国際的に活躍する卒業生と教育の海外展開が叶える ファッション教育のグローバリゼーション/文化服装学院

文化服装学院 事務局学生・広報部 渡井邦重 氏

 日本のファッション教育の先駆者として業界をリードしてきた文化服装学院。2023年に創立100年を迎え、現在もファッション業界のプロを目指す3500名が学ぶ。その人気は国内にとどまらず、東アジアを中心に世界中から約600名の留学生が集う(2023年度)。世界のBUNKAとして多くの留学生に選ばれる理由とは何なのか。事務局学生・広報部の渡井邦重氏に伺った。

世界のファッション界で活躍する卒業生

 最も大きな理由は、「卒業生がグローバルに活躍していること」だと渡井氏は話す。コシノヒロコ、コシノジュンコ、高田賢三、山本耀司、NIGO等、世界を席巻するデザイナーを多く輩出してきた。これまでの卒業生は30万人以上にのぼり、今なおファッション業界を牽引し続けている。

 「海外で活躍する卒業生達の母校がBUNKAだったことをきっかけに本校について調べる中で、日本で最初のファッション専門学校であり、100年の歴史を持つ伝統校であること、その実績ゆえ豊かな業界とのネットワークを持つことを知り、それらが魅力と映ることが多いようです。また、卒業した後もSNS等を通じて国内外で卒業生のコミュニティーが形成され、仕事のチャンスが広がることも。在学中だけでなく、卒業後も世界で生きる人的ネットワークは資産だと思います」。

 名だたる卒業生を輩出してきた当校だが、意外にも入学者の9割が服作りの初心者だという。「0からのスタートでも、卒業時には業界で通用する技術が身につくことも、学生から高い支持を得ている点です。技術、知識を深いレベルで身につけられる独自のカリキュラム、地上20階・地下1階建ての広大な校舎には、技術を磨く専門施設が充実しています。さらに多彩な講師による授業では、基礎から業界の最先端まで学べるといった教育環境はBUNKAならではです」。世界のファッションスクールランキングで、英国のセントラル・セント・マーチンズをはじめとする海外の名門校に比肩する高い評価を得ているのが、その証左になろう。

 クラス担任制をとっているのも、初心者を一人前に育てる重要な仕掛けだ。「一人ひとりに向き合い、基礎からじっくり教えます。教育面だけでなく、他国で生活すること自体に不安が大きい留学生の生活面もサポートし、学業に集中できるよう卒業まで伴走しています」。

BUNKA式カリキュラムを世界で展開国

 留学生を惹きつける学校の魅力は先述の通りだが、学園としても留学生受入れには積極的だ。一番多い時で、留学生の在校生に占める割合は25%に達していたという。

 留学生獲得の仕組みの一つが、中国の提携校経由による編入だ。「中国の提携校2校で、『BUNKA式』と呼ばれる、独自の平面作図方法と製図理論をベースに服作りの技術を教えています。基礎を現地で学んだ後、応用は日本で学ぶために編入する学生を毎年迎えています。学生の国際交流の黎明期だった約20年前から始めた取り組みで、BUNKA式を海外で展開するために教員を育成して派遣してきました」。

 学生が日本で学ぶ際、大きな障壁となる日本語の問題をクリアする術を持っているのも強みだ。「同法人の文化外国語専門学校経由で入学する留学生が、毎年50名前後います。専門学校生は、在留資格を得るために日本語能力検定2級以上の取得が必要。まずは日本語学校で学んだ後に、専門性を高めたいと進学する留学生が圧倒的に多いため、同法人、しかも同キャンパス内に日本語学校を持っているアドバンテージは大きいでしょう」と渡井氏は説明する。

 留学生は中国からが圧倒的に多く、次いで韓国、台湾と東アジアが9割を占める。中には、アニメをきっかけに日本文化に興味をもった欧米からの留学生もいるという。中長期的にはターゲットエリアを東南アジアへと拡大することも見据えているが、足元では現地事務所のある韓国、台湾に注力し、新型コロナウイルスの影響で18%まで低下した留学生のシェアをコロナ前の水準の20%以上に戻すことを目指す。「外国の方が日本の大学や専門学校にいきなり出願するのはハードルが高い。まずは短期留学プログラム等をきっかけにBUNKAを知ってもらい、入学者を増やしていきたい」と渡井氏は述べる。


留学生の声


留学生の声


国際色豊かな多様な場が教育の質を高める

 留学生の獲得に力を入れる背景には、文化学園が掲げる教育の3つの柱、①クリエイション②イノベーション③グローバリゼーションがある。

 留学生の存在は特に③グローバリゼーションに果たす役割が大きいと渡井氏は語る。「ファッションは国内に閉じず、世界に向けて発信していくべきもの。国籍の多様な学生が集うことで、国際的なファッション感覚が養われるだけでなく、ダイバーシティ&インクルージョンとは何かを学生達は身をもって学んでいます。授業では多くの課題で協働するため、考え方の違いから喧嘩になることも。しかしそれをきっかけに、異なる価値観を受容し、互いの感性を刺激し合いながら、良い物を作り出す経験を積み重ねていきます」。

 和装が主流だった大正時代に、到来する洋装需要を見越して、新たな衣生活の価値創造をリードするグローバル人材を100年にわたって輩出してきた当校。「これからも本校が育成したいのは、世界に通用するクリエイター。留学生を含めた3500名もの個性あふれる学生が『ファッションが好き』を共通言語に一堂に会し、同じ目的に向かって切磋琢磨することで、クリエイションが磨かれ、ひいてはイノベーションが生まれます。留学生をはじめとする多様な人々が集まって、化学反応が起こる場を作ることで、教育の高度化と質の向上をはかっていきたい」。渡井氏の言葉は力強い。





(文/武田尚子)




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