今更聞けない教育政策 新課程と入試
2022年度からスタートした高校の新学習指導要領(新課程)に関する基本的なポイントや考え方をまとめております。
今更周りに聞きづらい基本のおさらいにご活用下さい。
1)新課程とは何か:目的と概観
- 予測困難な社会で生きる力を身につけるための初等中等教育(10年に1回改訂)
- 前例なし・予測不可能な社会に対するレジリエンスと行動力・協働力の獲得
- 自己の在り方を考え、キャリア形成の方向性と関連づけて学ぶ”探究”
- 次代のスキルセットとなる能力の獲得(言語、デジタル、数的素養)
- 主体的・対話的・深い学びによるコンピテンシー習得
- 改訂目的 予測困難な時代に自ら課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、判断して行動できる「生きる力」を身につける
- 基軸:資質・能力の3つの柱 今回の改訂では、知・徳・体にわたる「生きる力」を生徒に育むために「何のために学ぶのか」という各教科等を学ぶ意義を共有しながら、授業の創意工夫や教科書等の教材の改善を引き出していくことができるようにするため、全ての教科等の目標や内容を以下3つの柱で整理し、一体的に育成する教育を志向した(総則第1章総説より抜粋・要約)
- 生きて働く「知識・技能」の習得
- 未知の状況にも対応できる「思考力・判断力・表現力」等の育成
- 学びを人生や社会に生かそうとする「学びに向かう力・人間性」等の涵養
- 何を学ぶか 言語能力の育成/外国語教育/プログラミング教育/理数教育の充実/道徳教育/伝統や文化に関する教育/主権者教育/消費者教育
- どのように学ぶか 主体的・対話的で深い学び
図 新しい学習指導要領で育む資質・能力
「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」「学びに向かう力・人間性など」の3つの柱
図 新しい学習指導要領の導入スケジュール
高等学校は2022年度からスタートしています
こうした思想、特に「3つの柱」を確実に身につけられるよう、教科・科目編成も変わっています。
続いては、教科・科目について、変更点を中心に整理しました。
2)教科・科目の整理
- 「歴史総合」は近現代の日本史・世界史を学ぶ科目、地歴は「探究」科目導入
- 数学B「ベクトル」、数学Ⅲ「平面上の曲線と複素数平面」を移行して数学Cを新設
- 18歳成人を踏まえ、主権者教育の一環で「公共」を新設
- 情報は科目再編により「情報Ⅰ」(プログラミングやネットワークの基礎)と応用科目の「情報Ⅱ」を設置
- 数学的な見方・理科的な見方を組み合わせた探究活動を行う「理数探究」新設
- 「総合的な学習の時間」が「総合的な探究の時間」に変更
学ぶ内容が変わることに伴い、新たな入学者選抜(入試)について検討されている高等教育機関が多いかと思います。
続いては、新課程の内容を反映した2025年度からの入試(新課程入試)の概観をまとめました。
入試については、①「共通テストの変更点」と②「個別大学の入試方法・範囲の変更点」の2点が注目されます。
2022年3月段階で①は既に公表されていますが、②は大きく遅れているのが実情です。
3)入試関連スケジュール(2025年度入試)
- 共通テストや個別入試でどの科目を使うのかが高校教育と進路指導に直接影響する
- 進まない情報公開(2年前告知ルール)
続いて、①「共通テストの変更点」です。
全体は6教科30科目から7教科21科目へと編制が変わっています。
4)大学入学共通テストの変更点(2025年度入試)
- 「情報」新設、「数学」で数学Cが追加され「数学Ⅱ、数学B、数学C」で1科目に、「地歴公」の科目区分変更(歴史総合と探究)
- 2022年度の高校2年生以上に対しては現行課程の教科・科目が経過措置科目として出題される予定
- 試験の時間割は2024年6月に公表予定
最後に、 ②「個別大学の入試方法・範囲の変更点」についてです。
進まない情報公表に先立ち、高校・高校生から見て「公表してほしい内容」について、配慮すべきポイントとして整理しました。
ご検討の参考にして頂ければ幸いです。
5)個別入試の変更点(2023年3月段階)
- 「情報」新設、「数学」で数学Cが追加され「数学Ⅱ、数学B、数学C」で1科目に、「地歴公」の科目区分変更(歴史総合と探究)
- ルール上は2022年度内の公表が努力義務(2年前広報ルール)
- 個別校の方針公表は全国で見ても進んでおらず、早急な情報提供が待たれる
- 新課程生である現高1の文理選択のタイミングまでに公表しないと、高校生から志望校として選ばれない
2年前広報において配慮するべき主なポイント
- 新課程影響
- 情報科目の取り扱い:入れるのか、入れる場合は必須なのか選択なのか
- 文系学部における数学Cの取り扱い:特に「ベクトル」
- 国語の出題範囲:必履修でない「論理国語」「文学国語」の出題有無
- 地歴公民の出題範囲
- 行政施策影響
- 記述式問題の取り扱い
- 英語四技能評価の取り扱い:入れる場合は外部資格検定試験を使うのか、独自の作問か
- 主体性等評価の取り扱い:入れる場合は評価方法(調査書か、志望理由書等の提出か、ほかの方法か)、評価基準を公表するか否か
- その他
- 新たな作問傾向に対応した模擬問題まで掲出できるか否か
カレッジマネジメント編集部 鹿島 梓(2023/3/24)
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