大学にとってのSDGs/SDGsに関する高校生調査

SDGsに関する高校生調査

1.高校生のSDGsに対する興味・関心


図表1


 SDGsについては、2015年に国連で採択されて以降、今や世界中のあらゆる組織、そして老若男女を問わず多くの個人がその存在を認知し、関心を高めている。2018年に示された文部科学省「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン」においても、その答申内容の前提となる社会のありようとして、「国連が提唱する持続可能な開発のための目標(SDGs)は、『誰一人として取り残さない(leave no one behind)』という考え方の下、貧困に終止符を打ち、地球を保護し、全ての人が平和と豊かさを享受できる社会」と記載されている。そもそも、教育や研究を通じた、多様な問題解決への貢献の連続が、高等教育の歴史ではある。しかしながら、未曽有の危機が待ち構えている将来を見据え、改めて地球と人類のサステナビリティのために何を為すべきか、SDGsが生まれたことをきっかけとして捉え直している大学も多いのではないだろうか。実際に多くの大学が、SDGs達成に向けた取り組みをホームページ上で様々に発信している。

 一方、初等教育から始まった新学習指導要領の前文と総則には、学習者を「持続可能な社会の創り手となる生徒」と記し、持続可能な開発のための教育(ESD)を進めている。地球社会の現状を自分自身の関わりから「自分事」として捉え、そこから生まれる問いを他者との協働経験や内省を通じて探究していく過程で、SDGsに触れることも多いようだ。

 多くの教育機関が、そしてもちろん企業や自治体が、SDGsに対する主体者として動き出していることは間違いないであろう。日々の社会生活の中でも、各主体者が発信する情報とともに、カラフルなSDGsのロゴを目にしない日はないといっても過言ではない。しかしなかには、解決のための本質的な活動に繋がっていない等、取り組みの実態は一様ではないようだ。

 今回の特集では、SDGsの本質とは何かを改めて専門家に伺うとともに、その本質を踏まえて、独自のビジョンや取り組みへと確実に昇華している大学、高校、そして企業を取材した。

 今回、SDGsが目指す持続可能な社会の主役となる高校生達が、今SDGsに対してどのように捉えているのかについてのアンケートを実施した。まずはその結果のご紹介からスタートしたい。


図表2


 図表2は、高校生にSDGsに関する興味・関心の有無を尋ねた結果であるが、7割以上の高校生は「興味・関心がある」と回答している(「とても興味・関心がある(20.4%)」「まあまあ興味・関心がある(54.2%)」の合計)。属性別に見ると、大きな傾向の違いはないものの、学年別で低学年ほど「興味・関心がある」と回答した比率が高いこと、通学する高校の大短進学率において進学率70%以上のほうが「興味・関心がある」と回答した割合が高いことが分かった。

 下の図表3および4は、SDGsの17の目標のテーマと、「①関心があるもの」「②大学で学んでみたい分野やテーマと関連があると思うもの」「③取り組んでいる『探究の授業』や『探究活動』のテーマと関連があると思うもの(探究学習経験者のみ)」「④日常生活の中で、大切にしたり、注意して行動したりしているもの」との関連性について、それぞれ複数回答(MA)可で尋ねた結果をまとめたものである。

 まず全ての設問を通じて共通して言えることとして、17のテーマのなかで半数を超えるようなものはなく回答が分散していることだ。興味・関心ごとや、探究において学ぶ内容が比較的異なっていることがうかがえる。

 次に、各問に対する平均の割合をみると、「①関心のあるもの」は22.4%であるが、「②大学で学んでみたい分野やテーマと関連があると思うもの」は12.8%、「③取り組んでいる『探究の授業』や『探究活動』のテーマと関連があると思うもの」12.4%、「④日常生活の中で、大切にしたり、注意して行動したりしているもの」11.2%という結果となっている。関心はあるが、学びや生活行動との関連付けまでには至っていないようだ。

 さらにSDGs目標の内容別に見ると、目標10「人や国の不平等をなくそう」については、①〜④の設問のうち、②を除く3つの設問項目において上位5位以内に入っているテーマである。興味・関心があったり、探究活動のテーマとも近しいと感じながらも、「大学で学んでみたいこと」としての関係性は高くはないと捉えている傾向が見られる。SDGs目標の1「貧困をなくそう」についても関心は高いが、学びや日常行動に対しての設問では高くはなく、乖離があった。

 「②大学で学んでみたい分野・テーマ」としての上位5位は、「すべての人に健康と福祉を(21.1%)」「質の高い教育をみんなに(19.2%)」「ジェンダー平等を実現しよう(17.6%)」「住み続けられるまちづくりを(16.1%)」「平和と公正をすべての人に(14.2%)」という結果となっている。

2.SDGsの17の目標と高校生の関心・学びとの関係


図表3


図表4


図表5


図表6


 図表5・6 は、「『SDGsに取り組んでいる大学かどうか』は進学先を選ぶ際の参考になるか」を尋ねたものである。結果としては、「参考になる」「参考にならない」がほぼ半数ずつに分かれる結果となった。属性別で見ると、最も差が表れたのが「大短進学率」で、「参考になる」と回答した高校生の割合が、進学率70% 以上では52.4%、進学率70% 未満では43.8%と、8.6ポイントの差があり、進学校のほうが、大学のSDGs に対する取り組みを進路選びの観点としている可能性が見えた。なおかつ進学率70% 未満の高校生の場合には、2割以上は「全く参考にならない」と回答しており、進学校との乖離が見られた。

 なお、学年別で進路検討が具体化する高校3年段階において他学年よりも「参考になる」が若干ではあるが高くなっている。

 前述の通り、高校生の7 割以上がSDGs に関する「興味・関心はある」と回答している。またそのテーマについても、個々人がそれぞれに選択している様子が見てとれた。SDGsの社会課題への興味・関心が、仮に漠然としたものであっても、将来の進路とうまく関連付けられる一つの機会になるならば、単なる知名度や偏差値だけに依存した選択よりも意味のあるものになるのではないだろうか。


図表7




(文/金剛寺 千鶴子)


【印刷用記事】
大学にとってのSDGs/SDGsに関する高校生調査