お笑いタレントの動画で興味喚起し、学生発の自然体の情報で志願度を高める/関西福祉大学

 関西福祉大学は、2022年度の学生募集広報で、お笑いコンビ「わらふぢなるお」をメインキャラクターに据えた受験生サイトを開設。Webやパンフレット等学生からの情報発信等を強化する同大学は、現在の高校生の行動特性やコミュニケーションのあり方をどのように捉えているのか。同大学の山戸彬睦氏・吉田修子氏にお話を伺った。


関西福祉大学 山戸彬睦氏、吉田修子氏


「誰か」の影響で意思決定する高校生への対応

 入試広報を担当する山戸彬睦氏は、情報の受け手である高校生の昨今の変化について次のように語る。

 「従来通りに大学紹介のパンフレットやHPを通じた広報は継続しますが、それだけでは大学の魅力が伝わりにくくなっているように感じています。オープンキャンパスで実施したアンケート等を見ても、最近の高校生は志望校決定において、家族や高校教師からの助言、友人等『誰か』の影響を受ける傾向が強い。自分がいいなと感じた大学に対して、他者の否定的な意見あるいは好意的な声に考えを左右されがちです。そこで、高校生自身がSNSを中心に、大学の情報に直接接触したり、相談できるような工夫をすべきだと考えました」。

 一方で、単に資格取得目的だけで進学先を決めるのではなく、仕事やキャリアの長期的な目的を明確に持って受験する層も増えているという。

 「家庭内での会話や、キャリア教育の進化の影響もあるのではないかと考えています。そういった子に対して、本学の卒業生が生き生きと働く姿やキャリアパスがイメージできるよう、YouTube等も幅広く使って情報を用意しておく必要があります」(吉田氏)。

動画の魅力を高めるため、芸人の自由な発想を生かす

 SNSも含め、多様な手段で情報を発信する同大学が、その拡散性を高めるために、お笑い芸人「わらふぢなるお」を起用した。受験生向けの特設サイトを来訪すると社会福祉学科・児童教育学科・保健教育学科・看護学科の特長をコント仕立てで紹介した動画が掲載されている。各動画の長さは5分前後。コント動画はわらふぢなるおのキャラクターを生かした、思わず笑ってしまう内容だ(図1)。


図1 お笑い芸人「わらふぢなるお」を起用した動画


 動画コンテンツの内容に関しては、ほぼ、制作者サイドに任せたという。先方にはパンフレット等大学を知ってもらう素材を渡し、各学科のアピールしたい点を1つ2つ伝えたものの、余計な制限を加えず、芸人の自由な発想で面白いコンテンツを作ってもらうことを重視した。

 「この動画は関西福祉大学という存在を認知したのち、資料請求したりOCに参加するといった行動へとつなぐ役割と考えています。ですから、あれやこれやと情報を詰め込むのではなく、本学への興味関心を高め、志願に向けて次のステップに進んでもらうことに的を絞りました」(山戸氏)。

 動画コンテンツの下には、各学科で学べる内容や取得可能な資格、在学生・卒業生のインタビュー記事、OCの予約ページ、資料請求ページ等へのリンクを張っている。動画を見て興味を持った学生に、様々な角度から情報を提供する導線を作っているのだ。

 同大学は、各種広報資料のスマートフォン対応も進めている。例えば、大学案内をデジタル化する際、従来は紙のパンフレットをそのままPDF化していた。しかし2022年度からは、スマホでも見やすい作りに最適化し、効果を分析するという。

学生の情報発信で「世代間ギャップ」を埋める

 募集広報の施策を進める際の課題を尋ねたところ、広報担当部署と高校生との世代間ギャップだと山戸氏は話す。Z世代の高校生が呼吸をするかのように自然にSNSを使いこなす状態と、大人である広報担当者のSNSアプリに対する向き合い方とは乖離がある。そのため、「この記事には大きな反響が寄せられるだろう」と期待して投稿しても、期待外れに終わることが珍しくなかったという。そこで近年取り組んでいるのは、大学の魅力や実際のキャンパスライフを、高校生に近い学生自身に語らせることだ(図2)。


図2 学生が語る動画


 「授業内容や資格取得に関する情報は大学側が語りますが、学生には『学生にしか語れない話』をしてもらっています。事実関係が異なる場合以外は口を出さず、話の内容を学生に任せるのが基本方針」(吉田氏)。

 学生による動画の5月中旬時点における再生回数は順調かつ想定の範囲内だったという。どの動画も平均視聴時間が3分近くあり、いったん見始めた人の半数以上は動画を最後まで視聴していた。これは、コンテンツ自体に高校生が引き込まれたことの証明といえるだろう。また、資料請求の件数も大きく伸びており、高校生の情報収集のあり方にマッチしたコンテンツによって、大学への志願度を高めるという狙いは、ひとまず成功したとみてよさそうだ。

 とはいえ、デジタル・ネットでの情報発信においては、高校生というターゲットを過剰に意識しすぎないことが大事だと山戸氏は語る。「例えば、大学の魅力をインスタグラム等で発信する際、以前は学生に『高校生にウケる投稿を』と頼んでいました。ですが今は、自分達が楽しめる投稿をするように伝えていて、それが良い結果をもたらしています。広報担当者や学生が自分達の目線から、自然体で情報発信することが有効なのではないでしょうか」。


(文/白谷輝英)


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