自律的にキャリアを描ける教育を行い人材ニーズの高い領域に女性を輩出する/武庫川女子大学
「一生を描ききる女性力を。」をビジョンに掲げ、女子総合大学として幅広い領域での人材育成・輩出を推進する武庫川女子大学。その意図と今後の展望について瀬口和義学長に伺った。
女性活躍の時代に、自らの意志と行動力で可能性を広げる女性を育てる
武庫川女子大学(以下、武庫女)の3学部新増設・改組、社会とのつながりの強化等は、100周年に向けた飛躍を目指すプロジェクト「MUKOJO ACTION 2019-2039」の一連の取り組みだ。武庫女の母体となる武庫川学院が創立80周年を迎えた2019年より、「一生を描ききる女性力を。」をビジョンに掲げ、「日本の女子大を、更新しよう。」をスローガンに女性のキャリア形成や学びの幅を広げる取り組みを推進している。このビジョンについて、瀬口学長は「より一層女性の活躍が求められる令和の時代において、自らの意志と行動力で可能性を広げ、生涯を切り拓いていく女性を育てていくという宣言」と説明する。さらに、「ジェンダーギャップに立ち向かうことのできる力、キャリアについて自ら考え構築する力、男性に比べて変化の激しい人生においてライフイベントを乗り越えられる力、この3つの力を育てることが、100周年に向けた20年間で本学がやるべきことです」と続ける。
大学を開かれた場に変え社会とのつながりを強化
そして推し進められたのが、大学自体をよりオープンな場にすることだ。2019年10月には、キャンパス最寄り駅の阪神電車「鳴尾・武庫川女子大前」駅の高架下空間に、公開講座等に利用できるレクチャールームやカフェ、スポーツジム、訪問看護ステーションなどを備えた「武庫女ステーションキャンパス」を開設、学生の学びと地域活性化の拠点とした。また、2020年に新設した経営学部の校舎のコンセプトを「シェアードスタジオ」とし、教職員、学生、学外の人々のオープンなコミュニケーションを促すオープンレイアウトにした。「かつての女子大は、閉ざされた世界で教養教育を受ける場でしたが、多様な場面に人材を輩出していくには、社会との接点を増やしていくことが必要。そのために、セキュリティーに配慮しつつ、垣根を除いてよりオープンにしていく」と瀬口学長は話す。
大学自体を開かれた場にするだけでなく、学生が外に出て社会との接点を持つ機会も増やしている。例えば経営学部は、企業等での「インターンシップ」、地域でのボランティア活動「サービスラーニング」、調査・研究のための「フィールドワーク」の選択必修3科目を設けて1年後期から履修可能とし、企業や自治体、NPO等と連携して、これまで99プロジェクトに延べ700名の学生を送り出している(2021年8月時点)。「女子学生の場合、経験則上、実地での学びから生じた疑問をもとに座学で理論を学ぶほうが、教育効果が高い傾向があります。また、社会に出た後には、正解のない課題に対峙して答えを見つけ出すことが繰り返し求められる。よって、早いうちに社会との接点を持って疑問や問いを得て、その解決のために学ぶという経験を重ねておいたほうがよい」と瀬口学長は話す。学生が外に出ていくことと企業や地域の人々を大学に呼び込むことは、全学で積極的に進めていくという。
人材ニーズの高い領域に学部を設け女性リーダーの輩出を目指す
そしてもう1つ、社会とのつながりを重視し、その課題に応える取り組みが、2020年4月の食物栄養科学部、建築学部、経営学部の3学部の新増設・改組だ。社会からの要請がある分野で活躍できる人材をしっかりと教育・輩出していくことが武庫女の意義であるという考えのもと、女性比率が未だ低いが人材ニーズがある領域に着目。就職先の見込み、入学志願者予測、ステークホルダーの意見等からニーズがあると判断し、改革に踏み切った。
中でも経営学部は、既存の学科を拡張して設けた他2学部とは異なり、武庫女初の社会科学系学部として新設されたが、開設2年目を迎え、2学年を合わせた収容定員充足率は106.7%と全学部の中でも最も高い。この状況を、瀬口学長は「女性活躍推進法をはじめとした法整備が行われて女性活躍への期待が一層高まっているなか、女子学生の間でも仕事でキャリアアップしていく機運が高まっている。収容定員充足率だけでなく偏差値も良い水準に来ており、ニーズの高さを感じています」と評価する。
女子総合大学として日本の女子大をリードする存在に
これで10学部17学科、大学院7研究科、学生数約1万人を擁する女子総合大学となった武庫女。今後について、瀬口学長は「今ある学部において十二分な教育・研究を行い、社会が要請する人材を育て送り出していくことはもちろん、まだ人材が十分に供給されていない分野があれば、率先して新しい学部を作り人材を供給していく。そうして女子総合大学として日本の女子大をリードしたい」と話す。
さらなる飛躍のための当面の課題は、学部・学科間の横断的な教育・研究の充実だという。そのために瀬口学長が期待を寄せるのは、2020年に開設した女性活躍総合研究所だ。女性活躍推進、グローバル化推進、ダイバーシティ推進、次世代女性人材育成、女性のキャリア支援等、幅広い領域で研究を展開するとともに、「一生を描ききる女性力を。」のビジョン実現に向けた教育展開にも大きく関わっていくという。
「2022年度から開始するガイダンスプログラム『MUKOJO未来教育プログラムSOAR(ソアー)』では、研究所所属の教員がこれからの女性のキャリアに関する講義等を提供します。学生のキャリア形成、研究教育活動等、様々な面で、本学や学生を成長支援する存在になることを期待しています」。
社会の要請を敏感に察知し、教育・研究に反映しながら選ばれるための大学経営を推し進める武庫女。女子総合大学としての今後の進化に期待が高まる。
(文/浅田夕香)