入試は社会へのメッセージ[5]改めて高大接続を問う

 本連載は入試をテーマとするが、昨今の入試改革の背景に高大接続に関する一連の議論があったことは論を待たない。本号では、 この“高大接続”の現在について、少し観点を加えて整理したい。

高大接続に関する政策の流れ

 現在の高大接続改革に通じる一連の流れは、高校教育改革を内容とする1991年の中教審答申「新しい時代に対応する教育の諸制度の改革について」、2007年政府の教育再生会議が取りまとめ、高校・大学教育を含む公教育全体の見直しの必要性を示した第二次・第三次報告、学士課程教育や入試の課題と高大連携のあり方を提言した2008年12月の中教審答申「学士課程教育の構築に向けて」、これらを踏まえて2011年11月、中教審初等中等教育分科会に高等学校教育部会が設置されたこと等に端を発する。

 2012年8月に取りまとめられた「課題の整理と検討の視点」では、高校教育の現状として、生徒の置かれた環境・学習形態や学習ニーズの多様化の実情、高校教育で共通に身につけさせるべき“コア”のあり方、質保証が不十分である現状等が整理された。

 高校・大学双方の教育改革と質保証の必要性が示される中、同2012年8月に文科大臣から諮問されたのが「大学入学者選抜の改善をはじめとする高等学校教育と大学教育の円滑な接続と連携の強化のための方策について」である。2013年10月には教育再生実行会議第四次提言「高等学校教育と大学教育との接続・大学入学者選抜の在り方について」、2014年12月には中教審答申「新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革について」(高大接続・入試改革答申)が公表となった。2015年1月には文科省「高大接続改革実行プラン」が発表され、以降大学入学共通テスト導入等、アクションプランに位置づけられる様々な施策が出されていく。こうした行政の動きに伴い、各大学でも高大接続を冠する施策や入試改革が多く展開していくこととなる。

高大接続のバリエーション

 前段の通り、高大接続は高校・大学の教育改革や質保証の必要性を起点として議論されてきた経緯がある。接続の対象は見直された双方の教育であり、入試はその評価という切り口だ。これらが一体的に改革される必要がある。高大接続事業の区分は観点によって様々な切り口が存在するが、リクルートキャリアガイダンス実施の「高大連携に関する大学アンケート」(2021年10月発行439号掲載)や、小誌でこれまで実施した取材の蓄積等の情報を俯瞰すると、概ね以下3パターンに分かれるようである。

  • 高校の学習内容に大学の視座でアドバイス・FBを行う
  • 大学の教育プログラムに高校・高校生を巻き込む
    -1:高校(高校生)と大学(大学生)が協働で課題解決・研究に挑む
    -2:高校生の学習意欲喚起に大学のアセットを使う
  • 高大接続型入試
    -1: 入試で高校までの学習活動を大学教育への接続観点から評価する
    -2: 大学教育に必要な学習等とともに入試を設計する

 上に挙げた①は主に高校側で設計されるものであるため、本号ではこのうち、② -2、③ -1 の例をそれぞれご紹介したい。


(文/鹿島 梓)


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