【TOP INTERVIEW】4年間一貫した専門職連携教育を実践 令和を健康な時代にする大学を開学/令和健康科学大学 学長 西村 泰治
令和健康科学大学(2022年4月開学)学長 西村 泰治(にしむら やすはる)
1952年生まれ
1976年 九州大学 医学部医学科卒業、九州大学医学部 第二内科入局
1982年 九州大学 大学院医学研究科 医学博士取得
1982年 東京医科歯科大学 難治疾患研究所 人類遺伝学部門 助手
1984年 九州大学 生体防御医学研究所 遺伝学部門 助手
1985年 ハーバード大学 ダナ・ファーバー癌研究所 小児腫瘍発生学部門 ポスドク(NIH支援による留学)
1986年 九州大学 生体防御医学研究所 遺伝学部門 助教授 (留学中に昇任)
1992年 熊本大学 大学院医学研究科・大学院独立専攻系 免疫識別学分野 教授
2000年 熊本大学 アイソトープ総合センター長(併任)
2015年 熊本大学 大学院生命科学研究部長、大学院医学教育部長、医学部長
2017年 熊本大学 大学院生命科学研究部 名誉教授、免疫識別学講座 シニア教授
2019年 学校法人巨樹の会 令和健康科学大学 大学設置準備室長(学長予定者)
2021年 8月27日 大学設置認可を取得
専門学校から4年制大学への新たなスタート
学校法人巨樹の会は2022年4月、福岡市東区に令和健康科学大学を開学します。学部構成は、看護学部(看護学科80名)、リハビリテーション学部(理学療法学科80名、作業療法学科60名)の2学部3学科です。
法人を運営するカマチグループは、急性期病院とリハビリテーション病院を中心に、九州と山口県に9施設、関東に18施設を有する医療法人で、創設者の蒲池真澄会長が下関市で24時間365日体制の救急医療システムを立ち上げたのが始まりです。
蒲池会長は病院を増やす一方で、看護師が充実していなければ十分な医療提供ができないことや、急性期患者が寝たきりで廃用性筋萎縮を起こす前の、早期リハビリテーションによる予後改善が重要と考え、看護師、理学療法士と作業療法士を養成する教育機関として、1990年に福岡看護専門学校を開校され、2004年に小倉北区(北九州市)、下関市(山口県)、八千代市(千葉県)に3校のリハビリテーション学院、2007年に福岡和白リハビリテーション学院(理学療法学科と作業療法学科)を開校されました。
これまで看護とリハビリテーションを2本柱に専門学校を運営して参りましたが、医療の高度化・多様化、在宅医療、健康長寿社会に貢献する予防医療などへの社会的要請の高まりを重要視しました。そこで、より高度な医療専門職を養成するために、上記の専門学校2校を閉校し、4年制大学を新設することにいたしました。
法人の一貫した教育理念は「人間愛と自己実現」です。病んだ人をケアできる人材を育成するには、人間愛が必須です。自己実現については、学生一人ひとりが夢や目標を持ち、自己を実現できるキャリアパスを登ってほしいという思いがあります。そのために、本学の最大の強みである全国27施設の関連病院との連携を活かした臨地・臨床実習を充実させ、1年次の早期から臨床現場を見学し、これから勉強する学問がなぜ必要なのか、学生のモチベーションを高めながら教育いたします。
4年間一貫した専門職連携教育
教育の第一の特長は、専門職連携教育です。現代は「チーム医療」の時代で、学生時代から各職種が担う役割をお互いに理解し、連携を図る意識を高めておく必要があります。そこで他大学が3~4年次から専門職連携教育を行うところを、本学は1年次から4年次まで一貫して行うのが大きな特色です。医師は救急処置はできても、日常生活に復帰するまでケアするのが難しいのが実情です。カマチグループの病院では、理学療法士と作業療法士が早期にベッドサイドで診療を開始することにより、入院日数の短縮や早期の社会復帰に貢献しており、看護師と連携して新しい医療を発展させる体制を作っております。
第二の特長はシミュレーション教育です。大学ビル3階の全フロアを使ったシミュレーションセンターは、模擬病室や模擬集中治療室など、病院と同等のリアリティの高い環境を備えた九州屈指のシステムです。現場での実習に入る前に患者を模したシミュレーターを利用して、患者さんに負担をかけずに実習効果を高めます。またビデオで患者の状態を供覧するなどして、看護師、理学療法士あるいは作業療法士として何をすべきか考えさせて実践力を高めます。
さらに学生全員にiPad®を無償提供し、ICTを積極的に取り入れた学習管理システムやe ポートフォリオなどで、反復学習ほかの学修を支援します。
各学科の特長として、看護学科では4年間を通したストーリー型授業「臨床実践中心型カリキュラム」を取り入れ、電子カルテやシミュレーターをフル活用して、入学と同時に仮想病院の新人看護師となり、臨床での判断力を備えた看護師になるプロセスを学びます。
理学療法学科では、医工連携を基盤にテクノロジーを駆使した新たな理学療法の創出を目指します。そのために同じ専門性を持つ教員陣がユニットを構成し、各ユニットの高度な知識と技術を横断しつつ4年間かけて縦断的に学修し、同時に研究力も養う独自のユニット制教育を実践します。
作業療法学科では、作業療法の対象を「心身に障害のある人や高齢者」から「一般の人や地域」に拡大します。作業療法は、その人が望んでいる作業ができるように支援するものであり、治療だけでなく、予防、福祉、教育、ビジネス等、多くの学問分野と融合しています。しかし、社会における作業療法士への需要は大きいが人材不足という問題があり、社会に向けた作業療法士の重要性に関する啓発活動は、我々にとって重要な課題であります。
学生の個性を重視した教育
新しい大学を作るに際して、私は学生の個性を大切にしたいと考えております。やる気は、その対象に夢や希望を持てるかどうかで決まり、学生は一人ひとり個性が異なるので、画一化した授業で醸成するのは難しいでしょう。それぞれの学生の個性に合った将来像を提示するのが最高の教育であり、そのために臨床現場重視型の教育に力を入れます。
4年制大学化により学生を国家試験に合格させることは当然ですが、高い倫理観、探求心と実践力を持つ人材を育成いたします。また指導者となる人材を育成するために、今後、大学院の設置を計画しております。
人生100年時代を迎え、多様化・高度化する医療に対応し健康長寿社会を担う医療専門職が、ますます必要とされることは間違いありません。我々の臨床実践中心型かつ専門職連携を重視するカリキュラムによる、社会のニーズに合致した「健康な未来の達成に貢献する人材育成」が、本大学の最大の使命と考えております。
(文/能地泰代 撮影/河波隆博)