【専門職】ファッション教育のカレッジレディネスである情熱と行動力を見極める入試設計/国際ファッション専門職大学

国際ファッション専門職大学キャンパス

POINT
  • 1966年創立、50年以上の歴史を持つ専門学校・モード学園を運営する学校法人 日本教育財団により2019年4月に開学
  • 国際ファッション学部1学部の中にファッションクリエイション学科(定員80名・東京)・ファッションビジネス学科(定員38名・東京)、大阪ファッションクリエイション・ビジネス学科(定員38名)、名古屋ファッションクリエイション学科(38名)の3キャンパス4学科を展開
  • 認可から初回入試までが約2週間という短い募集期間であったにも拘わらず、多くの入学希望者が集まり、定員を充足した


国際ファッション専門職大学は2019年開学の専門職大学1期校である。母体の学校法人 日本教育財団は1966年名古屋校、1971年大阪校、1980年東京校開学以来、ファッションデザインやグラフィック、メイク・美容に至るまで幅広いクリエイティブ領域で「ゼロからプロにする」を標榜し、センスや感性といったクリエイターの素養は訓練によって開発されるという理念のもと、『完全就職保証制度』美容師『国家資格 合格保証制度』『15年間就職保証制度』等、学生の成長と卒業後の活躍をバックアップするスタンスと業界直結の教育で、数多くの卒業生を社会に送り出している。

小誌では開学直後の様子を取材している(【リンク】「服の、先へ。」が示すコンセプトメイクできる人材育成/国際ファッション専門職大学)。大学の詳細はそちらに譲るとして、今回注目したいのは入試制度である。統轄責任者の後藤京子理事にお話をうかがった。

カレッジレディネスとも言える情熱と行動力をどう測るか

 まず、入試制度を俯瞰したい。入試区分はAO入試(専願)、推薦入試(指定校)、一般入試(専願・併願)、留学生入試(専願)の4つだ(2020年4月入学生対象の入試区分実績 ※2021年度より入試区分の変更あり)。

 後藤理事によると、志願者は「興味関心がファッションに絞られている」という特性があるため、「入学意欲」「ファッションに対する自分なりの情熱を持っているか」「それに即してこれまでどのような活動をしてきたか」がとても重要だという。情熱と行動力がカレッジレディネスであると言えるだろう。

 そのため、AO入試と一般入試では3つのポリシーを説明するガイダンス受講を必須としたほか、レディネスを見極めるためにグループ面接を課している。後藤理事は言う。「ファッション業界では、自分の情熱を形や言葉にする能力、日常からヒントを読み取る能力、唯我独尊ではなく消費者の志向を感じ取る感性があるかが大切です。そもそも業界そのものが日本では縮小傾向にあるわけで、そこにいかに情熱を持って切り込めるかが今後のリーダー人材には問われるのです」。志願者が多くなる一般入試でもガイダンス受講と面接を必須とするのは、入学後の教育の基盤となり将来につながる大事な要素を見極めるプロセスだからなのである。

3つのポリシーの理解の上に自らの方向性を重ねる

 では、それぞれのプロセスを見ていきたい。まず3ポリシーを理解するガイダンスである。ガイダンスで説明される具体的なポリシーの項目は以下の通りである。

  • 大学全体の学位授与の方針(ディプロマ・ポリシー=DP)
  • 国際社会で通用する教養とコミュニケーション能力を持つ
  • ファッションの基本的知識と技術を学び、当該分野で自立できる能力がある
  • ファッションに関わる知識や技術を学び、当該分野で自立できる能力がある
  • ファッションに関わる国際化、情報化などの変化に対応し、主体的に課題に取り組むことができる
  • 大学全体の教育課程編成の方針(カリキュラム・ポリシー=CP)
  • 国際社会で通用する教養(汎用的能力)を養う課程
  • コミュニケーション能力(汎用的能力)を養う課程
  • 職業分野の基礎的知識と技術(基本的技術)を養う課程
  • 専門知識・技術を深化させ、展開する力(知識・理解)を養う課程
  • 国際化・情報化等、変化への対応力(態度・志向性)を養う対外学修課程
  • 総合力(態度・志向性)を養う課程
  • 学修成果の評価の在り方
  • 大学全体の入学者受け入れの方針(アドミッション・ポリシー=AP)
  • 多様な地域文化と教養を学び、それを基底に、国際的視野のもとで新しいファッションの価値を創造するという目標に挑戦する人を受け入れる
  • ファッションの学修に強い興味と意欲をもつ人を受け入れる
  • 積極的に国内外に発信する意欲のある人を受け入れる
  • 幅広い分野の教育課程の修了者や社会人、各国留学生など多様な背景や経験をもつ人を受け入れる

 これらの理解を経て、「この場で何をしたいか」を自分の経験や方向性と紐づけてプレゼンすることが求められるのが面接だ。面接のベースとなるのは「高校までの生活態度」「基礎学力」「志望理由書」と募集要項にはあるが、具体的にはどういうことか。

 後藤理事は、「高校3年間にどういう目的意識でどういう行動をしてきたのかがベースです」と話す。つまり、大学入学後から活動しようという気持ちはもちろん、高校時代に既に自らの目的意識に即して活動してきたことをしっかりと評価することが前提だ。そのため、すべての受験者と行う面接では、学生は得意なことや好きなことに熱意を持って取り組んだ経験を自身の表現でプレゼンを行う。それは入試プロセスであると同時に、プロである教員からのフィードバックを経て、自らの方向性を磨き上げていく場でもある。国際ファッション専門職大学の教授陣はアカデミアのプロと業界エキスパートが共存し、ファッション領域の最先端とも言える布陣だ。そのため、将来、国内外での活躍を志向する学生にとっては真剣勝負の場なのである。「根幹として個人の情熱がほしい。業界そのものが日本では縮小傾向な中、いかに情熱をもってそこに切り込めるかが問われます。本学は少人数での授業が多く、定員も多くはない中で、一人ひとりの問題意識や熱意、実現しようとする意欲を面接できめ細かく見極めています。人が人を評価するのはとても難しいですが、ペーパーテストではなく面接でなければ分からないことは多い。それが入学後に接続されてこそ、教育が⽣きるからです。こうした考えのもと、アドミッション・ポリシーを反映した多様な入試を行います。また受験者とのミスマッチをなくすため、大学説明会や入学相談を実施していますので、ぜひ参加ください」と後藤理事は言う。面接以外の評価プロセスは図1をご確認いただきたい。


図1 入試区分ごとの評価方法

図1 入学区分ごとの評価方法

※入試区分は2020年4月入学生対象の実績。2021年度より変更あり


入学時点の素養を妥協せず見極めることが競争優位性につながる

 面接は4人1組のグループ面接で、前段で述べてきた意欲と行動力を測るために学内で定めた「面接のポイント」に照らし、項目に対する受験者の評価点を2人の教員で採点する。差異がほとんどない場合もあれば、評価が割れる場合もあるそうだ。その場合も、最終的には1人ひとりの受験生について教員全員でディスカッションを行い、評価を決めていくという。一人ひとりにしっかり時間をかけ、これまでの経験を自らの指針に生かせる素養のある人材、入学後に成長する度合いを見極める。「1つの型を求めているわけではなくて、個人の情熱と行動力との接続、本学でやりたいこととの接続感を見たい」と後藤理事は言う。一般入試でも面接という評価プロセスがある時点で冷やかしでの受験は少なくなる。一般的な大学制度における併願という感覚は少なく、第一志望比率も高い。

 募集要項によると、AO入試と一般入試の募集定員比率は概ねAO44%・一般55%だ。そのいずれも3ポリシーを理解し、理念共感型のファンとなって入学する。上位校の併願で目的意識の低い層が入学者の大半になるような大学にとっては羨ましい話であろうが、その起点には当然「ファッション業界のこれからのリーダーを育てる」という目的で構築された教育研究がある。教育の目標と展開から導き出されるカレッジレディネスについて、入学時点の素養を妥協せず見極めることが、学生の人生を開き、大学の教育研究を守ることにもなり、ひいては競争優位性となる。入試制度構築はその一翼を担っている。

カレッジマネジメント編集部 鹿島 梓(2020/5/27)