三輪キャンパス/長野県立大学

長野県立大学三輪キャンパス エントランス



 長野県立大学は、2018年4月に開学した長野県で初めての4年制総合県立大学である。「リーダー輩出・地域イノベーション・グローバル発信」をそのミッションとして掲げている。経営学を学び、ビジネスや地域社会のリーダーとなる人材の育成を目指す「グローバルマネジメント学部」と、食を通じた健康のプロフェッショナルと、保育・幼児教育のリーダーとなる人材の育成を目指す「健康発達学部」の2学部3学科の学びの場は、長野市内にある三輪キャンパスと後町(ごちょう)キャンパスの2カ所。そのうち、ここ三輪キャンパスは、多様な学びの活動全般を支える知の拠点となっている。

 2014年2月に長野県が発表した「新県立大学施設整備基本方針」を基に進められたこの施設の設計思想の一つが、教室だけではなくキャンパス全体が学びの空間となるということ。そしてそれによって多様な交流が生まれることである。「グローバルな視野を持ったリーダーにとって不可欠なのが、高いコミュニケーションの力。新しいキャンパスでは、学生同士や教員と学生との間に自由闊達な議論が生まれ、学びが深まる場となることを想定した」と総務・経営企画課 課長補佐 逸見真洋氏は話す。また、ガラス張りの教室や吹き抜けが多く、視界を遮るものが少ないことも特徴。学生や教職員の多様な活動の「見える化」により、お互いに刺激を受けて意識づけすることを狙ったものだという。

 さらに建築物を印象づけているのが施設の随所に使われている木材である。スギ、ヒノキ、カラマツ、ナラ等多種多様な木材が、適材適所に利用されている。コンクリートや金属のすっきりとした造りと、温かみのある木材の組み合せが居心地の良い空間を作り出しているが、木材の活用においては機能的な側面が大きい。「施設の建設においては、信州の気候風土や自然環境との親和性の高い『サステナブルキャンパス』の実現を目指した。森林県である長野の木材の活用はその一環」と逸見氏は言う。三輪・後町両キャンパス建設に当たっては、国土交通省所管の平成27年度(第2回)サステナブル建築物等先導事業(省CO2 先導型)の採択を受けている。

 同大学では、様々な分野で活躍するリーダーを育成するための教育プログラムが用意されている。例えば、1年次における全寮制もその一つ。全員が後町キャンパスにある寮(「象山寮」)で共同生活を送り、学生同士の主体性や社会性、他者との関係構築力を培うことが狙いである。今後数年のうちには留学生も一緒に暮らすようになる計画だ。また2年次には、全学生が参加する2週間から4週間の海外研修プログラムがある。ニュージーランド、アメリカ、フィンランド、イギリス、スウェーデン、フィリピンの大学や施設において、語学はもとより専門分野に関する学びを体験、グローバルな視野を身につけるという。

 この長野の新しいキャンパスを拠点に、世界を学び、地域や社会を変える次世代のリーダーが次々と誕生することに期待したい。



長野県立大学三輪キャンパス エントランス

1階エントランス。上はガラス。その下は木材のルーバーとなっており、太陽光を調整して柔らかな光が入るようになっている。



長野県立大学三輪キャンパス 階段

木材ならではの落ち着きと温かみがある階段。



長野県立大学三輪キャンパス キャンパスコモン

講義室などを結ぶ共同空間「キャンパスコモン」。机や椅子やホワイトボードが置かれ、コミュニケーションが自由に生まれやすい。



長野県立大学三輪キャンパス ラーニングホール

多目的に使用できる「ラーニングホール」。ここで行われるグローバルマネジメント学部の必修科目である「象山学」では、県内外の経営者や自治体の首長等が学生に向けた講義を行う。



長野県立大学三輪キャンパス 学生食堂

1階の学生食堂。今後は隣接してウッドデッキが敷設され、屋外で飲食が可能になる。



長野県立大学三輪キャンパス 講義室

講義室の側面はガラス張り。授業の様子が誰からも見える。



長野県立大学三輪キャンパス 図書館

図書館の蔵書数は約10万冊。金属製の書棚に県産材のヒノキ板を打ち付けたもの。建物全体の内装と調和させている。図書館内に個別学習ブースもある。



長野県立大学三輪キャンパス こどもひろば

健康発達学部こども学科が利用する「こどもひろば」。保育士等を目指す学生の実習スペースとなる。



(文/金剛寺 千鶴子)



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三輪キャンパス/長野県立大学