【TOP INTERVIEW】学習意欲がある全ての世代に学びの機会を提供する 「総合教育機関」へ/学校法人大原学園 理事長 中本毎彦


学校法人大原学園 理事長 中本毎彦


専門教育と社会人教育の両輪で学生を支える

 大原学園グループは、東京都千代田区に所在し、幼稚園・高等学校・専門学校・会計専門職大学院、日本語学校等を展開しています。1979年の学校法人設立以来、グループ校総数は全国に115校、専門学校の入学者数は1万人超の日本最大級となります。さらに、2025年4月には新設大学の開学を目指し、現在設置認可申請中です。

 本学園の教育の特徴は、主に専門学校において、将来社会人として立派に活躍できるように、専門的な科目に加えて社会人に必要な基礎力を身につける教育を行ってきたという点です。当初は、簿記学校に通われる方は税理士・公認会計士試験を目指す社会人が中心だったのですが、専修学校制度ができたことで高校新卒者が増え、会計教育だけでは社会で通用するのは難しいということで、両方を併せて教えるようになったのが歴史です。

オンライン化を軸に新たな総合教育機関を目指す

 このように大原と聞くと税理士や会計士の業界で知らない方はいないと思いますが、“簿記の大原”のイメージがあまりに強すぎて、それ以上の学校へと展開していくためには、そのイメージからの脱却は避けられないと感じています。私は2023年4月に理事長に就任しましたが、人口減少やSociety 5.0時代へと社会環境が変化するなかで、これまでのやり方に固執していたら、変革の大きな波に乗り遅れてしまうと感じています。

 そこで新たな大原学園グループの姿として、幼稚園、高等学校、専門学校、大学、大学院、社会人向けの生涯学習講座を持つという本学園のプレゼンスをもって、学ぶ意欲のある幅広い層に学習機会を提供する「総合教育機関」となることを目指しています。教育方針もブラッシュアップし、「将来の社会発展、平和のために、学習意欲がある全ての世代の方にいつでも、どこでも、誰もが学べる機会を提供し、将来の社会の発展、平和に寄与できる人材の育成」を掲げました。

 そしてそのための具体的な施策として、①生涯学習講座の充実化、②大学の新設、③高等学校教育の充実・拡大を図っていきます。①から③の全てに共通するキーワードはオンライン化です。

 まず生涯学習講座ですが、これまでは難関資格を取得するための講座が多かったので通学型が主流でしたが、可能な限り授業のオンライン化を進めています。その次のテーマは3Dだと思うので、今後は2Dから3D環境への移行も視野に入れています。一方、世の中はデータサイエンスやAIの学習が必須となるため、これまで専門学校で培ってきたITやデータサイエンス系のノウハウを生かし、生涯学習講座としても講座を新たに追加し、リスキリングのニーズに応えていこうとしています。

社会人対象のオンライン大学設置構想

 大学については、新設大学として東京経営大学(仮称)の2025年開学を目指し、現在設置認可申請中です。こちらも通信教育課程のみの完全オンライン大学で、経営学部の1学部、収容定員1700名としています。

 主な対象は社会人とし、全国の会社で経営に近い仕事をしながらも、経営を学問として専門に学んだことのない方としています。私どものリサーチでは、「勉強は非常にしたいものの、経営の通信教育課程を設置している教育機関は都市部に集中してしまっているので、スクーリングに行けない」と考える地方在住の方が多くいらっしゃるそうです。そこで社会人の方が既に持つ実践力を理論(学問)と繋げることで経営力を高めようという考えです。

 また今回の大学開学は、いつでも、どこでも、誰でも、学ぶ意欲がある方には門戸を開く教育機関として、オンラインを活用して地元を離れずに学べる機会を提供しようという使命感でもあります。これからリスキリング教育を受けたいという方や、海外に住む外国人で自国にいながら日本の大学を卒業したいという方のニーズにも応えることができます。

校名変更による高校ブランド発信と充実・拡大

 高等学校については、2024年4月に大原学園高等学校から大原学園美空高等学校へ校名変更しました。その理由は、「大原」は法人名で高等学校としてのブランドがなかったことと、知らない方からすると簿記を学ぶための高校に聞こえるのではないかと私には思えたからです。

 通学スタイルは、「週5日コース」と「週1日コース」に加え、2024年度から「週3日コース」と「オンラインコース」を新設し、多様な選択肢から選んで学べるようにしました。

 オンラインや通信制であっても、本学園の教育の特徴である一般教養科目と社会人の基礎教育を併せて、しっかりと指導していくという点が独自の強みであるため、退学率が低く、そこに私達の教育のプレゼンスがあるのではないかと思っています。ここで教育実績を出し、卒業生や保護者の方々に満足して頂くことで、ひいては関東1都6県で校舎を増やし、高校教育の充実化と規模の拡大を進める足がかりにしていきたいと考えています。

これからの社会の発展のために

 少子高齢化、人口減少社会の中において、国力を高め社会を豊かにしていくためには教育が極めて重要であり、若者達に対しては基礎を固める重要性と、権利と義務のバランスを身につけて欲しいと思います。そのためには見本が必要で、若者が夢を持てる社会となるよう、大人が見本となり、若者と同じように、大人自身も学び続けていく必要があると考えています。社会人の方々の学び直す力と学び続ける力は、変化著しいデジタル社会の中では必要不可欠であり、将来の豊かな社会と学ばれる方々の豊かな人生にとって大変重要なことだと思います。

 大原学園グループはこれからも教育を通して社会の発展のために貢献できるよう尽力して参ります。

(文/能地泰代 撮影/平山 諭)


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