ラーニング・コモンズ デザイン研究棟/宮城大学

宮城大学キャンパス


 宮城大学は、1997年の開学以来、実学を尊重し、実践的な教育を行うことを信条として、社会で役立つ多くの人材を輩出してきた。しかし、大きく変動している現代社会を見据え、2017年度から大学改革に取り組み、学びの土台となる基盤教育を充実し、豊かな人間性と自ら学び続ける力を養成している。

 2018年度からは、そのような学生の自主的な学びを促進するために、離れた2カ所に立地する大和・太白の両キャンパスで既存の施設を改修し「ラーニング・コモンズ」の整備を行ってきた。ラーニング・コモンズは、①「アカデミックスキルの育成空間」をコンセプトに、学びの交流と相互啓発を目的とし、授業の課題や各自の主体的な取り組み等、仲間と話し合いながら学修することができる「スチューデントコモンズ」、②多文化交流の促進を担い、多文化理解、英語学習、海外留学相談ができる「グローバルコモンズ」、③図書館に行ったり来たりしながら、アナログ資料とともに資料のデジタル化に対応した探究的学修を促す「ディスカバリーコモンズ」、④ ICTの進展に対応した学修や研究、制作活動等を行うための多様な支援を提供する「データ&メディアコモンズ」の4つで構成されている。講義や演習・実習といった課程にとらわれず、学生自ら、または教員や他の学生とともに主体的・能動的に学ぶ場として活用されている。

 2019年度には、大和キャンパスでは開学以来初めての増築となる「デザイン研究棟」の建設を開始した(2020年7月オープン予定)。過去、日本はものづくりの力によって国際競争を制してきたが、最近は、モノの価値が低下し、モノ、コト、情報等様々な形態の資源を総合して価値を構築する力、着想から実現、運用までの全てのプロセスを構想する「デザイン力」が競争を左右する時代になった。デザイン研究棟は、様々なデザイン分野について、クリエイティブ、コンストラクティブ、コーポラティブ、コグニティブ(認知)の能力を養成し、実践する力をつけることを目的に、教員と学生が共に研究に集中できる新たな環境として整備したものである。

 デザイン研究棟は、鉄骨造3階建て、建築面積約620平方メートル、延べ面積約1,730平方メートルで、外観はガラスを多用して、明るく地域に開かれたイメージとしている。各階には、教員研究室、学生の研究活動や大型の作品制作もできる広い「オープンスタディスペース」、実験を行える「デザインラボ」、高度な機器を利用してコンテンツ制作を行う「クリエイティブラボ」、ユーザエクスペリエンスの実験を行う「行動観察室」等を配置する。オープンスタディスペースの廊下側間仕切りは透明な引き戸とし、向かい合う教員研究室とのコミュニケーションを活発にする開放的な空間としている。

 宮城大学は、これまでも地域に開かれた大学として、看護・事業構想・食産業の分野の教育・研究で様々な取り組みを行ってきた。実際のフィールドでの活動や、地域の課題解決に結びつく活動も多くあり、地域社会の変化に対応する「考える力」「創り出す力」「学び続ける力」を大切にし、学習・研究の環境、プログラム等も常に新たな試みを探究し続けている。デザイン研究棟は、隣接する交流棟の「オープンスタジオ PLUS ULTRA(- プルスウルトラ)」等とともに、セミナーやカンファレンス、ワークショップや展示等、学内異分野の協働、地域の企業・団体等との協働によるデザイン研究の活性化やその成果の発信等により地域の発展に貢献していく。宮城大学は、ラーニング・コモンズやデザイン研究棟を新たな拠点とすることで、強みを活かした特徴的な教育研究の一層の充実強化を図っていくこととしている。



宮城大学キャンパス全体

大和キャンパスは「自然と共生し、地域に開かれた大学」としてデザイン。自然豊かな住宅地と、工業エリアに隣接している。


宮城大学デザイン研究棟

現在建設中のデザイン研究棟は、2020年7月にオープン 予定。外観はガラスを多用し、学生と教員のコミュニケー ションを活発にする開放的な空間。


宮城大学ディスカバリーコモンズ1

「ディスカバリーコモンズ」では、学群を横断するテーマでゲストを招いたトークや、展示も実施している。


宮城大学グローバルコモンズ1

多文化理解、英語学習、海外留学相談ができる「グローバルコモンズ」



宮城大学交流棟・本部棟

水辺を中心として、地域に開かれた機能を持つ交流棟(左)、教育・研究の拠点となる本部棟(右)をブリッジ棟(中央)がつなぐ。



宮城大学スチューデントコモンズ

仲間と話し合いながら学修することができる「スチューデントコモンズ」


宮城大学ディスカバリーコモンズ

図書館に行ったり来たりしながら探究的活動を行うことができる「ディスカバリーコモンズ」



宮城大学データ&メディアコモンズ

ICTの進展に対応した学修促進を担う「データ&メディアコモンズ」



宮城大学オープンスタジオ PLUS ULTRA(- プルスウルトラ)1

異分野との協働、地域との協働、デザイン研究の活性化やその成果の発信を行うため、キャンパスの機能を整理



宮城大学オープンスタジオ PLUS ULTRA(- プルスウルトラ)2

「オープンスタジオ PLUS ULTRA-」学内外に向けて、セミナーや講義、ワークショップや展示に活用。



(文 宮城大学 キャンパス整備委員会 委員長 井上 誠(事業構想学群 教授))



【印刷用記事】
ラーニング・コモンズ デザイン研究棟/宮城大学