編集部リポート/日本における留学生在籍の現状

本稿では、日本における留学生の現状について日本学生支援機構(JASSO)の各種データを引用して俯瞰したい。
※データは全て調査概要欄に示すJASSO 該当調査より引用・一部編集部にて加工

カレッジマネジメント編集部 鹿島 梓


タイトル 【1】高等教育における留学生受け入れの現状


調査概要 外国人留学生在籍状況調査(2019 ~ 2022)


2022年の留学生総数約23万人は2016年と同水準

 まず、図表1で数量的なデータの確認をしておきたい。

 2022年5月1日現在の留学生総数は231,146人(国費・政府派遣・私費留学生の合計)であり、2021年同日と比較すると、11,298人(4.7%)の減少である。うち、高等教育機関に在籍する外国人留学生数は181,741人(20,136人(10.0%)減)、日本語教育機関に在籍する外国人留学生数は49,405人(8,838人(21.8%)増)となっている。

 近年で留学生数が最多だったのは2019年の312,214人。2008年にグローバル戦略展開の一環で策定され、2020年までに留学生受け入れ30万人を目指すとした「留学生30万人計画」を、1年前に達成した数値である。この時、学部・短大・高専の在籍者数も最多の92,952人となったが、翌年以降コロナを機に約1万8000人減少した。大学院はコロナ禍においてもあまり減少しなかった(2019年53,089人→2020年53,056人→2022年53,122人)一方で、学部・短大・高専は大きく減少しており(2019年92,952人→2022年74,390人)、専修学校(専門課程)も同様の傾向が見られる(2019年78,844人→2022年51,955人)。2022年時点の留学生数は、2016年頃の水準に戻っている状態だ。


図表1 大学院・大学(学部)・短期大学・高等専門学校・専修学校(専門課程)・準備教育課程・日本語教育機関における留学生の推移


全体の9割以上はアジアからの留学生準

 次に、日本で学ぶ留学生の出身地を確認しよう。図表2で地域別に見ると、全体の9割以上がアジアからの留学生であり、欧米他地域からの留学生数は極めて少ない。特に国際社会において重要性が年々上昇し、ますますの経済成長が期待されるだけでなく高等教育進学者数も急増しているアフリカの占める割合は、あまりにも低い。国連によると、アフリカは現在の人口が約14億人(世界全体の約18%)だが、2050年には24億人を超えると言われている。平均年齢も現在の日本が約49歳なのに対し、アフリカは約19歳と非常に若く、高等教育ニーズが高い。距離が遠く関係性においても旧宗主国等とは並び立てない日本だが、今後留学生マーケットとしての存在感は増すばかりであろう。

 図表3の出身国別留学生数の上位10位を見ると、近年は4割前後が中国からの留学生であると分かる。2019年以降の上位5位は中国、ベトナム、ネパール、韓国、インドネシアまたは台湾と顔ぶれが変わっていない。ただし、こうした国々に対する日本の大学の優位性が必ずしも高いわけではないだろう。Times Higher Education等の国際ランキングでは、日本でランキングトップの東京大学よりも上位に、清華大学や北京大学(共に中国)、シンガポール国立大学や南洋理工大学(共にシンガポール)、香港大学(香港)等が並ぶ。現在日本で学んでいる留学生が何を求めて来日したのか、何が決め手で本学を選んだのかといった点を押さえたうえで、相対的に劣位になりつつある現状において、グローバルに見た時の競合設定やベンチマークを精査し、選ばれるためには何を重視すべきかを考える必要があろう。


図表2 出身地域別留学生数の推移(2019-2022)、図表3 出身国別留学生数の上位10 位推移(2019-2022)


23万人のうち11万人は関東、うち8万人は東京都に所在

 では、日本を選ぶ留学生はどこに来ているのだろうか。

 まず図表4で地方別・都道府県別留学者数を確認したい。2022年の留学生総数231,146人のうち、およそ半数に当たる110,524人(47.8%)が関東、うち78,957人が東京に集まる。1万人を超える都道府県は東京都、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県、福岡県の6都府県で、東京以外は西日本に集中している。留学生が少ない県は、当然留学生の受け皿となる高等教育機関が少ないと考えられる。なかには、留学生自体は歓迎するものの、留学生のニーズに合った学部学科等がない、英語で履修できるプログラムがない、学生寮や奨学金をはじめとする生活面での支援が未整備といったソフト面・ハード面の問題があるかもしれない。

 図表5では具体的に留学生を集めている大学の上位10位を経年で並べた。研究大学である旧帝大に加え、早稲田大学、立命館大学、日本経済大学といった私立大学も名を連ねている。例年のランキングでも大きな変動はない。

 図表6では留学生が在籍する分野を経年で並べた。母数は年によって異なるが、概ねそれぞれ全体の3割前後を占めるのが人文科学と社会科学で、理学・工学・農学といった成長分野関連は2割程度というのが現状である。国が推進する成長分野注力の動きは、全体の数からは見えてこず、個々の大学の研究力や教育力に期待する一定の層はいても、日本という国自体がそうした分野において選ばれていない可能性が高い。


図表4 地方別・都道府県別留学生数(2022)

図表5 留学生受け入れ数の多い大学の上位10位推移(2019-2022)、図表6 専攻分野別留学生数(2019-2022)



タイトル 【2】留学生はなぜ日本を選ぶのか


調査概要 2021(令和3)年度 私費外国人留学生生活実態調査


 第2章では、留学生の「留学の目的」「日本を留学先として選んだ理由」等についてデータを見ていきたい。特に指定がない図表は「2021(令和3)年度 私費外国人留学生生活実態調査」による。


図表7 留学の目的(MA)、図表8 日本を留学先として選んだ理由(MA)、図表9 留学するに当たり不安に感じていたこと(MA)


「学ぶ」の先に「働く」を見据えた留学意向

 まずは何が目的で日本まで留学してきたのか(図表7)。1位は就職・就労 3,533人(48.3%)、2位は学位取得 3,439人(47.0%)、3位は就職に必要な技能・知識の習得 2,713人(37.1%)。1位・3位を見るに、学ぶこと自体が目的というより、学んだ先に働くことを見据えて来ている人が多いようだ。図表4で東京都の留学生数を確認したが、大学数の多さのみならず、こうした「働く」を見据えた時に、外資系企業や外国人労働者求人数等の就職機会が多い東京に多く来ているという面もありそうだ。

社会や文化への興味から留学先に日本を選ぶ

 日本を選んだ理由については(図表8)、1位 日本社会に興味があり、日本で生活したかった 4,695人(64.1%)、2位 日本語・日本文化を勉強したかった 3,123人(42.7%)、3位 日本の大学等の教育や研究が魅力的と思った 2,763人(37.7%)となっている。日本社会や文化に興味を持つことを入口に、日本で学びたい、もしくは日本で生活すること自体が目的となっている人が多いようだ。

留学前は周囲との関係性を不安視

 留学するに当たり不安に感じていたことでは(図表9)、1位 周囲の人と良好な関係を築き、うまくコミュニケーションをとることができるか 3,573人(48.8%)、2位 自分の希望する学習ができるか、また、学習の成果を上げることができるか 3,563人(48.7%)、3位 経済的な困難に直面しないか 3,095人(42.3%)となった。人間関係や教育・生活への不安が上位となり、未知の世界に飛び込もうとする留学生の等身大の悩みが見て取れる。留学先の高等教育機関はこうした悩みに誠実に向き合う必要があり、後ページにご紹介する「現在留学生を多く集めている学校」事例校は、どこもこうした支援体制が細やかで充実している印象だ。

留学情報はまず身の回りの人に相談

 留学情報の入手方法では(図表10)、1位 親戚や友人に相談 3,076人(42.0%)、2位 母国の学校や教員に相談 2,612人(35.7%)、3位 インターネットを利用して学校や日本学生支援機構(JASSO)のHPを検索 2,282人(31.2%)となる。まず家族や学校等の身の回りの人に相談するという人が多いようだが、図表11に示すリクルート進学センサスによると、高校生において進学情報入手は「進学情報誌やDM」「オープンキャンパス」「学校のパンフレット」といった資料等の情報がトップ3であり、その次に「(高校の)先生からのアドバイス」が高い。情報が多く出回っている国内進学の市場においては一次情報の取得が容易だが、多言語最適化された情報が多いわけではない・あるいは自分にとって他国の最適な学校を選ぶ軸足を定めづらい留学生にとっては、まず自分に近いところから相談を始めていく傾向があるのだろう。


図表10 留学情報の入手方法(MA)、図表11 高校生の進学に関する情報源(MA)


留学した結果良かったことは日本語と国際的な思考の習得

 留学した結果、良かったことは何だったのか(図表12-1、12-2)。留学した印象が「良かった」と答えた6,988人について、何が良かったのかを問うと、1位 日本語が習得できたこと 4,540人(65.0%)、2位 国際的な考え方・教養を身につけることができたこと 4,226人(60.5%)、3位 質の高い教育を受けられたこと 3,664人(52.4%)となっている。留学目的で就職・就労に関する期待が高かったことに比べると、実際に「良かったこと」は教育そのものから享受されるメリットが並んでいる。これは在籍中の学生対象のアンケートであることも大きいだろう。

卒業したら日本で働きたい人が過半数

 卒業後の進路希望を問うた項目では(図表13)、1位 日本において就職希望 4,243人(58.0%)、2位 日本において進学希望 3,135人(42.8%)が、帰国して進学あるいは就職・起業を希望する人よりもはるかに高い値となっている。準備機関や日本語教育機関は進学が多いのが前提となるが、大学や大学院を卒業した後も日本に定着したい層が相当数いる。各教育機関にはこうした多彩なキャリアパスに対応したキャリア支援が求められる。地元企業で外国人労働者に門戸を開いている企業はどのくらいあるだろうか。在学中にコミュニケーションを深めるフィールドワーク等の機会はあっただろうか。そうした企業が前向きに採用を検討するための学修成果の可視化はどうなっているだろうか。個々の大学の取り組みのみならず、日本全体として、定着も含めた留学生関連の取り組み充実が期待される。


図表12-1 日本へ留学しての全体的な印象(SA)、図表12-2 留学して良かったこと(MA)、図表13 卒業後の進路希望(MA)




【印刷用記事】
【編集部リポート】日本における留学生在籍の現状