インタビュー/探究的学修成果の証明
社会に出てなお深く探究し続ける彼らが、今挑む問題とは。
事実に基づいた意思決定で、経営・人事課題解決に資することを目的に、ピープルアナリティクスに取り組んでいます。社内の人事データを集めて分析基盤を作り、データを可視化したり、専門的な分析で人事課題解決を支援します。データ活用が組織全体に広がることを目指して、人事社員へのトレーニングも行っています。
また、ピープルアナリティクス& HRテクノロジー協会の研究員として、講演等で知見を広めたり、専門家と情報交換をして学びを深め、現場で実践しています。
人生の多くを占める「働く時間」をエンターテインメントにするのが私のミッション。実現のためには、多様化する働く人のニーズに応えることが必要です。もし、データサイエンスの力を借りれば、事実に基づいて一人ひとりに寄り添った解決策が提示できるのではと考え、前職でピープルアナリティクス専門のチームの立ち上げに携わり、今のキャリアに至ります。
高校時代の「問い」が探究の始まり
「人間が世界をどう捉え、どんな感情を抱くのか」の探究の始まりは、高校のころに遡ります。大好きだった人への気持ちが、受験勉強にのめりこむうちに冷めてしまい、「この感情の変化は何だろう?」という疑問に答えてくれた脳科学に夢中になりました。
大学では、好奇心の対象だった「人」の問題解決のために、行動を起こすように。アメリカ留学を通して、世界から日本を捉えたことで、日本国民の幸せのために社会を良くしたいという思いがわき、政治に興味を抱きました。そのころ、若者の投票率の低さや政治への関心の低さが問題となっていたのですが、当時は選挙期間中インターネットを使った選挙運動が禁止されていて。主な情報源がインターネットである若者にとって機会損失であり、それ故に意見を発信し、社会に反映することができません。インターネットで情報を得られる環境が必要だと考え、公職選挙法改正を求めた活動に参加し、多くの賛同者の思いが実って、改正が実現しました。
今私が幸せにしたい対象は「働いている人」ですが、問題解決のために、探究に終わりはありません。人間の感情を深掘る心理学や神経科学、社会の価値観を観察する文化人類学、行動変容を促すプロダクト開発の知恵を人事の領域でも生かせるよう、学び続けます。
貧困、障碍、介護といった社会問題をテクノロジーの力で解決するために起業しました。現在の事業は大きく二つ。社会問題解決に取り組む企業へのデジタルマーケティングのコンサルティングと、ESG経営を推進する企業とNPO をマッチングするプラットフォームの運営です。目下、ひとり親の時間の貧困を解決する、廉価での家事代行サービスの開発に取り組んでいます。
私自身、貧困、家庭内暴力、ひとり親といった環境で育ちました。その時に負った心の痛みが、私が社会問題に取り組む原点です。
始まりは「学校」という社会の問題解決
中学、高校では生徒会長を務め、生徒が過ごしやすい学校作りに没頭しました。「伝統だから」という理由で慣習を踏襲する違和感から、全校生徒にアンケートを取って、体育祭も文化祭も希望に沿った内容に変えました。これまでの当たり前を疑って、相手のニーズを知り、解決策を実行して状況を改善させるのは楽しかったですね。
大学は教育学部に進み、昔の自分のように困っている子どもを助けたいと、授業やNPOの活動を通じて、多くの子どもと親に会いました。実態を把握し、原因から課題を設定して、解決のために学生団体を立ち上げました。悩みを持つ中高生に、安心して過ごせる居場所の提供や、キャリア講話の実施、大学や企業への啓蒙に取り組むうちに、「もっとたくさんの人を救うにはどうすればいいのか?」という新たな問いが生まれて。テクノロジーの力を借りれば、必要な人にサービスを届けることも、協力してくれる人に出会えるチャンスも増えるのでは、と考えたんです。志を同じくする企業や団体が協業すれば、互いのアセットや知見が相乗効果を生み、問題解決のスピードもインパクトも大きい。そのためのプラットフォームを作りたいと、今に至ります。
まだまだ人々の関心が高いとはいえない社会問題。ましてやこの領域でビジネスとして成功した事例は少なく、私自身、試行錯誤の連続です。しかし10年後の日本で、社会問題解決のビジネスが勃興し、世界で存在感を高めている―。そんな未来を目指しているからこそ、最初の成功事例となって、ビジネス活性化の素地を作ることに取り組んでいます。誰かの泣いている時間を減らして、笑っている時間を増やすことが私の使命。探究に、終わりはありません。
(文/武田尚子 撮影/平山 諭)
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