新世紀のキャンパス 新キャンパス/豊田工業大学

豊田工業大学 校舎外観



未来型理工系キャンパスを実現

 豊田工業大学は開学当初より、「豊かな人間性を備えた創造的で実践的な開発型技術者・研究者の育成」を目指している。新キャンパスの設計コンセプトとして、教育面においては「次世代国際産業リーダーの育成」、研究面においては「選択・集中した分野で世界トップの研究成果の創出」をベースとし、実学を重視した未来型理工系キャンパスの設計を目指した。

 また、在籍学生数約500名の小規模大学という強みを生かし、学内外のさらなるコミュニケーションの活性化を実現するため、自由闊達、談論風発、活気にあふれ、また地域にも開かれたキャンパスとなるよう設計された。

コミュニケーションを意識した中央棟

 2014年に着工を開始したリニューアル工事は、仮設校舎を造らず段階的に建て替えを行い、約7年をかけて完成した。2020年6月末に竣工した中央棟は、豊田喜一郎記念ホールを併設し、1階ロビーには「豊田式木製人力織機」の複製機を展示するなど、新キャンパスの象徴的建物である。

 豊田工業大学は、発明王・豊田佐吉翁の遺訓を建学の理念とし、佐吉翁の長男で、トヨタ自動車創業者である豊田喜一郎氏の「人材育成を通じ社会に貢献したい」という夢を実現するため設立された。

 建学の精神と本学誕生の経緯を心に留めるよう「豊田喜一郎記念ホール」と命名されたホールは、ヤマハ製の音場支援システム「AFC」を採用。講演会のみならず、演奏会などでも残響感・音量感・拡がり感を自然と変化させ、適切な音響空間の演出が可能。

 中央棟は地上3階の建物で、1階から3階まで全ての階層において、南北を貫く長さ100メートル・幅5.6メートルの広い廊下を走らせ、そのラーニングモールを中心にラーニングコモンズなどの施設を配置した。その構造は、学生や教職員が教室・研究室での学びを越え、自学・対話・体験を通じてコミュニケーションが自然と生まれるよう意図されている。

モノづくりを実践する場「創造性開発工房」を併設

 2018年2月に竣工した南棟は、西側に講義室、事務室、教育実験室を含む創造性開発センター、東側に研究室、研究実験室を備えた6階建ての建物で、キャンパスの中核を担っている。東側の研究・実験エリアは、3階から6階まで階段を挟んだ吹き抜けの構造となっており、上下の空間的なつながりを増すことで、他の研究室ともコミュニケーションを図りやすいように設計されている。

 また、体験的教育を重視し、モノづくりを実践する場として創造性開発センター内に、「創造性開発工房(愛称:Eiji工房)」を設置。放電、旋盤、溶接、塑性加工など、モノづくりの原点を学べる各種の装置や設備が充実。トヨタ自動車、三菱電機など企業出身の実技指導員のもと、学部1年次から代表的な加工法を学ぶ。

人間力を育む場:学生寮

 2015年4月に竣工した国際交流ハウス(Ti-House)、2016年11月に竣工した久方寮はどちらも学生寮として活用。国際交流ハウスは、主に外国人留学生や大学院生などの宿泊・滞在機能を担い、また日本人学生が国際性を涵養する場として、留学生との交流や海外の文化を知るための様々なイベントが開催されている。

 また、開学以来、学部1年次全寮制を実施してきた本学では、4年前に新しい久方寮が完成した。新しくなった久方寮でも、以前と変わらず個室を完備している。一方、8人で一つのユニットを構成し、コモンルームと呼ばれる共有スペースで仲間と食事や勉学を共にしながら、協調性や自立心を育んでいる。

「山椒は小粒でもピリ辛い」大学を目指して

 充実したキャンパス環境を活用しつつ、これまでに蓄積した多様な教育・研究スキームを十分に機能させ、深い理解を追求する学修活動と高いオリジナリティを追求する研究活動とを展開し、「山椒は小粒でもピリ辛い」大学としての存在感を高める努力を積み重ねてゆきたい。



豊田工業大学 キャンパス風景

正門付近から見たキャンパス風景。開学時からのシンボルツリー「天樹」は、リニューアル後もその存在を生かすよう設計された。



豊田工業大学 キャンパスマップ

名古屋市天白区にある豊田工業大学。閑静な住宅街に位置する一方、地下鉄桜通線「相生山」駅から徒歩10分と好立地にある。



豊田工業大学 プレゼンテーションフィールド

傾斜地に建つ豊田工業大学の立地を生かした大階段や緑の小道は、地域の方々へも開放することを想定している。最高レベルの耐震性と、省エネにも配慮した環境に優しいエコキャンパスを実現した。



豊田工業大学 大階段

大階段の様子。



豊田工業大学 エントランス

レンガ調の外観、豊田喜一郎記念ホール(左)と、授業でも使用し、体験学習が可能な豊田式木製人力織機(右)。



豊田工業大学 「TRI-Mall」

中央棟1階から3階まで、3層のラーニングモールを「TRI-Mall」と命名。



豊田工業大学 障子ラウンジ

豊田佐吉翁の言葉「障子を開けてみよ。外は広いぞ」を想起させる、障子を多用したデザインの障子ラウンジは、教職員やOB・OGなどの交流スペースとして活用。



豊田工業大学 豊田喜一郎記念ホール

舞台の高さを抑え、客席との距離を縮めたことで臨場感を感じられるよう設計された豊田喜一郎記念ホールは、350席収容可能。



豊田工業大学 「Eiji工房」

創設者・初代理事長の豊田英二氏は、学内に充実した実習工場を設け、活用することの大切さを説き、その精神を想起するため創造性開発工房の愛称を「Eiji工房」とした。



豊田工業大学 クリーンルーム

東棟には、半導体微細加工のための本格的な施設、クリーンルームを設置。太陽電池など最先端のデバイスや素材の研究をはじめとした活発な産学官共同研究を実施。



豊田工業大学 コミュニティボード

国際交流ハウス「Ti-House」。



豊田工業大学 久方寮

久方寮のコモンルームの入り口は中庭に面しており、寮生同志が自然と顔を合わすことができる。



(文/保立和夫 (豊田工業大学 学長 ))



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