SDGsを体系的に学ぶ副専攻「SDGs」を2023年度より開始。 価値創造を実践する人材を育成する/創価大学
2009年度より運用している副専攻制度に、2023年度、新たに「SDGs」を加えた創価大学(以下、創価)。共通科目ならびに文理8学部のSDGsと結びつきが強い指定科目の中から24単位以上を取得し、かつ、卒業時に通算GPAが2.70以上であった場合に副専攻として認定し、成績証明書と卒業証明書に「副専攻:SDGs」と記載するという制度だ。その導入背景や具体的な導入プロセスについて、西浦昭雄副学長に伺った。
人材育成方針と合致するSDGsの方向性
副専攻「SDGs」の導入の背景には、SDGsの実現に向けた取り組みを推進する全学的な動きと、従来からの副専攻制度に学部横断型のプログラムを拡充していく動きがあったという。
まず前者について、創価は2019年にSDGs推進センターを開設し、2020年度からはSDGsレポートを毎年発刊、そして、2021年の創立50周年を迎えるにあたり策定された中長期計画「Soka University Grand Design2021-2030」(以下、グランドデザイン)において4つの重点テーマの1つにSDGsを掲げる等、早くからSDGsの実現に向けた取り組みを進めてきた。グランドデザインに基づき、2022年度からは全科目のシラバスにおいて「SDGsとの関連性」の項目を設け、2023年度からは看護学部を除いた7学部でSDGsを意識した新カリキュラムを開始している。
副専攻「SDGs」は、この全学を挙げたSDGs実現に向けた取り組みに、副専攻制度における学部横断型プログラム拡充の動きが重なり生まれたという。2009年度の制度開始時には、他学部の所定の専門科目を24単位以上修得することで、その学部での学びを副専攻として認定するものだったところから、2018年度には全授業を英語で実施するプログラムEnglish Medium Program(EMP)の所定科目を24単位以上修得した場合に副専攻と認定する認定するEMP副専攻を、2019年度にはデータサイエンス副専攻を開始する等、学部横断型のプログラムを拡充させていた。そして今回、SDGs推進の動きから、新たな学部横断型プログラムとして副専攻「SDGs」が導入された。
この一連の動きについて西浦副学長は、「本学が掲げる人材育成方針『価値創造を実践する“世界市民”の育成』とSDGsのフィット感が非常に高かった」と説明する。「SDGsの実現を目指していくことは、本学の特徴を明確にし、価値を社会に還元するという方向性を強化することにもつながるのです」。
関係部局との丁寧なコミュニケーションで全学的なコンセンサスを形成
副専攻「SDGs」の導入に当たって最も難しかったポイントは、指定科目の選定だったという。共通科目や各学部の専門科目から選定することとしたが、2022年度から全学部・全科目のシラバスにSDGsとの関連を明記した段階で、7割の科目が17のゴールのいずれかと関連することが分かっていた。その膨大な科目の中から、① SDGsと結びついていること、② 17のゴールをある程度網羅できるラインアップになること、③他学部生が履修しても内容理解や順序性に問題がないことの3点を考慮し、慎重に議論を重ねて選定を行った。具体的には、「まずは全学教務委員会で各学部からの提供単位数を議論して16単位と決め、指定科目の原案を作り、大学教育研究評議会や各学部の教授会にかけて意見を聞き、また全学教務委員会で検討・修正してと、丁寧に全学でコンセンサスをとり、まとめていきました」と西浦副学長は振り返る。
各学部の専門科目を、16単位を上限として選定したこともポイントの1つで、「所属学部の科目を履修していたらいつの間にか副専攻分の24単位が取れていたとするのではなく、最低8単位は共通科目や他学部の専門科目を履修することで、『幅広い学びを保証する』という副専攻制度の趣旨の実現と、学生が自身の関心を見つめる機会となるようにしました」と西浦副学長は述べる。加えて、英語で実施されている科目も指定科目に含めることで、EMPに属する学生等が英語で副専攻を修めることができるよう配慮した。
学生のSDGsへの関心の高さも後押しに
副専攻の申請は2年次以降から可能だが、対象となる2023年度入学生には、履修科目の選択がSDGs副専攻にもつながっていくことを認知してもらうべく、1年次から周知していく。「かなりの学生が希望するのではないか」と西浦副学長は期待を寄せる。その期待の背景には、学生達のSDGsへの関心の高さがあるという。「私が担当するアフリカ経済論等の科目の受講状況を見ても、貧困問題に関心のある学生はSDGsが注目される前から多かったし、2022年11月に本学の学生を対象に実施したSDGsアンケートでは、約98%の学生がSDGsを認知していて、約7割の学生が個人または団体でSDGsの取り組みをしていると回答している。SDGsへの関心が高い学生が比較的多いという肌感覚はSDGs副専攻化の後押しになったし、学生達が授業外での実践だけでなく、授業内でもSDGsを学ぶことで、学びが深まることを期待したい」と西浦副学長は話す。
副専攻制度のさらなる拡充や新たな教育プログラム等については、検討を進めているという。「少子化の影響で入学志願者が減少する一方で、社会から求められるものは増大している現実に対して、大学も次代に向けた新しい取り組みがより一層必要になってくるのではないか」と西浦副学長は述べる。「価値創造を実践する『世界市民』の育成」に向けた取り組みに今後も注目したい。
(文/浅田夕香)
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