【TOP INTERVIEW】即戦力にとどまらない、生涯にわたって企業や業界を牽引する人材を育成/学校法人河合塾学園 理事長 河合 英樹


河合 英樹氏

学校法人河合塾学園 理事長 河合 英樹(かわい ひでき)
1982年生まれ
2006年 一橋大学経済学部 卒業
   三菱地所株式会社 入社
2011年 同社退社
2012年 学校法人河合塾 入塾
総合企画部長、グループ経営戦略本部長を歴任
2016年 学校法人河合塾 理事就任
学校法人河合塾学園 理事長就任(現職)
2018年 学校法人河合塾 副理事長就任
2020年 学校法人ドルトン東京学園 学園長就任(現職)
学校法人河合塾 理事長就任(現職)


河合塾グループが運営する3つの専門学校

 河合塾グループは、1933年に創立者である河合逸治が自宅を開放して創設した私塾「河合英学塾」を出発点とし、1937年に名称を「河合塾」へ改称、名古屋市に開校しました。

 現在、グループ内で学校法人と株式会社による教育事業を展開していて、河合塾学園は「幼児・小学生向け教育」と「専門学校教育」を行う学校法人です。

 私の曾祖父に当たる河合逸治は、英語教育に生涯を捧げた人間でした。逸治の英語学校設立の遺志を継ぎ、第二次ベビーブーム直前の1970年、社会人のための語学再教育機関として設立した「河合塾名古屋英会話センター」が、現トライデント外国語・ホテル・ブライダル専門学校の前身です。1976年には愛知県初の専修学校として認可され、名古屋外国語専門学校へ校名変更しました。その後、卒業生の中部実業界での活躍による人気の高まりから既存のキャンパスが手狭になり、1979年に名古屋駅に新キャンパスを開設しました。

 1984年には情報処理技術者の教育を目的に、名古屋情報処理専門学校(現トライデントコンピュータ専門学校)を開校しました。当時の情報処理技術試験の受験対策に、過去問の分析を反映したテキストや授業を用い、河合塾が長年蓄積した教育ノウハウを投入した学校です。1989年には、暮らしのゆとりが重視される中で機能性と感性のどちらをも満たす高度なデザイナーを育成しようと、トライデントスクールオブデザイン(現トライデントデザイン専門学校)を開校しました。学校内外の様々な場所でデザインや感性に触れるオリジナルカリキュラム「感性教育」が特徴です。

 校名に冠したトライデントとは、文化・国際・情報の3つ(TRI)の理念の統合化(IDENTIFY)を示す造語「TRIDENT」です。現在学生数は約1,500名、専修学校認可から45年間で30,000人以上の卒業生を輩出してきました。

塾訓と教育理念が目指す「生涯の学び」

 河合塾グループの塾訓に、「汝、自らを求めよ」があります。古代ギリシャのデルフォイ殿堂の入り口に掲げられた「汝自らを知れ」を、創立者が「自ら究め、この世に生まれてきた使命に生きる」と解釈し、塾訓に定めました。これをグループ全体の共通認識に、専門学校の教育理念は「トライデントは、みなさん一人ひとりを、志望の職業へ導くのはもとより、将来、業界を牽引できる人材へと育て上げます。」としています。つまり即戦力の育成で終わらない、生涯にわたり企業や業界を牽引するマネジャーやリーダーの輩出が真の目標です。

 そのための独自の教育システムに、学習PDCAサイクルがあります。学生が「パーソナル・プランニング」でなりたい自分を設定し、担任・講師・教務スタッフが「学習ポートフォリオ」を共有することで、学習プロセスを“見える化”します。同時に社会人基礎力の3つの力が身につく教育を行い、授業手法にも早期からアクティブラーニング型授業を取り入れています。さらに業界から最新情報を収集し、産学連携プログラムとカリキュラムの開発・改善を常に行っています。

若い職員の危機意識が改革の原動力に

 今でこそ河合塾学園の財政状況は安定していますが、5~10年前までは長らく苦しい状態が続きました。それを職員の採用や育成に注力し、適材適所で活躍してもらうことで乗り越えてきました。専門学校プロパーの職員を採用し、若いメンバーが帰属意識を持って自分達の学校を良くしようと取り組んでくれたことで、その危機意識が職員だけでなく講師の側にも伝わりました。そして講師も募集に積極的に関わってくれるようになり、教職一体で様々な授業改善のアイデアを出して、徐々にお客様の評価へと繋がっていったのです。プロパー採用の効果はとても大きく、現場の雰囲気とモチベーションの向上が生徒に還元されていくという王道の方法で、時間をかけてやってきた成果が出始めました。この若手職員の中から管理職候補も出てきたので、これからより加速した効果が出てくるのではないかと期待しています。

学生満足度を高める投資で攻めの循環に

 改革によって未来に投資する利益水準も確保できたので、これをどんどん投資に回す、攻めの循環に入り始めました。

 まず安心・安全に学ぶ環境としての設備施設の刷新です。エアライン学科が使う研修機材を全て新しいものに入れ替えたほか、2020年度にはデザイン専門学校の学生が企画・デザインを手がけた国際ホテル学科の新実習室が完成しました。予算が限られる中でも学校全体で盛り上げて行くことで、お互いの学びの連携にも繋がったケースです。コンピュータ校の場合は最新機材が必須なだけでなく、学科新設時には最先端の技術が分かる講師の確保もまた投資だといえます。前述の若手職員の採用や職員力向上のための研修といった人材育成そのものも、教育業界にとっては一番の投資でしょう。

 ここ2年間で入学者数が増えましたが、増えた時ほど今までと同じことをやっていては満足度が下がるので、学生の満足度を高めるための投資に注力してきました。現在は、年度内の完成を目指して、次期中期計画を策定中です。

 最後に、本学は希望の業界や会社に入るのがゴールではなく、世の中の変化に常にアンテナを張って、ありたい姿を自ら描き、その実現に必要な改善をし続ける人材であってほしいという思いを持って、学生一人ひとりの意識を高め、高度な職業人として社会へ送り出しています。今後我々にできることは、将来的な成長や目標達成、自己実現の喜びをしっかり伝えて、生涯学び続ける努力をし続けてもらえる人材を育成できるかというところにかかっているのだろうと思っています。


(文/能地泰代 撮影/冨永智子)


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