独自開発の学習システムとティーチングアシスタントの存在が多様な学生を卒業へと導く/サイバー大学

図1 サイバー大学 学部・コース

 メディアを活用した完全通信教育による大学教育にいち早く取り組み、幅広い層の学生に質の高いIT技術の学修機会を提供してきたサイバー大学。その学習システムは昨今のコロナ禍において大学教育の現場のみならず様々な業界から注目を集めている。その注目の裏にある大学ならではの取り組みや今後に向けた課題等について、川原洋学長に伺った。

オープンアドミッションをポリシーに学ぶ意欲を強く持つ学生を受け入れ

川原洋学長

 サイバー大学の学生は、およそ6割が社会人学生として何らかの仕事を持ちながらカリキュラムをこなしている。残り4割のうち半分強は高校新卒からの進学、半分弱は子育て中または子育て後、リタイア後等に学びを志した学生という分布だ。ITを学びたいという動機は共通しているものの、それ以外の属性は実に多種多様である。なかには競技で世界を転戦するスポーツ選手や芸能活動との両立を図る学生もいるという。学力や学ぶ意欲はあるものの身体的・精神的理由で通学できない学生の入学ケースもある。

 男女比で見ると、男性73.2%に対し女性26.8%。およそ3:1の比率となっているが、2021年秋入学で見るとその比率はおよそ2:1となっており、平準化が進んでいる(図2)。女性もIT スキルを身につけ職場進出し高い経済力を持ってもらいたいとの考えから、大学では女性も受講しやすいと思うプログラムを2016年より設けており、その成果が出始めていると川原学長は言う。年齢別では20代が突出して高く46.2%となっており、以下40代が16.5%、30代が15.8%と続いている。

図2 在学生の内訳

 サイバー大学ではオープンアドミッションを一つポリシーとし、入試では学力ではなく学習の目的や卒業後の将来像の明確さを重視している。全ての授業がオンラインとなるため、この強い意識や意欲は不可欠だろう。一方では、入学後の学びに適応できるよう国語、数学、情報、英語の基本的な学力を補習するリメディアル教育の機会も提供している。また、入学直後には「スタディスキル入門」と呼ばれる教養科目の受講を必須とする。文字通りサイバー大学で学ぶうえで必要なスキルを身につけるためのもので、学びを進めるための自己管理の方法、オンラインにおける他学生とのコミュニケーションやディベートの方法等を指導する。

時間、場所を問わない学びを可能にするオンライン学習システム

 サイバー大学での学びを特徴づけているのが、独自開発のオンライン学習システム「Cloud Campus」だ。パソコンやスマートフォンからいつでも学習することができるこのシステムの効果もあり、サイバー大学の履修継続率は2021年10月現在で85.7%を誇っている。

 「日中フルタイムで働く学生の多くが4年間の標準在学期間で卒業していきますが、これはやはりITの力の賜物だと思います。Cloud Campus なら、いつでも、どこにいてもスマホで直ちに授業に参加できますし、小テストも受けられます。皆さん、通勤中や仕事の合間、仕事が終わった後の夜の時間帯や週末等、色々なシーンで時間を確保しているということでしょう。」

 Cloud Campus は現在クラウドサービスとして学外に販売されており、大学では約20校、企業でも160社以上、ユーザー数で140万人以上にも上る大きな広がりを見せている。サイバー大学は「株式会社立大学」であり文部科学省からの私学助成金交付の対象外だが、授業料収入に加えてCloud Campus の売り上げがテクノロジーへの継続的投資の財務基盤となっている。この現状は「結果論」と川原学長は語るが、ITに特化した学びを提供する大学が開発したシステムだからこその信頼感が結果的に通信制大学としての成長戦略にプラスの効果をもたらしたことは間違いないだろう。

独自の学生支援体制を特徴づける3つの役職の存在

 さらに、サイバー大学における学生支援体制の特徴は3つの役職の存在にある。科目別の学習を支援するティーチングアシスタント(TA)、履修科目の選択や履修継続のためのアドバイスを行うラーニングアドバイザー(LA)、そして卒業までのキャリアを円滑に進めるための戦略を共に考える学生サポートセンターのスタッフだ。76.0%という高い卒業率(2021年3月時点)は、この3軸によるサポート体制によるところが大きいと川原学長は語る。

 とりわけ学生の学びを傍らで支える存在となるTAの存在は重要だ。サイバー大学の講義は全てがオンデマンド配信であり、学生はそれぞれ自らのスケジュールの中で自由に受講時間を決めることができる。ただし各授業には出席認定期間が設けられており、通常各科目の授業は配信開始後2週間のうちに受講しなければ出席したことにならない。授業の最後には小テストがあり、出席の有無と授業内容の理解度の確認を行う。TAはこの過程で進捗が遅れている学生に対してメール等でリマインドし、教員とは違う視点から学生へのアドバイスを行っている。

通信制高校が増えたことで通信制大学を選択する学生も増えるはず

 通信制高校が全国的に増え続けるなか、今後そこに通う高校生達が進学先として通信制大学を選ぶことが自然な流れになるだろうと川原学長は言う。オンデマンドという特性上、高校新卒で入学し、日中仕事をしながら学びを進められれば、卒業時には学歴と職歴の両方が手に入り、その後のキャリアアップやキャリアチェンジもより有利に進められる。そんな学生を増やしたいという期待も込められている。学びを求める学生の属性だけでなく、学びと向き合うスタンスや卒業後の歩みにおいても、通信制大学は多様な可能性に満ちているということだろう。


(文/高橋晃浩)


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