進学ブランド力調査2012(カレッジマネジメント Vol.176 Sep.-Oct.2012)

2008年から毎年発表しているリクルート「進学ブランド力調査」が、今年で5回目を迎えた。高校生の進路意識は、リーマンショック後の2009年を境に徐々に変化している。それは、その後抜け出せない経済不況、家計所得の減少、厳しい就職環境、それらに基づく将来不安と深く連動しているように見える。

この5年間の志願したい大学のトレンドを表すのであれば、『地元国公立志向』『安全志向』『資格志向』といった3つの志向である。

 国公立志向は、2009年以降、授業料の安さも相まって強まっている。授業料の高い理系では特に顕著である。さらに近年は、同じ国公立でも、家から通える地元の国公立の人気が高まっている。安全志向も、徐々に強まっている。経済的な事情から浪人できず、高校生の言葉を借りれば「憧れ校よりチャレンジ校」なのである。資格志向は、特に女子を中心にこの数年顕著な傾向だ。就職環境が厳しい中、資格取得が仕事に直結する教育、薬学、看護、栄養などの学部・学科を持つ大学が人気を集めている。結婚しても、子どもが生まれても、一生仕事が続けられる資格を取りたいと考える女子高生が増えているのだ。

 高校生が見た大学のイメージにも興味深い点がある。近年大学が力を入れている「国際的なセンスが身につく大学」「面倒見が良い大学」については、その中身がまだまだ伝わっていない。

 今回5年間の比較で見えてきたことがある。志願度を高めている大学に共通するポイントは、何らかの改革を実践し、順位が上がるだけのトピックがあることである。学部・学科の改編、入試改革、キャンパス移転、女子の受け入れ強化等である。しかし、改革の実行だけでは、高校生からの見え方は変わらない。これらをうまく高校生に伝えられる広報力、コミュニケーション戦略が重要である。

 大学のブランドイメージは徐々にだが、確実に変わってきている。親の世代が考える各大学のイメージとは異なっているかもしれない。高校生から、どのような大学として見られているのか。年に一度、高校生と学内のイメージギャップを見る機会として頂けると幸甚である。

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リクルート進学総研所長・カレッジマネジメント編集長

小林 浩

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