第三段階教育における職業教育

第三段階教育の多様性と職業教育確立への展開

 先進諸国の第三段階教育(tertiary education、高等教育Higher Educationとほとんど同義に使われている)は、マス化・ユニバーサル化など量的に拡大しつつ質的な変容・多様化を進展させており、今多くの国で職業教育の位置づけ方が重要な課題となっている。わが国でも大学セクター拡大と並行して、短期大学、高等専門学校、専門学校等の非大学セクター、国際標準教育分類でいえば短期第三段階教育段階(ISCED5-short cycle tertiary)が発達してきた。

 OECDの第三段階教育政策レビュー(森利枝訳『日本の大学改革』明石書店、2009年)では、学校種や設置形態など第三段階教育機関の多様性という面が高く評価されている反面、この多様性が全体としての政策的舵取りがなく展開しており、労働市場での適切性を欠いた教育制度となっているという指摘もある。

 その後、職業への移行困難の広がりに対して、中教審では高等教育段階における職業教育が議論され、2019年度から「専門職大学(仮称)」がスタートすることになった。「新たな高等教育機関の教育では、企業等で求められる実践性を身につけさせるため、特定の職業分野における専門性の陶冶と、専門性の枠に留まらないより広い基礎・教養の涵養とを、同時に実現する必要がある。また、技能の教育と学問の教育の双方を結びつけることにより、新たな職業教育のモデルを構築していくことも期待される。」(中教審2016)と述べられているように、盛りだくさんの要求がこの新たな高等教育機関には詰め込まれている。

 中教審は「新たな職業教育のモデル」がこれから構築されるというのだが、それでは何が「古い職業教育のモデル」だったのだろうか。また、「新たな職業教育」を期待しなければならなかった日本の職業教育の課題とは何だろうか。

職業の、職業による、職業のための教育

 その前に、まず質の高い職業教育とは何か、ここで暫定的に定義してみたい。「職業の」「職業による」「職業のための教育」を満たすことが、その必要かつ十分な条件であると考えている。これはデューイの著書『民主主義と教育』や『経験と教育』の中で、伝統的な学術的教育優位に対する職業教育の確立という思想がもとになっている。質の高い職業教育プログラムとは、「教育の目的(goals)」において「職業のための教育」が明確に位置づけられたものである。そして「教育の方法論(methodology)」として、「職業による教育」、つまり企業等と連携した実習・実技の修得機会が豊富に用意され、それを現場の知識・技能を熟知する者が指導・教授している。さらに「教育の統制(governance)」では、「職業の教育」として職業関係者によるガバナンスが十分に機能しているものを指す。即ち、〈目的〉・〈方法〉・〈統制〉の三次元で、産業や職業の社会的ステークホルダーがより深く関与する「プログラム」が質の高い職業教育と言うことができる。日本でも、個別にはそうしたモデルに匹敵する教育プログラムはある。しかし制度としては、特に第三段階教育においては、どのようなものが質の高い職業教育であるのか、これまで日本では学術的にも政策的にも十分に議論・定義されてはこなかった。新たな高等教育機関を創設しようとする今こそ、第三段階教育における質の高い職業教育のモデルを議論し、国家学位・資格枠組み(national qualificationsframework、以下NQFと略)への関わり方を含めて方向を示していく時と考えられる。

職業教育におけるユネスコの新たな勧告と諸外国の強み

 2015年のUNESCO総会では、「職業教育(正式には技術職業教育訓練Technical and Vocational Education andTraining)についての勧告」が14年ぶりに改訂されている(http://portal.unesco.org/en/ev.php-URL_ID=49355&URL_DO=DO_TOPIC&URL_SECTION=201.html)。ここでは、職業教育の範囲は「広範な職業分野、生産、サービス、生活に関わる教育、訓練、技能開発」とされ、その目的は「個人をエンパワーし、雇用とディーセント・ワーク(人間らしい仕事)、生涯学習を推進すること」であり、以下「政策とガバナンス」「質とレリバンス」等、合計7章60条の勧告がなされている。この全てを満たす国はもちろん存在しないが、いくつかの観点で注目される卓越した諸外国の事例を見ておこう。

「政策とガバナンス」のドイツモデル

 ユネスコ勧告の一つの柱である「政策とガバナンス」において注目されるのは、「デュアル・システム」で定評のあるドイツである。手工業系から生産、サービス、事務に至る331の職業(2013年現在の職業訓練法による認定)が対象となっている。連邦政府が当該職業のプロファイル(職務内容や必要なコンピテンス、労働環境・処遇、訓練する知識・技能等)を調査・規定し、商工会議所加盟企業等での訓練を組織し、他方で州政府の所管する職業学校での座学中心の教育がなされる。企業では見習い訓練生であるとともに学校の学生であり、そうした運営や位置づけにおける二重性を特徴とする。

 これらの一連の過程に職能団体も深く関わり、「広範な社会的ステークホルダーの対話」による協調主義(コーポラティズム)の運営がなされている。制度上は中等教育段階に位置づけられているが、今日では、社会人のキャリアアップのための継続職業教育訓練が課題となり、中等教育修了後の大学入学資格保有者も多く参入している。また介護や保育といった保健福祉領域等では、第三段階教育レベルの学校型の職業教育訓練が広がっている。「デュアル・システム」とは異なり州ごとの運営であったりするものの、そうした協調主義(コーポラティズム)の考え方がモデルとなって、教育訓練をより標準化していこうとする動きが進んでいる。

英連邦系諸国から世界に広がる「質とレリバンス」

 ユネスコ勧告のもう一つの柱である「質とレリバンス」においては、NQFが注目される。NQFは、この勧告の柱における各要素(「学習プロセス」「職業教育スタッフ」「学位資格システムと学習経路」「質と保証」「労働市場と職業世界へのレリバンス」「情報とガイダンス」)を結びつける重要なツールとなっている。2015年段階で150カ国以上、国連加盟国で4分の3以上がNQFの開発・導入・展開を進めている(CEDEFOP,“Global inventory of regional and nationalqualifications frameworks - Volume I:ThematicChapters”,2015)。NQFは、理想的には、国内全ての学位(称号と呼ばれるものを含む)や資格等を、複数段階のレベルという縦軸と、学習における志向性の特色等による横軸によって区分されたマトリックス(イングランドの新しい学位・資格枠組み(RQF)では、図1のように11段の本棚に様々な厚さの本を置くイメージで紹介)に位置づける制度である。

 その源流には1960年代に遡るフランスの国家資格分類がある。そのポイントは、普通教育と職業教育のプログラムを、学習のボリュームやレベルに応じて分類し、それを職業の世界での資格レベルに対応づけたものである。今日的モデルは、1990年代から英連邦諸国でNQF導入がスタートし、2000年代の地域参照枠組みとしての欧州の学位・資格枠組み(EQF)制定がその展開を加速した。先進NQFとして定着している代表格は、スコットランドの学位・資格枠組み(SCQF)とオーストラリアの学位・資格枠組み(AQF)である。SCQFは、大学・継続教育カレッジ・中等学校が域内で既に提供している既存の学位・資格プログラムや職業資格を一枚の表に並べている。いわばタータンチェックの美しい枠組みとなっている。それは、職業教育セクターから大学セクターへの、またその逆の移行など「学習経路」の浸透性確立に大きく寄与している。他方、AQFは、産業分野ごとに必要な職業能力を科学的に分類し、能力養成方法を示した「訓練パッケージ」(training package)をもとに教育訓練プログラム開発を進めるものであり、車輪のハブからのびたスポークで区切られた10レベルのイメージ図で解説がなされている。

コンピテンシーと学修成果、教育と職業の接点としてのNQF説明指標

 スコットランド、オーストラリア両国の学位・資格枠組みの違いは、既存の教育プログラムをもとにスタートするか、産業の能力ニーズをもとにスタートするかの違いとなるが、いずれも教育と職業をどのようにつなぐか、その媒介言語として、共通知識や技能等色々な表現で表される学修成果に焦点が当てられている。ここに、学術と職業との適切な対等性を考えるヒントがある。

 例えば、ドイツの学位・資格枠組み(DQR)では、同じレベル6に「学士」と「マイスター資格」を位置づけている。表1に示す通り、そのレベルで修得される「知識」の説明として、「批判的理解力」と「今日的技術発達の知識」とを対等な位置関係にあるものとして認定し、そのことで両者を社会的に認定していく根拠とすることができるのである。無論、一定の対等性の社会的な認識があるからこそそうした合意が導かれるのであって、ドイツでも大学入学資格アビトゥアはこのDQRでの位置づけの合意に至っていない。

 またNQFは、各レベルの能力を説明するための指標(descriptor)によって他国のNQFとのレベルの換算を行う仕組みである。そこではブルームの分類学が多く利用され、「知識」と「技能」はどこの国でも共通に用いられている。

 しかし、その他の次元として何が来るのか、国によって大きな違いがある。「知識」と「技能」の「応用」という個人の仕事の責任に限定されたものか、組織での働き方にかかる「態度」なのか、場合によっては「道徳」を求めるのかまで、アングロサクソン諸国、ドイツ語圏諸国、またアジア圏諸国で、労働組織と個人の仕事のあり方の違いも見えてくるのである。

韓国の国家職務能力標準NCSに見る東アジアの挑戦

 日本、中国、韓国等の東アジア諸国では、学位・資格枠組みの導入にはまだ多くの課題がある。日本も含めて後発近代化諸国では学歴主義が発達し、中国の科挙による選抜の歴史がそれを強化している。即ち、大卒学歴やそこにつながる普通教育が重視されている。このため初期職業訓練が適切に発展せず、就業後の継続職業能力開発が多様に展開するものの、それは人的資本論でいう企業特殊的であったり、小規模だったりと、可視性・転用可能性に乏しい結果をもたらしている。

 こうした現状への挑戦の一例として、韓国では2002年から「国家職務能力標準(National Competency Standards:NCS)」の開発が進められてきた。これは、24大分類に分けられた産業分野ごとに、能力規定、学習モジュール開発、応用導入の3ステップで展開している。(1)産業現場で業務を遂行するために要求される能力(知識・技術・態度)を多段階で規定、(2)その修得や評価のための学習モジュールを開発、(3)教育訓練機関でそれを活用したプログラムを開発、という工程である。第一ステップの能力規定は、雇用労働部と韓国産業人力公団が担い、第二ステップで内閣府と教育部が関わり、韓国職業教育訓練研究院などが学習モジュール開発を行っている。第三ステップの活用に当たっては、2016年度から国営企業では採用においてこれを活用すること、特性化高校・専門大学・公共及び民間職業訓練においては全面活用することが国策として進められ、中小企業等の人事評価にも活用を促している。

日本における教育と職業の接続と職業教育

 各国の職業教育は、その労働市場の特徴、職業への移行の特徴によって性格づけられる。日本の労働市場は、古典的な人的資本論に忠実な「ジョブ型」ではなく、内部労働市場の発達した「メンバーシップ型」として知られている(濱口桂一郎『新しい労働社会』岩波新書、2009年等参照)。「メンバーシップ型」労働市場では採用後に企業内訓練を経て企業特殊的知識・技能を獲得するというモデルであり、採用までに特定の専門的な知識や技能を求めるよりも、むしろ社会人基礎力等の汎用的能力が強調される。

 他方で、学校教育と職業への移行において、序列化した学校制度は、学生の能力指標を示す格好の尺度を提供する。このため、学力相場と企業の格とを対応づけるような就職・採用が広がる。若者も保護者も教員も、また学校自身も、その尺度のもとで自らの地位を高めたり、教育プログラムを高度化したりすることへのドライブがかかる。

 さらに、今未来論として第4次産業革命や超スマート社会(society5.0)等、グローバルな社会変動が見通され、多くの職業が消えかつ登場すると言われている。だから専門に特化した職業教育よりも、教養や幅広い学習をしていくべきだというメッセージもまことしやかに流布している。しかし、現実に職場で使われるものは専門的な職業能力であり、新しく生まれる要求も、それまでの専門的な職業能力をもとに転換されるのである。専門的な職業能力がなければ何も始まらない。長期的には、日本においても新たな「ジョブ型」労働市場が展開し、職業教育が必要とされ充実していくと見られる。

 新たな「ジョブ型」労働市場が広がっていけば、企業内で形成される職業能力を可視化し、人事評価、転職、採用に活用する課題が政策テーマとして再浮上してくる。厚生労働省の「職業能力開発体系」「技能検定」「職業能力評価基準」、内閣府の「キャリア段位制度」は、そうした課題を先取りするものである。また、その作成の経過は、韓国における国家職務能力標準(NCS)とほぼ同一歩調であった。しかし、各職業の論理に忠実にレベルを作成していくと、就業者の持つ現実の教育歴や職業経験等とレベルが不整合で一貫しなくなる。実用的な展開のためには教育の世界と職業の世界の関係者の対話が不可欠であり、この点が最大の困難のひとつになる。近年韓国では、それを教育・訓練・人事管理の現場に適用させる強力な政策を推し進め、職業教育制度発展における大きな違いを生じている。

日本の職業教育の質の認定・向上のための課題

質の高い学習のモード

 日本の第三段階教育における職業教育には、「質とレリバンス」という面で、まだ弱点が多い。海外の職業教育の多くが、その「質」を高めるために学校外での一定期間の職業統合的な学習(work integrated learning)を組み込んでおり、豪州では大学でもそういう職業教育の方法論を充実させている。また、多くの国で教育スタッフの教育資格について明確に規定しており、職業統合的な学習で参画する現場スタッフの指導資格やそのための訓練も規定されている。日本でも、看護等の国家資格系の一部領域では、そうした質の高い職業教育への徹底が行われているが、それぞれの学校の設置基準以上の規定はなく、むしろ多くの分野で各機関任せの状態である。また、「新たな高等教育機関」でも、全ての分野で一律に「○○時間の実習」とか「○割の実務家教員」等の外形的な基準を当てはめれば、その質が確保できるというものでもない。それぞれの分野で、産業や職業の関係者が把握している教育方法の適切性についての理解を踏まえたものとなっていく必要があろう。

教育訓練分野の吟味とプログラム単位でのガバナンス

 ここで、「政策とガバナンス」というより大きな問題にたどり着く。そもそも、日本の第三段階教育における教育と訓練の「プログラム」の専門分野とは何だろうか。これまで用いられている学校基本調査の分類は学校種別に異なるため、相互の関係を理解することは困難である。国内的な理解もさることながら、日本の教育制度における専門分野の国際通用性を高めていく政策的取り組みが極めて重要である。

 著者らは、国際教育標準分類(ISCED)の専門分野との対応を検討し、第三段階教育機関横断的な国際的通用性を目指した「教育訓練分野分類」を試行的に開発している(吉本圭一編『第三段階教育における職業教育のケーススタディ』、九州大学「高等教育と学位・資格研究会」ワーキングペーパーシリーズNo. 2、2016年)。この共通分類は、学校種間での入学者動向の変化を解明するために有効である。例えば、社会科学・ビジネス・法律分野では、1990年代から短大・専門学校から大学への進学代替傾向が進んでいる。他方、医療・保健分野では大学も専門学校も補完的に規模拡大を進めていること等が明らかになった。

 また、多様な分野のケーススタディを見ると、外部ステークホルダーの関与する「ガバナンス」のあり方や課題も職業教育分野によって大きく異なっている。どの職業教育プログラムもより高い質を目指すのは当然のアプローチであるが、それはあるいは高度化、場合によっては長期化に向かう。

 図2に示すように、保健医療、教育・社会福祉の分野では、教育訓練プログラムの高度化においては、雇用主や、専門職が教育プログラムの目的設定や教授学習方法により深く関与していくようになる。ただし、高度化したプログラムが既存のプログラムと同じ資格を提供したり、それ故に下級レベルのプログラムへの縮小圧力がかかったりする。NQF先進国のオーストラリアでは体系的な訓練パッケージのもとで、コミュニティ・ケアの介護職員から准看護師養成へ、さらには大学における看護師養成へスムーズに編入学して上級資格を取得するという「学習経路」が確立しており、参考とすべき点も多い。

 他方で非国家資格領域においては、高度化は必ずしも外部ステークホルダーの関与を深めない。例えば、社会科学系のプログラム等は、高度化は単に学術的教育要素への近接という結果に帰着することが多く見られる。こうした対照的な傾向も踏まえつつ、質の高い職業教育のガバナンスを専門分野別に検討していくことが、特に日本の職業教育の課題なのである。

国家学位・資格枠組みによる職業教育のアウトカム明示と3ポリシーの実質化

 日本の職業教育プログラムの最大の問題は、質を認定し質の向上を促す方策がないことである。NQFは学術型のプログラムと職業型プログラムを並行して位置づけ、相互の移行ないし浸透可能性(permeability)を保障する社会制度である。その導入の検討によって、職業教育の適切な社会的評価、学術的教育との対等性の探究が進む。現在の学修成果(learning outcomes)重視の高等教育政策をより確実なものにするために、NQFは不可欠なものと筆者は考えている。学位プログラムを学修成果によって記述していくことや、〈ディプロマ〉・〈カリキュラム〉・〈アドミッション〉の3つのポリシーを一体で運用することなどが大学に要請されているが、こういうアプローチは上述の枠組みのもとでこそ徹底されるのではないだろうか。大学でも専門分野ごとの学士プログラムの到達目標を調整していく「チューニング・プロジェクト」や、日本学術会議による「分野別参照基準」開発等がなされているが、まだ現場に適用されるような完成形とは言い難い。むしろ、学位・資格枠組みが形成されて初めて、日本の大学教育の質も確実に国際的に保証・認定できることになると考えられる。

 また、日本ではNQFができていると考える人もいるだろう。しかし、看護師や臨床検査技師といった医療系国家資格教育プログラムは、4年制の学士プログラム(ISCED6)、3年制の短期大学士プログラムや専門士プログラム(ISCED5)等、同じ資格が複数の段階で養成されている。養成される看護師の知識・技能等のレベルは同じなのか、違うのか。また、調理師養成課程は、専修学校の1年制・2年制の専門課程や高等課程で展開されているが、日本の調理師養成課程は国際的にどのようなレベルの学位・資格プログラムと対応するのだろうか。

 学術型教育を基本とする大学セクターは、これまで「インプット」や「プロセス」の基準をクリアーすれば質が保証されていると考えてきた。しかし、「エンプロヤビリティ」への要請等、実際に「アウトカム」としての「学修成果」を大学が明確に定義して検証すること、そしてそれが労働市場や職業の世界でのレリバンスを持つものかどうかが問われている。

800校近くある多様な大学がどこまで多様な、あるいは最低限共通の学修成果を追究していくのか、政策サイドの適切なガバナンスも必要であろう。

 他方で職業教育のセクターは、職業のために必要な知識・技能・態度等を形成することが求められているという点で、これまでは「アウトカム」による市場淘汰のメカニズムが働いてきた。NQFを導入し、むしろ、職業で求められているコンピテンシーと学修成果との明確な対応関係を示し、職業教育の質の認定を受けていくことが要求されてくる。

 NQFは、学習者の学修成果、職業人のコンピテンシーを基軸にしながら同じレベルの学術型や職業型の教育訓練プログラムを認定していくものである。その過程で、産業・職業関係ステークホルダーと教育供給側との対話、多省庁間の対話が不可欠となってくる。ここに、「新たな職業教育のモデル」が生まれることを期待したい。

吉本圭一(九州大学主幹教授・第三段階教育研究センター長)