26年ぶりの学部新設でグローバル・スペシャリスト育成を目指す/中央大学 国際経営学部 国際情報学部

POINT
  • 1885年創設された英吉利法律学校を起源とし、現在6学部24学科を擁する総合大学
  • 多摩に文系5学部、後楽園に理工学部を設置するほか、都心にロースクール、ビジネススクールを展開
  • 中長期ビジョンでは国際系学部、スポーツ系学部の新設、キャンパスのグローバル化等を幅広く謳う


26年ぶりの学部設置で異領域融合の新たな価値創出を目指す

 中央大学(以下、中央)は2019年4月に国際経営学部・国際情報学部の2学部を開設する。6学部から8学部体制への大きな変更。学部格の新設では1993年総合政策学部を設置して以来、26年ぶりの動きである。

 26年前、総合政策学部設置時に必要性が叫ばれていたのは「国際性」と「学際性」であったという。この2つは時代に応じて変化しつつ、より一層必要性が増している要素だ。国際性は今や語学力だけでなく地球規模の課題に取り組む視点や、多様性の中で協働する力を指す。一方で学際性とは、当時は2つ以上の学問を横断する意味合いが強かったが、「昨今は異分野横断ではなく、融合と言うべきもの。2つ以上が相乗的に組み合わさって新しい価値を生み出すものです」と福原紀彦学長は言う。新学部ではそうした概念を包括し、国際経営、法学情報という2領域をそれぞれ融合した学問体系を展開する。

グローバル・スペシャリストにかける中央のプライド

 中央は2012年に採択されたグローバル人材育成推進事業で3つの人材像育成を謳い、それら育成のために教育課程の国際通用性向上、グローバル人材として求められる能力の育成、学生の語学力向上のための取り組み、教員のグローバル教育力の向上、日本人学生の留学を促進する環境整備等を挙げている。3つの人材像とは、グローバル・ジェネラリスト、グローバル・リーダー、グローバル・スペシャリストだ。このうちグローバル・スペシャリストは総合大学としては独特である。語学力を含めた国際性と専門性を兼ね備えた人材の育成を指すが、ここには中央の歴史と伝統に裏打ちされた視座がある。「中央の人材養成分野での実績と言えば、高度専門職人材の育成が挙げられるでしょう」と福原学長は話す。白門の異名をとる法曹界への人材輩出のみならず、公務員等の公的組織リーダー、商学部・経済学部が主として担ってきたビジネスリーダーも数多い。「様々な領域でリーダーたるべく必要な資質・能力を学部教育で培ってきた実績が中央にはある。それが専門性にもつながる。あらゆる事象がボーダーレスにグローバル化する以上、専門性もグローバル対応が必要です」と福原学長は言う。

 「実績が示すように、中央は将来の社会のあらゆる分野をリードする力を養う大学であると定義づけた時、社会を構成する要素の中には時代によって変化するものと、変化しない普遍的なものがあります」と福原学長は続ける。「これまでの中央は後者を重視し伝統的な学部構成で教育を行ってきましたが、2つの新学部は前者にスコープを当てたものでもあります」。即ち、グローバル化激しい企業経営に対応できる人材の育成や、情報化社会で新たに必要となる資質・能力を育む学部の必要性である。と言っても、この2つは新規に出てきたものではなく、中央にはもともと教育研究の1つとして存在していたが、あくまで既存の法学ありき、経営学ありきの中で、プラスアルファの付加価値として設計されたものであった。「それでは十分とは言えません。中央がこれまで培ってきた役割を今後も担うためには、つまり社会に貢献する人材を育成するには、時代に合わせた内容をメインで体系化した学部が必要でした」(福原学長)。

早期から目的意識を持たせるカリキュラム

 人材育成において中央が大切にしているのは、「大学で何を学ぶべきかを社会の中で見出させる」ことであるという。「まずは自分が何を学ぶべきなのか、目的意識を持たせるために、キャリアのためではなく学問のためのアカデミックインターンシップや留学等を早い段階で経験させるのが肝です。実学を志す以上、何のために学ぶのか、学んだ内容をどう活かすのかという意識を社会の中に見いだせなければ、机上の空論になりかねません」と福原学長は話す。

 国際経営学部では「経営学を英語で学ぶ」をコンセプトとし、オールイングリッシュのカリキュラムが手厚いサポートとともに設計されている。語学力と国際的な視野を培う意識を並行して養うため、1年次短期留学プログラムが必修で、2・3年次には海外インターンシップの機会も用意されている。迎え入れる留学生も多い。

 国際情報学部では、情報社会を法学的アプローチで解し、技術と人間をつなぐ秩序を担う人材を育成する。そのために情報の仕組み情報の法学グローバル教養の掛け算を謳う。情報学にも法学にも精通したマルチエキスパート養成のため、まずは徹底して基礎となる理論を横断的に学ぶ。キャンパスは官公庁が集まる霞ヶ関やビジネス街大手町にも近い市ヶ谷田町キャンパス。立地条件から多くを学び取れる環境で、様々な活躍モデルが提示され、志向に沿った履修ができるカリキュラムが設計されている。

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新学部のイノベーションが既存学部のリノベーションにつながる

 新学部設置は大学力を活性化する意味合いも大きいという。「教育手法にせよ、支援体制にせよ、ゼロから設計する新しい学部だからこそチャレンジできることがあります。そうした取り組みが既存学部に与える波及効果は少なくない。良い刺激となり、大学全体の活性化につながります」と福原学長は言う。基盤とする部分を大がかりに変革するというより、そうした環境変化が自然な新陳代謝を促すのであろう。今後はグローバル館(仮称)・国際教育寮(仮称)を整備し、新しい学びのスタイルに合わせた新棟も多摩キャンパスに建設予定だ。

 「我々がやるべきは、時代性に感覚を研ぎ澄ませ、必要となる人材育成の体制を構築すること。これまで、学部設置までいかなくとも、国際系学科の設置やFLP(ファカルティリンケージ・プログラム)整備、大学院強化等、派手ではないかもしれませんが、その時期に即したやるべきことは独自にやってきました。大学としてやるべきは、建学以来の精神に裏打ちされた実績や期待値を独自性として昇華させ、良い教育を提供する努力をいつも惜しまないこと、でしょう」(福原学長)。淡々と時代を見据え、粛々と打ち手を講じる。地道に真面目に本質を問い続ける。それが中央らしさなのかもしれない。

編集部 鹿島梓(2018/12/11)