編集部リポート/高校生は自分らしい進路を実現できているか

進路検討行動の早期化・長期化と安定志向に対応する総合型選抜

年内入試の実態はどうなっているのか。ここでは、3つの観点と調査からその実態に迫りたい。

カレッジマネジメント編集部 鹿島 梓


タイトル ①高校生の進路検討行動の実態は?



図表1~図表3


進路検討行動は全体的に早期化。コロナ禍で検討行動は停滞気味

 まず、高校3年生が大学に興味関心を持ち、資料請求を経て出願するという行動を見ると(図表1)、2022年は資料請求校数が過去に比べて多いが、出願に至る校数は減少していることが分かる。一方でコロナ禍に進路選択を行った世代特有の事象として、OC参加経験は過去に比べて減少し、参加校数の平均も2019年より1校減少して約3校となった(図表2・3)。こうしたデータからは、OCに参加しづらい状況の中で請求した資料を中心に出願校を最小限に絞り込んでいる様子が窺える。

 また、図表4の進路検討行動の時期を見ると、2013年以降の変化として、「どんな学校があるかを調べ始めた時期」を筆頭に、概ね全ての行動が高校1年生から始まっており、早期化の様子が著しい。高校に入ってすぐに大学のことを考え始めるわけだ。一方で「第1志望の学校を受験校に決めた時期」は他の行動に比べると大きな変化はなく、概ね高校3年生の春~秋に集中する。つまり最終的な選択時期は変化がないが、早期化により長期化が起こっているというのが全体的な概観である。


図表4


年内入試合格で進学する高校生が増加した影響も、第1志望率が上昇

 次に、年内入試を受験する生徒は増えているのかを見ていきたい。図表5で「進学する学校に合格した入試方法」を問うと、2019年に比べて2022年はいわゆる「年明け入試」である一般選抜(49.7%→41.3%)・共通テスト利用入試(7.2%→5.8%)が減少し、「年内入試」である総合型選抜(8.8%→12.7%)、学校推薦型選抜(30.2%→34.2%)が増加している。大短進学率別で見てもその傾向は変わらず、全体的に年内シフトが進んでいると言えそうだ。

 図表6では進学する大学の志望順位を問うた。第1志望率は前回から約15pt増加し、68.3%と高い。大短進学率別で見ると、進学率70%未満では78.2%と、約8割もの生徒が「第1志望に進学した」と答えている。ここでは掲載しないが入試方法別では「総合型・学校推薦型選抜・計」の第1志望が87%と非常に高く、こうした入試形態に合格して入学している学生が増えていることが、こうした状況に寄与しているものと推察される。


図表5~図表6



タイトル ②高校現場の動向は?


探究は生徒を成長させる実感が高いが、教員の負荷が課題

 高校では2022 年度より新学習指導要領がスタートした。その要となる「総合的な探究の時間」の導入校に、取り組みによる生徒の変化を尋ねた(図表7)。変化(向上)を感じている割合は【主体性・多様性・協働性】【思考力・判断力・表現力】【学びに向かう姿勢・意欲】で高い。一方で【知識及び技能】では評価が分かれる結果となっている。

 「総合的な探究の時間」に取り組むに当たっての課題(図表8)では1位「教員の負担の大きさ」が圧倒的に高く、2位以下も教員に関する課題が続く。フリーコメントでは、生徒・教員ともに「価値のある学習方法」として積極的に推進しようとする群と、「国が決めたやらねばならぬこと」として受動的に受け取る群とで二極化している。予測不可能な社会で活躍できる資質・能力を培う目的で導入された探究だが、その現場推進が各教員に任されており、各校における探究の意義や価値といった共通認識が必ずしも議論されない中、従来の教科学習とは異なる指導に四苦八苦している様子が垣間見える。


図表7~図表8



タイトル ③総合型選抜は本当に多面的・総合的評価になっているか?


学力検査以外の評価状況を見ると、総合型選抜が多様な要素を利活用

 では年内入試自体、特に総合型選抜はどのような選抜になっているのか。文科省調査より、学力検査以外に考慮する資料等の利用率について、図表9~12に詳細を示した。これによると、一般選抜は「学力検査以外の要素」で取り入れているのが調査書58.3%以外に特筆すべき点が見られず、基本的に知識・技能を問う入試である点が明確である。学校推薦型選抜では「推薦書等」88.4%、「調査書」86.2%、「評定平均」81.3%といった高校発の書類や経験を中心に、「面接」72.1%で掘り下げる入試であると言えそうだ。総合型選抜は、「調査書」88.4%、「評定平均」72.3%、「面接」87.2%が高い点は学校推薦型に似ているが、それに加えて「大学入学希望理由書・学修計画書等」が76.9%と高く、「レポート」「小論文」「プレゼンテーション」等も他方式に比べると高いことから、多面的・総合的に人材を評価し、大学教育につなげる役割を担っていると言えそうだ。


図表9~図表12


【印刷用記事】
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