高校教育現場はこう変わる 次期学習指導要領が目指す方向性1/文部科学省初等中等教育局(キャリアガイダンス2016.5 vol412)
平成34年度から年次進行で実施される次期学習指導要領。
現在、各教科について議論が進められていますが、改訂の狙いをはじめ、変更の要点や、それにともない高校現場に求められることについて、文部科学省に寄稿いただきました。
知っていることをどう使い
社会と関わっていくか
変化の予測が困難なこれからの時代を生きていく子供たちには、自立した人間として自らの人生を主体的に切り拓き、他者と協働しながら、よりよい社会を創造していくことができる力が求められます。
こうした中でこれからの子供たちに問われるのは、「何を知っているか」だけではなく、「知っていることをどう使い、どのように社会や世界と関わっていくか」であり、時代の変化や社会の要請を踏まえた新しい学習指導要領が求められています。
こうした背景のもと、中央教育審議会において次期学習指導要領等の在り方についての検討が始まりました。新たに設置された教育課程企画特別部会において、改訂の基本的方向性が議論され、昨年8月に「論点整理」としてとりまとめられました。以下にその概要を紹介します。
学校内に閉じない
「社会に開かれた教育課程」へ
学校は、子供たちにとって、現実の社会との関わりの中で、毎日の生活を築き上げていく場であるとともに、未来の社会に向けた準備段階としての場でもあります。このように学校の意義を捉え直したうえで、学校生活の核となる教育課程もまた社会とのつながりを大切にする必要があります。これからの教育課程には、社会の変化に目を向け、教育が普遍的に目指す根幹を堅持しつつ、社会の変化を柔軟に受け止めていく「社会に開かれた教育課程」の理念としての役割が期待されています。
このような「社会に開かれた教育課程」としては、次の点が重要になると考えられます。
① 社会や世界の状況を幅広く視野に入れ、よりよい学校教育を通じてよりよい社会づくりを目指すという理念を持ち、教育課程を介してその理念を社会と共有していくこと。
② これからの社会を創り出していく子供たちが、社会や世界に向き合い関わり合っていくために求められる資質・能力とは何かを、教育課程において明確化していくこと。
③ 教育課程の実施に当たって、地域の人的・物的資源を活用したり、放課後や土曜日等を活用した社会教育との連携を図ったりし、学校教育を学校内に閉じずに、その目指すところを社会と共有・連携しながら実現させること。
育成すべき「資質・能力」の
三つの柱とは
前回改訂において重視された、いわゆる学力の三要素(学校教育法第30条第2項に示された「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」「主体的に学習に取り組む態度」)のバランスの取れた育成や、言語活動や体験活動の重視等については、その成果を受け継ぎ、引き続き充実を図ることが重要であると考えられます。その上で、教育課程全体で子供にどういった力を育むのかという観点から、教科等を超えた視点を持ちつつ、それぞれの教科等を学ぶことによってどういった力が身に付き、それが教育課程全体の中でどのような意義を持つのか整理し、教育課程の全体構造を明らかにしていくことが求められています。
このため、学力の三要素を議論の起点としながら、学習する子供の視点に立ち、これからの子供たちに育成すべき資質・能力とはどういうものかについて、左記の三つの柱(図1)で整理して示しています。
ⅰ 「何を知っているか、何ができるか」(個別の知識・技能)
ⅱ 「知っていること・できることをどう使うか」(思考力・判断力・表現力等)
ⅲ 「どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか」(主体性・多様性・協働性 学びに向かう力、人間性等)
次期学習指導要領等については、資質・能力の三つの柱の全体を捉え、教育課程を通じてそれらをいかに育成していくのかという観点から、構造的な見直しを行い、教科等間の横のつながりとともに、幼・小・中・高の教育を、縦のつながりの見通しを持って系統的に組織していくことが求められています。