【専門職】人と動物の共生を支える人材を育成する多彩な教育展開/ヤマザキ動物看護専門職短期大学

ヤマザキ動物看護専門職短期大学校舎


山﨑 薫理事長 花田道子学科長 吉田 充入試広報部長

 ヤマザキ動物看護専門職短期大学(以下、専門職短大)の母体であるヤマザキ学園は創立50年以上の歴史を持つ学校法人である。創立以来、コンパニオンアニマルを中心とした動物看護やグルーミング等、動物のスペシャリストを育成する教育で多くの人材を社会に輩出してきた。「生命への畏敬」「職業人としての自立」を建学の精神に掲げ、「生命(いのち)を生きる」という教育理念のもと、1994 年には専門学校、2004年に短期大学、2010年には短大の発展的改組として4年制大学を、2019年には専門職短大を開学した。その設置趣旨と開学後の状況について、山﨑 薫理事長、花田道子学科長、吉田 充入試広報部長にお話をうかがった。

理論と実践のハイブリッドで産業界を担う動物看護人材を育成する

 まず、専門職短大開学の目的について、山﨑理事長は「産業界を担う人材を育て、動物看護師の職域を広げるため」と言う。

 ヤマザキ学園において大学は動物看護の教育・研究を行い、修士・博士も含めた動物看護学の科学的体系作りを目指す。専門学校は現場即戦力となる人材の育成を担う。専門職短大は理論と実践両方に軸足を置くハイブリッド型で、産業界のニーズを捉え、業界で活躍できるリーダーとしての人材を養成する。

 現在1兆6000億円規模と言われる動物関連産業において、4000億円は動物病院、1兆2000億円はそれ以外の関連産業だ。専門職短大開設には従来の病院勤務の動物看護師だけでなく、産業全体を牽引する人材の輩出を期待する産業界や自治体からの強い要望がある。人と動物が共生する社会を支える、看護だけでないアプローチを広く模索するのが、学園における専門職短大の役割である。

愛玩動物看護師の国家資格化による職域拡大

 一般社団法人ペットフード協会によると、2019年時点の国内の犬猫飼育数は1857.5万頭。なお、総務省によると日本の15歳未満の子どもの数は同年1533万人。人の子どもよりも犬猫が多い日本社会で、ペットは家族として大きな存在感を持ち、関連ビジネスは多様化している。その一方、高齢化が進むペットのトータルケアができる動物看護師の必要性から、2019年6月21日に「愛玩動物看護師法」が成立した。これまで民間認定資格しか存在しなかった動物看護師は「愛玩動物看護師」という国家資格となり、獣医師の診療の補助(採血、投薬、マイクロチップ挿入等)や診断を伴わない検査等を実施できるようになる。職域が広がると同時に専門家として社会的地位が向上すると期待される。専門職短大でも当然国家資格取得はカリキュラムの大きな柱である。

 専門家としての厚みを担保する展開科目では、ジェロントロジー(老年学)、死生学といった「いのち」に焦点を当てその理解を深める科目や、災害・危機管理論、少子高齢社会と人口問題といった特徴的な科目が並ぶ。「理論に精通した研究者と現場経験豊富な実務家の両方に学ぶ」ことを軸に、展開科目で付加価値を幅広く付与するのがカリキュラムの軸である(図表)。専門職短大の特色である臨地実務実習は、1年次に併設の動物病院とグルーミングサロンで実施。2年次夏は学外2カ所の動物病院、2年次春は2カ所の動物関連企業、3年次夏は学生の希望する就職先を見据え、3カ所の動物病院か、3カ所の民間企業等のいずれかを選択し実習を行う。「幅のある実習経験ができるのは専門職短大ならではです」と花田学科長は言う。

カリキュラム概観

動物看護の適性をアッドミッション・ポリシーで提示する

 開学後の状況について花田道子学科長に聞くと、「看護にとって最も大切な感覚を持っている学生が多い」と笑顔を見せる。相手の気持ちに配慮した適切なコミュニケーション、動物に寄り添う姿勢、明るく人の目を見て話せること等がそれに当たるという。

 専門職短大では一般選抜試験以外の入試全てで面接を実施することで、動物看護師としての適性とアドミッション・ポリシー(AP)についての理解を確認する。

 4つのAPとは以下の通りである。

  • 本学の建学の精神及び教育理念に共感する者
  • 動物に深い理解と愛情を持ち、人と動物の豊かな共生社会を目指す者
  • 動物看護学に必要とされる専門知識と技術を学ぶための基礎学力を持つ者
  • 国際的視野に立ち、コミュニケーションを大切にする者

独自の教育環境整備でコアファンを拡大し業界を担う

 2018年度は認可答申が11月中旬と遅く、十分に募集期間がとれない中で、学園のコアファンを中心に何とか志願者を集めた。開学2年目は通常スケジュールで募集活動が実施できたが、「まだまだ制度認知が低く、当面はこれまでの学園としての歴史と伝統に期待する声を確実に集めることが戦略となるのでは」と、入試広報部長の吉田 充氏は話す。そうしたコアファンは現在8割を占めるという。

 その一方で、愛玩動物看護師の国家資格化は追い風だ。「これまでは本人が動物看護師になりたいのに、保護者が国家資格である人間の看護師に志望を変更するよう促すといったケースもありました。そうした意味で保護者の理解を得られやすくなったのはありがたい」(吉田氏)。

 また、「学園内に3つの学校があることで、目的意識に応じた進路を提供できるのは本学園最大の強みです。加えて、専門職短大で学んだ後に大学に編入する等、希望者には付加価値をつけるためのルートも用意しています」と吉田氏は言う。多彩なニーズに応えられる環境を引き続き整備することが、ヤマザキ学園としての競争優位性になりそうだ。多様化が求められている動物関連業界で、専門職短大設立を契機に、コアファンを核とした学園全体の支持者・支援者が業界の大きなうねりとなり、動物関連産業全体のポテンシャルを向上させることを期待したい。



(文 鹿島 梓)



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