大学ブランド力の理由[3]常に「学生ファースト」を基点に、 変化し続ける瞬発力ある大学/大和大学

大和大学キャンパス


 大阪府吹田市に所在し、理工、政治経済、社会、教育、保健医療の5学部、学生数約3000名を擁する大和大学。全国屈指の進学校、西大和学園が2014年に開学した同大学は、リクルート進学総研「進学ブランド力調査2021」の関西エリア志願度ランキングにおいて、開学からわずか8年で対前年10ランクアップの18位となった躍進中の大学だ。

“東の早慶、西の大和”を目指す

大和大学 田野瀬 良太郎 学長

 同学園の創始者であり、自ら学長を務める田野瀬良太郎学長は、「36年前に西大和学園高等学校の認可を受けた当初から、学校法人と称するからには、幼、小、中高、短大、大学の全てを運営する総合学園にするのが夢だった」と語る。

 同学園は奈良県を中心に、1986年に設立した西大和学園高等学校、1988年に同中学校、1993年に幼・小・中課程のカリフォルニア校、1998年に白鳳女子短期大学(現白鳳短期大学)を開学してきた。いよいよ大学をという時に「目指したのは入試難易度において、“東の早慶、西の大和”と称されるレベルの大学を作る」というものだった。

 大学開学の動機の一つとして田野瀬学長は、「私どもの中高の生徒達は、概ね難関国立大を目指す。関西では京都・大阪・神戸大ということになるが、志望校に合格できなかった場合、関西の私大ではなくレベルの一致する関東の早慶に進学するという選択肢を取らざるを得ない。しかし後者は保護者の経済的負担増や関西からの人材流出が問題」だと言う。

 企業人だった自身の経験による「顧客第一」を信念に、学校や教員側の都合ではなく、学生ファースト、保護者ファーストで施策を講じてきた。学校運営で一番大事なことは、生徒・保護者との信頼関係の構築で、それに腐心してきたという。大学も「関西にいたい受験生の進学先確保」という顧客ニーズに応えるものだ。

中高の良さを生かした担任制と高い出口実績

 “東の早慶、西の大和”を目指し、まず校地に選んだのは大阪だった。JR大阪駅から9分、吹田駅近くのアクセスに恵まれた校地について、「通いやすさは学びやすさ」であり、関西一円のどこからでも通える場所でなければ多くの受験生には受験してもらえないと考えた。さらに「一番大事なのは総合大学という構え」とし、今後の受験生減少を鑑み、学部数は文理を備えた6~7学部、学生数は7000~8000名規模の、コンパクトかつ、常に時代に合わせ変化し続ける瞬発力ある大学を目指した。開学時の保健医療、教育の2学部から、政治経済、理工、社会と、概ね2年に一つのペースでスピード感をもって進められてきた学部設置からもうなずける(図1)。


図1 開学から学部設置の動き


 田野瀬学長が「中高の良い制度は大学にも活用できる」と語る同大学の特徴は、1学年200名に対してきめ細かく進路指導する担任制だ。学生ファーストによる独自のキャリアサポートでは、担任・キャリアセンター・学部の3者が連携。現在どの会社にエントリーしているかといった各学生の就職活動を全て掌握し、一人ひとりの学生を中心に進路指導を組み立てて支援することで、学生満足度を高めている。

 学部の教育目標も、学生と保護者の一番のニーズである出口の数値目標を設定し、それに向かって各学部の教育がなされている。例えば教育学部は教員採用率で、1年次からの独自の学校現場研修「ヤマトプラン」や試験対策の徹底により、今年(2021年3月卒生、以下同)は86.2%となった。政治経済学部は5000人以上の大企業内定率が今年は45.6%となった。保健医療学部は国家資格合格率100%を徹底し、今年の看護師試験合格率は98.9%をマークした。

 関西経済会とのパイプを通じた実学教育も強みだ。例えば政治経済学部なら企業経営者からビジネスの最先端を学ぶ「実学講座」や、官僚トップ経験者などの特任教授から政治と経済を学ぶ「リレー講座」である。理工学部設置の際には「社会のニーズを敏感に捉え、文理の枠を超えた広い視野を持つ人材を育成してほしい」と企業の要請を受け、1年次から政治経済学部と合同で、企業の講師による「文理融合型実学講座」も展開されている。

新学部やキャンパス拡張で関西認知度50%目指す

 「今後は認知度を上げて受験者数を増やすことで学力の難易度を上げていく」と田野瀬学長。ある調査によると同大学の関西での認知度は35%で、これを今年度は50%にするべく、今まで西日本中心だった広報活動を東日本にも拡大する。具体的には東日本の高校訪問に力を入れ、ターゲット校を500校増やすという。

 さらに2023年4月にはデータサイエンスに特化した新学部、情報学部を設置届出中。7つ目の新学部も検討しており、今年夏には方針が決まる予定だ。

 開学10年目に向けた大規模なキャンパス拡張工事も進行中で、情報学部棟やアリーナ、森の公園など、地域と融合したワンキャンパスの総合大学の形が整いつつある。田野瀬学長は「来年度には一気に認知度を上げてブランド力を高め、“東の早慶、西の大和”へさらに一歩前進する」と大志を抱く。


図1 開学から学部設置の動き



(文/能地泰代)


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