高校生から見た大学イメージはどう変化したか(カレッジマネジメント Vol.170 Sep.-Oct.2011)

今年も高校生から見た「進学ブランド力調査2011」をご報告する。先日発表された学校基本調査(速報)によると,日本の大学数は昨年より2校増加して780校。1992年,18歳人口が205万人でピークだった年の大学数は523校であった。2011年の18歳人口は120万人と当時より85万人(4割強)減少する一方で,大学数は257校増加したことになる。

大学進学率(過年度卒業者を含む)は51.0%と,前年より0.1ポイント増加したものの,大学進学者数は約6千人減少した。大学側から見れば,学生獲得の競争はさらに激化していることになる。

そうしたなかで,いかに高校生からの認知を高め,興味を持ってもらい,この大学で学んでみたいと思ってもらうかは大きな課題である。
各大学は建学の精神や教育理念に基づいて,3つのポリシー(アドミッション・ポリシー,カリキュラム・ポリシー,ディプロマ・ポリシー)を明確化し,高校生に様々なメッセージを発信して学生募集を行っているはずである。しかし,大学の内部で考えているイメージと,イマドキの高校生から見たイメージは一致しているだろうか。仮に,学内で考えているイメージと,高校生からのイメージが大きくずれているのであれば,「コミュニケーション戦略」を再考する必要がある。

重要なのはランキングではなく,コミュニケーションが学内外できちんと取れているか,メッセージは伝わっているかである。記者の方からよく「昔はこの大学,こんな良いイメージではなかった」という質問をされる。イメージが変化したり,現在成功している大学に取材にうかがうと,それぞれちゃんと理由があることがわかる。しかし,それは1年や2年でできるものではない。将来を見据えて10年近く改革を続けてきた結果が,やっと高校生や社会に浸透し,イメージが定着しているのである。


今年の調査では,長引く不況の影響を受けて,全体的に「地元」「国公立」志向や,「資格取得」に強い大学への志願度が高まる傾向が続いている。そうしたなかでも,大学改革に力を入れ,コミュニケーション戦略を磨いてきた大学では,私立であっても,高校生からの評価が高まっている傾向が見られる。

この調査は,同一の基準で集計方法を統一してから4回目となる。高校生から,どのように見られているか,メッセージは届いているか,イメージは学内外で一致しているか,一つの指標としてご参照いただきたい。なお調査は,関東・東海・関西エリア在住で,2012年3月卒業予定の高校生約7万2000人に対し,2011年4月に実施したもの。

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リクルート進学総研所長・カレッジマネジメント編集長

小林 浩

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