データで見る 高校生の今[5]大学で何を学ぶか? 経年比較で見える学問分野選びの傾向


【図1】 教育活動へのICT活用状況(全体/単一回答)、【図2】 ICT活用への取組による生徒の変化(「ICT活用」実施校/各単一回答)


「工学」「芸術」等、学問分野選びで縮まる男女差

 第5回「データで見る高校生の今」では、『令和5年度学校基本調査』の結果から、関係学科別の志願状況の推移を紹介する。

 2023年12月に文部科学省から公表された『令和5年度学校基本調査』を参考に、2015年度から最新の2023年度までの私立大学の学科別の志願者数の推移をまとめたものが図1である。

 内訳をみると年度を問わず「社会科学」「人文科学」「工学」分野の人気が高いことが分かるが、経年での増加率はどのように変化しているだろうか。2015年度と比較して最も伸びているのは「芸術」(2015年度48,002人→ 2023年度70,444人)で46.8%増加しており、全体の中の構成比としては小さいものの、今まさに注目を集めている分野と言えるだろう。次いで「工学」(28.3%増)、「社会科学」(14.3%増)と続く。一方、減少率が高いものは「家政」(35.7%減)、「教育」(23.3%減)となった。

 では、男女で比較するとどうなるだろうか※2。いずれも15%以上の増加率で高いものから紹介すると、男子は「芸術」(60.1%増)、「工学」(25.7%増)となり、特に「芸術」の増加率は女子の1.5 倍となった。一方女子は「工学」(43.8%増)、「芸術」(39.9%増)、「社会科学」(20.5%増)、「理学」(16.2%増)となり、特に「工学」は男子の1.7倍、「理学」は1.58 倍と、理系を志望する女子の割合が高まっていることが分かる。反対に、男女で逆の傾向を見せているのは「人文科学」で、男子11.4%増に対し、女子5%減となっている。

 学問分野のトレンドや経年推移は、社会情勢を踏まえた大学側の取り組みや志願者側の意識の変化を捉える重要な指標と言えるだろう。学校基本調査の経年推移を見ると、「工学」や「理学」といった理系分野への女子の関心が高まっていることから、従来の志願傾向の男女差が少しずつ縮まりつつあることが分かる。これは、子どもや高校生を取り巻く周囲の関わりは勿論、大学が性別にとらわれない学びの機会、環境を提供してきた一つの成果の表れと言えるのではないだろうか。



(文/岡田 恵理子)


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