早期からの検討・意思決定を受けた大学の入学者選抜の動き

自身の希望を叶えたい高校生の早期から高まる意欲を、大学はどのように測り、学生を迎えようとしているのか。2つの大学の動きを取材した。




東京女子大学
総合型選抜「知のかけはし入学試験」の併願を可能に、より目的意識の高い学生の挑戦機会を拡大

知のかけはし入試 運営委員長 現代教養学部 教授 篠崎氏、入学課 課長 井上氏

 2017年度より志願者の意欲・個性・学力・資質を多面的に評価する総合型選抜「知のかけはし入学試験」(定員20名)を導入した東京女子大学。グランドビジョンで目指す多様な人物受け入れのために、「いわゆるペーパーテストでは測れない、意欲、個性、資質、論理的思考力、情報整理分析力、課題発見力、リーダーシップ、表現力を入試で測り、年々減少が続く地方学生を本学につなげたかった」と篠崎晃一知のかけはし入試運営委員長は語る。従前のAO入試にはあらかじめ対策が立てやすいという課題もあり、事前準備なしに高校生の日常を測る入試の設計を目指したという。

 1次試験では出願書類(評定平均3.7以上)、英語外部検定試験(CEFRB1以上)で一定の学力を担保し、2次試験では講義を聴き、要旨をまとめ、小論文を作成、グループディスカッション、面接を通じてアカデミックスキルを測る(図)。2021年度からは試験内容と学力の3要素の関係性も入試要項に明示した。


図 「 知のかけはし入学試験」第二次選考の流れ


 同入試で入ってくる学生は目的意識やモチベーションが高く、「OCで合格者のトークライブショーを行ったところ、驚くほどしっかりとした考え方と話し方で、この入試が間違っていなかったことを実感した」(篠崎委員長)という。地方出身者の割合も2019年度の2割から昨年度は4割と倍増し、学寮の充実や「挑戦する知性」奨学金による経済的支援が奏功したと分析している。

 導入から6年が経過したが、課題は志願者数の伸び悩みだった。複数の高校から「一般選抜との併願を可能に」との要望を受け、2023年度からは他大学との併願や同大学の「学校推薦型選抜」「一般選抜」との併願ができるように変更。変更点を高校訪問用のチラシや資料で重点的に広報展開し、公式サイトや進学相談会と高校訪問でさらに入試の目的や内容を訴求していく予定だ。

 前述のトークライブショーには大学の予想を上回る150名の高校生が参加した。井上麻紀入学課課長は「この入試に興味を持つ層は、コミュニケーション能力や表現力が高いことが分かっている。専願を外すことで他大に流れる学生もあるだろうが、入試の魅力で惹きつけるほうに期待したい」と、年内からの挑戦機会拡大に意欲を見せた。



(文/能地泰代)





筑波大学
各入試の求める人材像×各専門のAPのバリエーションで自分だけの入試を選び取る

アドミッションセンター教授 大谷氏

多様な入試方式で多様な受験生に対応する

 筑波大学(以下、筑波)の入試は、主に年内実施の推薦入試・総合型選抜・グローバル選抜と、年明けの一般選抜という4種類に大別される。「本学の入試は、自分に合う入試を選びやすいように設計されています」とアドミッションセンターの大谷 奨教授は言う。募集要項には「各学群・学類のアドミッション・ポリシー」として、「求める人材」「入学までに学んでおいてほしいこと」が整理され、加えて入試方式ごとに求める学生像も明快に示されている。入試方式×各学群・学類で求めるものの掛け算で、全体の人材ポートフォリオがマネジメントされているとも言えるだろう。本稿ではその中で、推薦入試と総合型選抜の1つであるアドミッションセンター入試(AC入試)をご紹介したい。

高校までの学力・勉強習慣・志望意欲を問う推薦入試

 まず、推薦入試である。「推薦では高校でしっかり勉強した人を選抜したい」との言葉通り、どの学類でも概ね「調査書の学修成績概評A段階」のほか、論理的思考力や分野への関心を求める。求める要件に照らし、学力考査に大学入学共通テストは使われず(心理学類を除く)、調査書と、思考力を問うための小論文が課される。「推薦合格者は高校までに勉強習慣がついているためか、追跡調査でも初年次パフォーマンスが良い傾向があります」と大谷氏は言う。

 また、筑波で推薦は「一般選抜でも十分合格できる学力のある生徒を先行して獲得する」という目的も担っている。「一般対策と同様にきちんと勉強することで、推薦で課す小論文もスコープに入るように注意しています。難易度で見ると、推薦入試のほうが簡単というわけでもない。同じ競技で、早い段階のスコアを測定するのが推薦という趣旨です」と大谷氏は話す。

自らの問いに根差した問題解決能力の有無を問うAC入試

 次にAC入試である。本入試で求める学生について、募集要項には「問題解決能力を身につけた活動的な人」とある。そのため、「これまでに自ら課題を見つけ、学び、考え、主体的に判断して取り組んできたことを自己推薦書で提示する」ことが求められる(図)。こうした要件に照らし、入学後もAC入試合格者は「自ら問いを立てて学ぶ」ことに長けており、研究分野でも意欲的にチャレンジする例が多いという。

 こうした多様な入試設計が「多面的に実力を伸ばしてきた」受験生には魅力的に映るであろうことは想像に難くない。


図AC 入試の入学者選抜方針




(文/鹿島 梓)


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