自立性の涵養 学びたくなる環境が英語の自立学習を支え、国際化社会で必要な力を育む/神田外語大学 KUIS 8 ほか
テクノロジーが進化を遂げる中で、これからの時代に求められる資質・能力は、自立的・探究的に物事を考え、相手の考え方やコミュニケーションの行間を理解できる力である。そして変化の激しい状況に受動的に流されることなく、自ら学び続ける力が重要となる。大学において、新たな時代を生き抜いていく能力を育成するためには、設備(ハード)面での整備を進めるとともに、その環境にどのような教育(ソフト)を組み合わせていくかという点も含めて検討が必要となるだろう。
語学を入口に国際社会で必要な「自立」の力を培う
2017年4月に開設された、神田外語大学の8号館「KUIS 8」。全学生に必修科目となっている英語学習のための最新の設備を整えた建物である。ニューヨーク・マンハッタンの街をイメージした館内は常に学生の活気にあふれ、神田外語大学の目指す「自立学習」を支える施設として、また、対外的にも大学の魅力と語学学習のクオリティの高さを示す場所として、象徴的な存在になっている。
宮内孝久学長は、商社に40年勤務し、多くの国で活躍してきた自身の経験も踏まえ、神田外語大学が目指す「自立」には複数の意味があると語る。
「自立とは何か。それは国際化する社会の中で、異なる価値観の他者の刺激を受け、自己を客観視しながらたくましく生き抜く力を持つこと、そして周りに流されず、自分の頭で考えるクリティカル・シンキングの力をつけることだと思っています。神田外語大学は、外国語を学ぶ大学ですが、語学を入口として、様々な物事の考え方の違いに気づき、クリティカル・シンキングの密度を高め、幅広く深い教養が身につけられる場でありたいと考えています」。
学習を支援するプロフェッショナルラーニングアドバイザーとELI教員
その理念を具現化したKUIS 8には、神田外語大学が確立してきた自立学習施設SサルクALC(Self-Access LearningCenter)が存在する。最先端の英語学習を研究し、学生一人ひとりに対してラーニングアドバイザーが語学学習をサポートし、目標達成に向けて自ら学びを進める力をつける手助けをする。また学びの手段として、KUIS 8に整っているテクノロジーを使った学習や、協働学習の機会につなげている。そのほかにも世界各国から起用された約70名のELI(English Language Institute)教員がこのKUIS 8を拠点に英語の授業を行う。英語教員との学び、自立学習の支援、多様な国の人たちとの交流の全てがこのKUIS 8という場所に集約されているのだ。
独自の学び方が、積極性や明るさを育む
神田外語大学の学生達は、「プレゼン」という言葉を使わない日はないといわれるほど、授業でのプレゼンテーションの準備に忙しい日々を送る。授業はグループ形式で課題に取り組むスタイルの学びが多く、仲間とプレゼンテーションの用意をするために集まる場所もKUIS 8だ。
このような施設の存在が、学修成果にどれだけ寄与しているのか、測定して数値で表すことは容易ではない。だが、KUIS 8という場が、自分で考えるスキルをつける環境になっているという。「神田外語大学の学生はみな明るいといわれます。ここでの学び方がそういう校風を作っている。そして社会人になっても積極的に発言できる人が多いといわれますが、KUIS 8はそういった学生をさらに生み出すことに貢献していると思います」。
宮内学長は「就職がメンバーシップ型からジョブ型雇用に移行する中、誇れるコミュニケーション能力を身につけてもらいたい。そして人生100年をどう生きるかを考えるキャリアデザイン教育も充実させたい」と語る。学生が神田外語大学の学びの場を経て社会人となり、そこで自立の本当の価値が発揮されることで、世の中を変える力となる。そこに目を向けたとき、KUIS 8のような自立学習施設の価値は無限大といえるだろう。
KUIS 8の中は広い空間がひろがり、学生の学ぶ様子が可視化しやすい。語学授業のための教室のほかカフェ等、個人またはグループで学習する環境が整っている。中央のテラス部分はニューヨークの観光名所ハイラインをイメージして作られた。空間や家具の配置に至るまで個人学習やグループ学習を行うのに快適な環境をつくるために実験的で野心的にチャレンジした。
KUIS 8の2階にある「English Lounge」では、ELI教員や留学生等と、いつでも英語で会話やボードゲーム等を楽しむ環境を整えている。
MULC(Multilingual Communication Center)
7号館内にあるアジア&イベロアメリカの語学学習の拠点。中国語、韓国語、インドネシア語、タイ語、ベトナム語、スペイン語、ブラジル・ポルトガル語の専攻に合わせ、各言語圏を代表する建物が並ぶ。日本にいながらそれぞれの文化と空気を肌で感じ、学べる環境が整う。多くの学生にとっては初習言語となる言葉を学ぶことになるため、まずは授業で学んだことをこの場に来て日本語も交えながらコミュニケーションをする実践の機会が得られる。
(文 木原昌子)
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