保護者との連携強化のための、大学からの情報発信/阪南大学・跡見学園女子大学

大学の教育内容や学生支援に期待もありながら、不安も併せ持つ保護者に向けて、大学が行う積極的な情報発信について聞いた。

阪南大学

受験生、在学生双方の保護者に向け、LINEやWebサイト、書面による丁寧な情報発信を実施

入試広報課 髙橋慶一 氏、教務課 中嶋孝宏 氏

「HUPAS」

 阪南大学は、教務課が在学生の保護者向けにきめ細かい情報発信を行うことで、保護者と連携した学生のサポート体制を整えている。背景には中途退学予防という課題意識があり、「何のケアもせずに退学してしまう前に、早期発見と丁寧なサポートが必要」(教務課・中嶋孝宏氏)だと考えた。そこで2016年度から、①保護者の大学に対する理解促進と不安解消、②保護者の来学機会増大、③中途退学予防としての保護者との連携強化の3点を狙いに、「保護者対象大学体験フェア」と「教務相談会(ゼミ担当教員との個別面談)」を開始した。同時に保護者専用ポータルサイト「HUPAS」を開設し、学生の出席状況、成績状況、時間割等、学修支援に重要な情報を配信している。2020年12月からはLINEによる双方向コミュニケーションも導入し、月4~5回のペースで、履修登録や奨学金などタイムリーな情報を精査して配信することで、LINEと連携した「HUPAS」の利用促進を期待している。

 今年度は特にオンラインに注力した。10月に体験講義のライブ配信及びオンデマンド配信によるフェアを開催、同時期に1カ月間の個別相談会を設けた。コロナ禍でオンライン授業についていけない成績不振の学生の保護者に向けて、書面やLINEなどあらゆるツールを駆使して情報発信し、専用のフォームで予約受付、教務課が担当教員との日程調整を行った。手間はかかったが、相談件数は例年より多い206件、中途退学者も減少傾向にあるという。全体の4割がオンラインを希望し、他府県在住の保護者や感染を心配するニーズにも応えることができた。

 入試広報課・髙橋慶一氏は「入試広報でも保護者向け大学案内を作成しているが、親子の関係性が昔より強くなっているので、保護者に特化するよりは受験生と保護者を一括りで考えたほうがいい」と語る。「今後は新しい教育内容などのポジティブな情報と、今起こっている事実を伝える情報の両面を発信しながら、“保護者に丁寧なサポートをする阪南大学”という定評につなげたい」と続けた。

跡見学園女子大学

保護者が仕事帰りに気軽に立ち寄れる「ナイト説明会」短時間で大学理解を深める機会を作る

入試課長 障子 恵氏

 跡見学園女子大学は、今年度から初めて「受験生の保護者対象ナイト説明会」を開催した。「跡見学園は、1875(明治8)年に開校した、日本人女性が作った日本初の私立女子教育機関です。皇族・華族とも関わりがあったことから、昔は歴史のあるお嬢様学校というイメージであったが、今は跡見をご存じない若い保護者の方も多い。もっと本学を知ってほしい」と障子 恵入試課長は語る。

「ナイト説明会」PRチラシ

 オープンキャンパス(以下OC)で保護者向けの説明は行っていたが、OCはどうしても受験生優先になる。一方で、在学生の保護者向けに教学説明会や就職説明会を開催すると参加者は増加の一途で、これは保護者が大学のことを知りたいという表れだと感じていた。それならば保護者にフォーカスした機会を設けて必要な情報を伝えれば、安心して大学へ送り出してもらえると考えたのだ。

 ナイト説明会は、保護者が仕事帰りに気軽に立ち寄れて、帰宅にも支障のない17:30から2時間に設定した。歴史を含む大学紹介のビデオの上映、教育理念、学部学科構成、学生支援・就職支援体制の説明、学生によるゼミ紹介、キャンパスツアー、個別相談という流れで、短時間で同学について理解してもらえる内容を心がけた。

 「女子大を選ぶ層は保護者の影響力がある」(障子氏)としたうえで、保護者が最も心配するであろう大きな2点、①大学としての学生生活の支援体制、②就職課のフォローアップ体制に特に力を入れて説明している。教職員が連携し、さらに企業や地域、自治体、警察等、社会ともつながりながら、学生に寄り添う支援体制づくりを目指していることを伝えた。

 こうした対応に保護者からは、「手厚いサポート体制があり、安心して子どもを任せられる」「コロナ禍で就職が心配だったが、分かりやすい説明で来校してよかった」「想像していたより良い大学だった」など、総じて好意的であることがアンケート結果からも分かった。

 ナイト説明会は時間的制約もあるので、保護者への説明はナイト説明会とOCの一体化で捉えているという。「特に学び方は、座学中心であった保護者の時代とは随分変わったので、口頭で説明するよりもOCでお子さんと一緒に体験してもらう方が効果的。今年は入試課の若手女性職員が企画した模擬ゼミを体験して頂いたところ、大変好評でした。また、入学後、学生生活で困った時の相談窓口が分からないことも保護者の不安の一つ。保護者が安心して本学へ送り出していただけるよう、今後も丁寧に対応したいと思います」(障子氏)と話す。


(文/能地泰代)


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