Z世代は進路検討でどのようにメディアを使い分けているのか

 多様なメディアに意識的にあるいは無意識に接しているZ世代の高校生達。進路検討の各段階においてどのような情報源に、どのように接しているのだろうか。また各メディアに対して、どのようなイメージを持っているのだろうか。実態を探った。

調査概要


進学情報サイト・情報誌、オープンキャンパス(以下OC)やガイダンス等、進路情報に特化した専門メディアを「集合メディア」とした場合、それが進路検討のあらゆるシーンで最も高いポイントとなっている。次いで、人からの「アドバイス」が2 位。高校生が日常的に接しているSNS については、進路検討のいずれの段階においてもおしなべて低い数字になった。
※ポイントの考え方:各詳細メディアに対する回答者の割合(%)を足し上げた数値

図表1 大学選びのプロセスにおける、5つの媒体カテゴリーの期待値



 「信頼できる」「新しいことが分かる」「面白い」といった3つの感性的価値について、各メディアの評価を尋ねた結果を各媒体カテゴリーごとに集計すると、その傾向に違いが出た。「信頼できる」かどうかについては進学情報の「集合メディア」と最下位の「SNS」には開きがあるが、「面白い」に対しては5つのカテゴリーの数字がほぼ拮抗した。

図表2 感性価値における、 5つの媒体カテゴリーごとの期待値


 媒体カテゴリーを詳細メディアに細分化して評価を見てみると、「高校の先生」が進路検討の4つのプロセスのうち3つで1位で、「人」情報のなかでも特に高い数字となった。「進学情報サイト」が次いで高順位で、特に「大学について情報収集する」においては、半数近い高校生がその価値を感じている。OCも4つの各プロセスにおいて高い。

図表3 大学選びの各プロセスにおける、詳細メディアの期待値 上位15位


 「信頼できる」「新しいことが分かる」「面白い」の3つの感性的価値の指標に対して全般に高いのはOC・学校見学会。「新しいことが分かる」では進学情報サイトが最も高い順位となった。「面白い」については、「あてはまるものはない」という回答が1位。「信頼できる」においてはランキング圏外にあったYouTubeが3位と高順位になっている。

図表4 信頼・新しさ・面白さの感性的価値における詳細メディアの期待値 上位15位


 SNSにYouTubeを加えた、6つのツールについて、大学選びのプロセスごとの評価を比較すると、1位・YouTube、2位・Twitter、3位・Instagramという順位は全プロセスにおいて変わらなかった。YouTubeについては、「大学について見聞きする」では14.0%という数字だが、「興味を持つ」では5.3%まで減少する。学校HP等に埋め込まれてしまうと、YouTubeという媒体個別の評価には表れないかもしれない。

図表5 大学選びのプロセスにおける、SNSに関する期待価値


 SNSにYouTubeを加えた、6つのツールについて、「信頼」「新しいことが分かる」「面白い」の3つの感性的価値について比較した。「信頼できる情報源」としては、6つとも低めで大きな差は見られない。「新しいことが分かる」や「面白い」の評価には、ツールごとの数字に差が見られ、情報収集をするうえで高校生が各SNSの特徴を把握して使い分けていることが推察される。

図表6 信頼・新しさ・面白さの感性的価値におけるSNSに関する期待価値



高校生達はどのようにメディアを使い分けているのか?"




進学情報メディア編集長から見た高校生の情報収集方法

発信されたコンテンツから空気を感じ取る高校生達包み隠さぬオープンなコミュニケーションを


リクルート『スタディサプリ進路』編集長 仲井美夏


身近な「人」から圧倒的な影響

 受験生達は、第一志望校は比較的明確に決定しているのですが、併願校を決めることに対しては難渋します。なぜなら併願校を決めるという行為は、第一志望校に不合格となった状況を想定することと等しいため、精神的負荷が重く、自ら進んでどんな学校があるのかといった検討行動が進みにくいのです。そういったなかでも、受験生達の併願校リストに名前が挙がるようになるには、少しでも早期に彼らの意識の中に学校名が刻まれている状態になるような情報発信が必要です。

 そんな情報源として圧倒的な影響を与える存在は、身近な「人」。先生や保護者、塾の先生、兄弟姉妹や親戚等、「自分より上」の、しかも限られた人の行動や発言で、初期段階の興味が形成されています。

 SNS上での「人」情報にも接点を持つものの、学校検討の主なツールとはなっていません。仮にSNS上で憧れの対象となる大学生の姿を目にしたとしても、そういった状態になれる自分を想像できるだけの自己効力感が持てなければ、その情報はあくまで自分とは別世界のこととして捉えるに過ぎません。

検索よりもリコメンド

 積極的な高校生のなかにはInstagramで大学生をフォローし、DM(ダイレクトメッセージ)を送って直接コンタクトを取る子もいます。TikTokに関しては、ダンスや面白動画を投稿するといった従来の使い方にとどまらず、ニュースを入手するためのツールとして活用するような、情報感度の高い高校生も出てきています。

 一方Twitterは、在学生がアピールする情報を得るために多くの高校生が利用しています。実は、今の高校生は情報を単純に鵜呑みにせず、懐疑的に見ようとする世代。「情報の裏を取る」「本音を探る」という目的でTwitterを使っているケースも多いようです。

 また、SNSにおいては、情報検索することで利用者がターゲティングされ、検索内容に関連する情報が自動的に表出されるアルゴリズムが組まれているわけですが、今の高校生はターゲティングの上で情報提供されることに対し慣れており、好きなアーティスト情報や動物の動画が集中して上がってくることに対して違和感はなく、むしろ効率性が高いと感じています。デジタルネイティブとはいわれながらも、意外にも主体的に検索して情報にたどり着く力は弱い可能性もあることは、情報を発信する大学側としては認識しておくべきかもしれません。

SNS上で大学の「空気」を感じ取るZ世代

 また、大人がリアルの場で感じるような空気を、SNS上で感じ取ることができるのもZ世代。例えばWEB上のOCに登場した教員間の何気ない会話から学校の風土の良し悪しを察したり、動画の内容が押しつけがましければ、ホスピタリティーに欠けた大学ではないかと感じたり、在学生が語るコンテンツも、学校の指示が働いているのではないか等、実に細かいことまで気づくのです。併願校候補として挙がったときに、そういった細かな材料が判断の分かれ目となることがあり、配慮が必要かもしれません。大学からの情報発信もきれいごとばかりだと、逆に懐疑的に捉える、といったピュアでありながら鵜呑みにしない賢さも併せ持つZ世代の高校生。その側面を理解し、包み隠さずオープンなコミュニケーションを心掛けるべきではないでしょうか。


(文/金剛寺千鶴子)


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