×Tech.で変わる産業 [14] Govtech Tech(行政・自治体とテクノロジー)行政オンライン化、社会課題に挑む自治体DXデジタル人材創出に期待が高まるリカレント教育
デジタル技術を活用して行政サービスを見直し、社会問題の解決や経済成長を実現する。いわゆるデジタルガバメントに変革の波が訪れている。コロナ禍で行政手続きのオンライン化やマイナンバーカード交付、本人確認や書類のデジタル化が加速。自治体の業務システムの標準化や業務プロセスのデジタル化によるコスト削減や働き方改革も推進されている。矢野経済研究所調査は、2021年度の自治体向けソリューション市場を6518億円と予測。新たなITソリューション利活用に向けた投資が期待される。
過疎化や高齢化によって運営が難しくなりつつある公共交通に対し、自動運転や乗車日時・乗降場所を指定できるオンデマンドバス導入に取り組む等、スマートシティ化で地域社会の課題解決を図る自治体も増えている。神戸市が立ち上げたオープンイノベーション・プラットフォーム『Urban Innovation JAPAN』では、全国の自治体・企業・市民が協働し、デジタル技術を用いた課題解決と共にビジネスの成長との両立を目指すプロジェクトを展開。ベンチャー育成やデジタル人材の育成にも期待が高まっている。
こうした行政や自治体のDXを拡大すべく、政府はICTやセキュリティ、ネットワーク、データ利活用、IoT等のITスキルと実務経験を持つIT技術のスペシャリストと共に、デジタル技術を用いて自治体と企業・市民をコーディネートする人材の雇用・育成を推進している。
「このようなコーディネート人材にはITスキルに加え、課題と解決策を結び付けるオープンイノベーション・マインドが求められます。さらに民間企業や住民を巻き込む力や、自治体内の首長・幹部・関係各所を動かすプレゼン力も必要となるでしょう」(水之浦氏)
大学ではプログラミングやデータ分析、システム開発手法に加え、エストニア、シンガポール、デンマーク等の海外事例、国内におけるオープンイノベーションの現状や方法論、行政組織に関する知識を学んでおくと役立つと水之浦氏は語る。一方、霜越氏は、卒業生や自治体に関わる人に向けた「リカレント教育」を定期的に行うことが望ましいと言う。
「社会課題をテクノロジーで解くための演習や行政データの活用分析、オープンイノベーションの実現方法を学ぶゼミ、現場での自治体インターン等、理論と実践をバランスよく学ぶことが有効です。オンラインで実施すれば負担も少なく、地方創生にも繋がるでしょう」(霜越氏)
行政サービスや地方自治体の課題を大学の教育カリキュラムに結び付けて人材を育成し、解決していく。そんな事例もこれからは増えていくだろう。
取材協力:水之浦 啓介氏(野村総合研究所 社会システムコンサルティング部 プリンシパル/上級研究員)
霜越 直哉氏(野村総合研究所 社会システムコンサルティング部 主任コンサルタント)
文/馬場美由紀
【印刷用記事】
Tech.で変わる産業 [14] Govtech Tech(行政・自治体とテクノロジー)行政オンライン化、社会課題に挑む自治体DXデジタル人材創出に期待が高まるリカレント教育