【寄稿】4期の認証評価のポイント及びその背景・要因/公益財団法人 日本高等教育評価機構 常務理事・事務局長 伊藤敏弘


公益財団法人 日本高等教育評価機構 常務理事・事務局長 伊藤敏弘


 日本高等教育評価機構(以下「当機構」)は、2018年度から第3期の認証評価を行っており、2023年度までの6年間で267大学と21短期大学の評価を実施した。最終年度となる今年は、73大学、6短期大学の評価を実施している。第3期の評価校数の合計は340大学、27短期大学となる見込みである。昨年度までに実施した大学・短期大学の総数288校中、内部質保証の基準における改善を要する点の指摘は、延べ98件にものぼる。約1/3の受審大学で指摘があるという状態だ。特に、学修成果、学長のガバナンス、法人運営で多くの指摘があり、内部質保証が十分に機能していない大学が少なからずある。

 当機構では、これらの状況を踏まえて、内部質保証の実質化を喫緊の課題として捉え、2022年度から第4期の評価システムの方向性について検討を始めた。検討に当たっては、2022年に文科省から出された「新たな時代の質保証システムの改善・充実について(審議まとめ)」及び当機構で2021年度に実施した第3期の評価システムの中間検証の結果や受審大学等からの意見等を勘案し、評価システムの改定を行い、2025年度からの第4期の評価では、専門職大学・短期大学にも対応できるよう準備を進めている。


図表 第3期の基準構成イメージ図、第4 期の基準構成イメージ図

第4期評価システムの方向性について

 第4期評価システムで目指すこととして以下の7つのポイントを掲げている。

①内部質保証の実質化を促進する

 当機構の各種研修会の解説資料の公開などの啓発活動を通じて、内部質保証についての理解を促すとともに、現行の基準6(内部質保証)を基準1(使命・目的)の次の基準2に移動させ、使命・目的の実現のための内部質保証という意味付けを強調し、より明確化させる。大学が作成する自己点検評価書においては、基準ごとに課題と改善状況、今後の取り組み予定を記述する欄を設け、改善への取組みを促すとともに、自己点検評価の結果、どのような改善がなされたかが分かるようにする。また、学生や学外関係者の意見・要望の把握・分析、結果の活用を内部質保証の機能性の基準項目に加えることとした。

②文部科学省の提言等との整合性を取る

 文部科学省の審議のまとめを受け、保証すべき「質」は、これまでの「教育」から「教育研究」の質と変更するとともに、中期的な計画や教学マネジメントなどの語句の整合性を図ることとした。

③大学の特色の進展に資する評価を更に強化する

 自己点検評価書に「成果が出ている取り組み」などを記述する場を設け、課題だけを抽出する評価を払拭し、優れた取り組みの評価や特色の進展に資するよう継続的かつ積極的な自己点検評価の取り組みを促す。さらに、独自基準と特記事項はこれまで通り継続することとした。

④大学が社会の支持を得るための支援を強化する

 大学がステークホルダーに評価結果などを周知することや高校、地方公共団体、民間企業などの意見を取り入れるなどを自己点検・評価をするにあたっての視点に追加。また、評価報告書の様式を工夫し、不適合の要因などが一目で分かるようにする。今後は、評価報告書にQRコードを付し、そこから評価結果の見方などの解説がスマホでも見られるようにする予定である。

⑤評価方法を効率化する

 評価スケジュールの全体の見直しを行う。これまで自己点検評価書の提出期限は、6月末日としていたが、10日程度前倒ししての提出を求める。これに伴い7月後半から第1回評価員会議を開始し、9月後半からの実地調査開始をそれぞれ前倒しして行うこととした。これにより受審校が多い年度においても11月下旬までに実地調査を終了させ、年内に受審大学へ評価チーム評価報告書案を送付することを可能とした。

 実地調査についても、これまで2泊3日で行っていたスケジュールを原則1泊2日とし、特色ある取り組みや課題等に絞った調査に変更する。ただし、当機構で初めて受審する場合、大学・短期大学同時受審の場合、加えて前回の当機構の認証評価で、内部質保証の基準に「改善を要する点」があった場合については、これまで通り2泊3日で行い全般を網羅した調査を継続することとした。また、期間を縮小するにあたっては、複数のキャンパスが所在する場合は、メインキャンパスへの訪問とし、別キャンパスの状況の確認が必要な場合は、大学に説明を求めることとした。

⑥大学・評価員双方の負担を軽減する

 エビデンス資料については、原則デジタルデータによる提出とする。ただし、評価員経験者からの要請を受け自己点検評価書についてはプリントアウトしたものの提出を求めるが製本などは必要としないこととした。また、最低限必要なエビデンス資料を指定することで必須の提出資料の精選化を図るとともに、公開情報は大学ポートレートを含めURLの提示に代替することも可能にした。

⑦評価校へのフォローアップのシステム化

 フォローアップとしては、適合認定を受けた大学で改善を要する点の指摘があった場合、大学は3年以内に改善報告書を作成のうえ、大学のホームページ上で公表し、併せて当機構への提出を求め、審査のうえ、大学にフィードバックしている。2023年度は26大学から88件の改善報告を受けた。審議の結果、68件の改善は確認できたが、20件は、改善傾向にある場合や改善が認められないという状況であった。定員や財務における指摘を受けても改善の取り組みが十分になされていないままの状態での提出が目立ち、フォローアップシステムが十分できているとは言えない状況である。このため、第4期では、改善を要する点が指摘された場合、大学に対し改善の指摘への早急な対応を求めつつ、指摘を受けた3年度後の提出を指定することにより、改善への取り組み状況とその後の実績を含めて十分に確認できるようにすることでフォローアップ機能を高めることとした。

大学に留意いただきたいこと、期待

 多くの大学が4回目の評価を受審するにあたり、適合認定を受けるための評価から、授業の改善や教育の改革の進展に資する評価への意識の改革が必要である。自己点検・評価や認証評価を定期的に実施することで、教育研究の質がさらに向上し、結果として良い人材の輩出、ひいては学生の募集にもつながってこそ、評価の本来の目的が達成できる。評価は必須であるが学生のために教育をよくするツールでありそれ自体が目的ではない。よって、教育研究の質向上のために十分時間をかける必要があり、そのため大学の自己点検・評価の実施にあたっても効率化と実質化が求められる。




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