新たにSDGsの理念を組み入れたカリキュラムを展開していきます。

 データサイエンスやAI関連の志望者が多いことから、AIやIoTに対応した情報工学科の定員増(現在の80名から105名へ)を2022年度に向けて認可申請中です。同時に、社会科学系学部にもデータリテラシーやAIリテラシーの基礎的知識が必要になるため、こちらも今後『2030』でカリキュラムの中に積極的に取り込んでいく予定です。

 さらに、2022年度から授業時間を現行の90分(半期15週)から105分(半期13週)に変更します。105分とすることで柔軟な授業展開が可能となり、アクティブラーニングの手法を用いて、多様で魅力的な授業を行い学生の学びへの関心を高められると考えます。その結果、授業期間が半期15週から13週に短縮となり、海外留学やインターンシップなどの正課外活動の時間を確保し、より充実した学生生活を送ることができるようになります。

人間性の涵養が最終目標

 タフな人間力を身につけた『拓殖人材』を育てるうえで、私は3つの柱のうちの「人間性」が一番大事だと思います。教育ルネサンスの取り組みの一つに「オレンジプロジェクトチーム」があります。これは『2020』推進時に立ち上げた、本学のスクールカラーであり、世界を拓く新しい果実「オレンジ」を「拓殖人材」として育てる、学生、教員、職員が一体となって取り組む全学を挙げての人材育成プロジェクトです。今年4月からSDGsの理念を取り入れ、学生支援、キャリア支援、地域防災、地域活性、女子学生満足度向上といった5つのチームで活動しています。他にも学生の積極的な対外活動を評価し、支援する学生チャレンジ企画、現代の松下村塾として次世代リーダーを育成する桂太郎塾など、学生に授業外でも多くのことを学べる機会を様々用意しています。また、本学は外国人留学生も多いため、正課外活動のコミュニティーに属することで、地域、国籍を問わず多様な価値観の中に身を置き、他者の考え方を吸収しながら自分の考え方を確立していくという積み重ねを日常的に経験します。

 このような様々な活動や学びの機会、多くの人やコミュニティーでの交流や経験の積み重ねによって、我々が最終的に目指す人間性の涵養に近づいていくのだろうと思います。正課と共に正課外活動の充実もまた人間性の涵養を実現するための全学的教育改革の狙いといえます。


(撮影 松本 朋之)


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