【高校生Interview】高校生発のSDGsの取り組み

 学校のプログラムに即して高校生がSDGsを学ぶだけでなく、高校生がSDGs関連の活動を自発的に始めたり、探究活動や課題研究のなかで高校生が自らSDGsをテーマに選んで活動したりすることも増えている。そうした高校生にとって、SDGsとはどのようなイメージなのか、お二人にお話を伺った。




高校生の研究の積み重ねがSDGs達成に貢献すると信じて

青森県立名久井農業高等学校3年生 中居泉穂さん

農業の課題はSDGsとも結びついていた

 私は青森県立名久井農業高等学校で、「環境研究班」のみんなと、SDGsを意識しながら塩害抑制技術を研究しました。

 「環境研究班」というのは、課題研究の授業のなかから生まれた班です。2年生から始まるこの授業では、班に分かれ、養液栽培、水耕装置等、色々な研究をするのですが、そのなかで「環境問題に農業の面から取り組みたい人達」で結成したのが環境研究班です。上の代から続く班で、そもそも私がこの活動に関わったのは、1年生の時に、環境研究班の先輩達のお手伝いをしたのがきっかけでした。手伝いの募集があって参加してみたら、困っている人のために農業の研究をする先輩達に関わるうちに「私も何か役に立ちたい」と思ったのです。私の塩害の研究は、先輩達がやってきた研究のうちの一つを引き継ぎ、発展させたものでもあります。

 研究に入るときに、先生からは「どうしてそうなったのか背景を知るといいよ」と教わりました。そこで塩害のことを調べていくと、自然にSDGsのことも学ぶことになりました。世界では、土壌内の水に溶けている塩類が、水分蒸発などで土壌表面に集積し、植物も作物も育たなくなる「塩害」が広がっています。それは砂漠化、飢餓、気候変動、まちづくり、働きがいなどにも関わる問題で、SDGsの17の目標と色々重なるからです。農業の一分野の研究でも、大きな目で捉えると、様々な問題が関係していることを知りました。

先輩から後輩へとバトンをつないで

 私達が開発した塩害抑制技術は、土壌に石灰を加えた礫層を埋設し、地下水に含まれる塩類が土壌表面まで上がるのを食い止め、さらに土壌の水分を利用して石灰からカルシウムを溶出させて除塩までするもの。実現するまでに半年以上、何度も失敗をくり返し、検証のために毎日データを取って、発表のためにプレゼンの練習も重ねて。大変でしたが、全力でやり切ったと思えたし、賞を取ってスウェーデンの国際大会にも出場できて、頑張りが報われたのがうれしかったです。

 高校卒業後は、研究を続けるのではなく、自分のなかにできた別の夢に向かうために、専門学校に進みます。ただし、先輩がそうだったように、研究を継ぐ後輩達のことは今後もサポートしたいです。環境研究班が大切していることは、「どこでも、誰でも、簡単に使えるような技術」を目指すこと。たどりつくには長い時間が必要ですが、諦めずに研究を続けて、最終的には実用化できるといいな、と願っているので、後輩達をしっかり支えていきたいと思っています。


画像 動画発表によるレタス栽培試験の説明やスウェーデンで行った研究発表の様子



(文/松井大助)





SDGsを学ぶだけで終わらせず達成に向けて動き出せるように

渋谷教育学園渋谷中学高等学校 高校1年生 前淵英翔さん

SDGsを学び合い、今後の仲間づくりを

 中高生が中心となって運営する国際大会、学びのオリンピック「SOLA」を通じて、SDGsに関わってきました。オンラインや対面で、会議・競技・プレゼン等の“種目”を行い、SDGsについて学び合う大会です。目的は、SDGsへの関心を高め、理念を共有する仲間と協働できる環境も整えること。SOLAはShibuya Olympiad in Liberal Artsの略で、「空」ともかけた言葉なんです。「SDGs達成の鍵であるLiberal Artsの祭典で、空のように世界をつなげよう」と。

 2021年に、当時高校生だった先輩達が始めた大会で、僕はその時、中学3年生でした。学校の外まで巻き込むのが面白そうで、自分も1種目を企画して参加したのです。開催した種目は、SDGsに関して何らかの「実践」までしている中学生で集まり、プレゼンし合うこと。学年のみんなに協力してもらって60校ぐらいに電話しまくり、全国から10校以上の中学生が参加してくれました。大会全体では20種目が行われ、17カ国から100校が参加し、参加者と運営側を合わせると、1000人近い規模のイベントになりました。

 SOLA2021がすごく楽しかったので、翌年のSOLA2022では運営の幹部となり、さらに今年開催するSOLA2023では、僕が実行委員長を務めます。一人でも多くの人に満足してもらえる大会にしたいですし、1000年後に振り返っても、素晴らしかったと言われるような内容にしたいです。

誰もが小さなことから実践できるはず

 SDGsに興味を持ったのは、中学2年生の時の授業がきっかけです。SDGsのことを調べるなかで、SDGs17番目の目標のパートナーシップは、国同士の壮大な話だけではなく、近所の子どもやスーパーの店員さんと自然や不平等に対して一緒にできることを考える、というのも当てはまるんだと知り、その身近な取り組みを広げていって「世界の平和につなげていく」という考え方が、面白いなと思いました。

 そこからSOLAの活動などで、SDGsのことを意識しながら学校の外の人とも関わっていくなかで、ものごとを自分の立場から見るだけでなく、相手の立場にもなって考える、ということが、前よりできるようになった気がします。

 将来は医者になりたいのですが、これまでの経験を生かしたことも、できればまた何かやりたいです。SDGsのことは、言葉は知っていても何をすればいいか分からない人が多いはずで、そこを一緒に考えるような。そうした場がないなら、自分でつくってしまえばいいのかな、とも思っています。


画像 SOLAポスター、中学生 SDGs Actions Not Wordsの様子


図表 SOLA2022 イベント種目


(文/松井大助)


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