入試は社会へのメッセージ[1]「グローバルスキルとしての英語力をどう育成するか」ー解説記事

 グローバル化する社会への対応が必要なことに異論がある読者は皆無であろうが、改めてその意義と教育への影響を考えてみたい。特に、大学教育の前後にある社会、及び初等中等教育における意義と現状という2つの観点から整理したい。

社会で必要なのは議論可能な英語力

 TOEIC© 運営団体である国際ビジネスコミュニケーション協会の「英語活用実態調査(企業・団体、ビジネスパーソン)2019」によると、「今後のビジネスパーソンにとって重要な知識やスキル」は、コミュニケーションスキルや問題解決力を抑えて1位が英語となっている(図1)。また、「企業・団体が目標とする英語スキルの水準」では、単に挨拶できるだけでは不十分で、「英語で行われる会議で議論ができる」を筆頭に、メールや電話でのやり取りがスムーズに実施できることが期待されている(図2)。つまり、想定されるスキルとしては4技能活用を大前提とし、相手がある状態での対話のみならず、ディスカッションやディベートレベルの英語力が求められている。



図1 今後のビジネスパーソンにとって重要な知識やスキル/図2 企業・団体が目標とする英語スキルの水準

初等中等教育は英語4 技能を重視する流れ

 新学習指導要領では、「英語の4技能5領域を小学校から中学校、高等学校へと、一貫した目標に向かって習得していく」というのが英語カリキュラム上の特徴である。4技能とは、「聞くこと」「読むこと」「話すこと」「書くこと」の4つ。5領域とは、「話すこと」を「話すこと[やり取り]」と「話すこと[発表]」に分け、ほか3技能と合わせて整理したものだ。この5領域を総合的に育成するため、英語教育は前倒し・拡充でデザインされている。

 具体的には、小学校3・4年生段階で教科ではなく、「英語に親しむこと」を目的にした「外国語活動」の枠内で、「聞くこと」「話すこと[やり取り]」「話すこと[発表]」の3つの領域にフォーカスし、音声面を中心として学ぶ。「教科」ではないため検定教科書は存在せず、成績もつかない。授業内容は学校や自治体ごとに決定できるが、語彙に関しては、小学3~6年生までの授業を通じて600~700単語程度を習得するよう目標が設けられている。そして、5・6年生で「読むこと」「書くこと」を加えて4技能5領域化した教科として英語を学んでいく。

 中学校段階では授業単位時間は現行と同等ながら、図に示すように、対話等のコミュニケーションや活用に重きを置いた教育が展開される。高校ではディベートやディスカッションレベルにまで英語力を高めることが明示されている。これらは図1・2で見る社会ニーズに対応している内容だといえるだろう。

 社会と中等教育の間にある高等教育段階で、こうした総合的な英語力育成にドライブをかけられるか、ストップしてしまうかは、高大社接続観点で極めて重要なのである。



図3 外国語教育の抜本的強化のイメージ


(文/鹿島 梓)


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入試は社会へのメッセージ[1] グローバルスキルとしての英語力をどう育成するか