【TOP INTERVIEW】在学中に二級建築士と大卒資格両方を取得し、さらに一級建築士合格を目指す/京都建築大学校 理事長 新谷秀一


新谷秀氏

京都建築大学校 理事長 新谷秀一(しんたに ひでかず)
1940年生まれ
1958年 大阪府立城東工業高等学校電気通信科卒業
1975年 北摂ミサワホーム株式会社代表取締役社長
1991年 学校法人二本松学院理事長
1993年 一般財団法人京都伝統工芸産業支援センター理事長
1997年 近畿経済産業局長委嘱伝統的工芸品産業地方協議会委員
2016年 経済産業大臣委嘱伝統的工芸品月間推進会議委員
2021年 旭日中綬章受章


 大手ハウスメーカーのディーラーとして住宅建設の仕事に携わっていた私は、建設業界を担う有能な若手を育成しようと、1991年に京都建築大学校(KASD)を開校。「即戦力として社会に通用する人材の育成」を理念に、通常授業とは別に「建築士対策講座」として年間700時間を超える特訓により、在学中に二級および木造建築士資格を取得できるシステムを構築しました。これは大学に比べて柔軟なカリキュラムが組める専門学校ならではの取り組みで、KASD独自のシステムです。

 1995年には伝統工芸の後継者を育成する京都伝統工芸大学校を、2012年には高度な研究に取り組みながら学士と修士の学位が取れるだけでなく、ダブルスクールシステムによって在学中に二級建築士資格を取得できる京都美術工芸大学を開学(2022年には全国で11番目の建築学部を設置)しました。現在、3校合わせて約3500人が、それぞれ明確な目的意識を持って学んでいます。今回はKASDを中心にお話をしたいと思います。

在学中に二級建築士を取得する独自教育システム

 合格者の平均年齢が二級建築士は28歳(令和3年の合格率23.6%)、一級建築士は30歳前後(同9.9%)という数字が物語るように、建築士を目指すには、働きながら資格学校(学費は平均100万円前後)に通うのが一般的で、仕事と勉強の両立には莫大なエネルギーと費用を要します。これに対し、KASDでは開校以来30年で約5000人が在学中に二級建築士資格を取得。さらに大卒待遇での就職を可能にするため、2002年からは文部科学省と総務省が所管する放送大学※1と提携。本校教職員の手厚いサポートにより、2021年度は学士取得希望者333人全員が4年間の履修で学士号を取得しました。こうして多くの学生が、資格と学歴という、かけがえのない一生の財産を手にして社会に巣立っています。

 建築士資格をはじめ、空間デザインと設計能力を併せ持ち計画段階から竣工までトータルにインテリア空間を実現できる「インテリアプランナー」など、建築業界で役に立つ多彩な資格を持つKASD生は、大手ハウスメーカーや人気企業に多く就職しています。継続的に採用する企業もあり、高い就職実績が意欲ある入学者を増やすという好循環を生んでいます。

 大卒の初任給は平均で21~22万円ですが、最近ではIT業界などで能力に応じた初任給という例も出てきていると聞きます。KASDの卒業生の多くも、1年目から月収25~26万円以上という好条件で就職しています。建築士資格を取得して卒業するKASD生は、キャリア面でも待遇面でも、入社の時点で既にほかの新入社員を一歩リードしていることになります。

 資格学校の費用を負担するなどして社員の建築士資格取得を奨励している企業もありますが、それにかかるコストや時間、労力を考えると、有資格者を採用することは企業側にも大きなメリットがあるはずです。

法改正で在学中の一級建築士合格が可能に

 2020年の建築士法改正に伴い、建築系の大学や専門学校を卒業すれば、実務経験なしですぐに一級建築士試験が受験できるようになり、また、指定科目を修めて工業高校等を卒業すれば、二級建築士試験に挑戦できるようになりました。

 そこで私達は直ちに、在学中に一級建築士試験に合格するためのカリキュラムを編成しました。3年次までに二級建築士資格を取得し、4年次に一級合格へとつなげるものです。そして、同時に工業高校卒のアドバンテージを生かした「建築系高校出身者クラス」を設け、高校3年間で学んだ知識をベースに、2年次に二級建築士資格を取得できる体制を整えました。二級建築士資格があれば一級の受験資格が発生することから、これにより一級建築士にも早期に挑戦できるようになりました。

 2022年度は工業高校等出身者12人中11人が二級建築士の学科試験に合格。また、一級学科試験には17人が合格しましたが、このうち1人は工業高校出身です。建築系の大学生の場合は、二級建築士についても一級建築士と同様、卒業後に初めて受験資格が発生します。今回の結果で、工業高校等出身者は大学生よりも2年も3年も早く二級建築士資格が取れることが実証されました。

 実は私も工業高校出身で、長年にわたり同窓会長を務めてきましたが、せっかくの専門性を生かせないまま統廃合が進む工業高校の現状を憂いてきました。しかし、工業高校での3年間の学びをベースに、本校で資格試験対策に取り組むことによって、建築のプロが育つのです。

 一方、一級建築士については、2020年度に1人、全国最年少の21歳で一級建築士試験合格を果たしました。

文系でも建築士に

 建築士は医師や弁護士と同様、一度合格すれば生涯にわたってその業務に独占的に携わることができる国家資格です。それだけに、ただ学校に通うだけで得られるものではありません。かといって、卒業して働きながら勉強することも容易ではありません。ですから、建築業界を目指すなら、在学中にまず二級建築士を、そして一級建築士を目指して頂きたい。一般的に建築技術職の場合、建築士資格がなければ現場主任などの管理職に就くことができず、生涯年収で数千万円もの差がつくこともあるという現実を、ぜひ保護者や高校の先生方にも知ってもらいたいと思います。

 KASDには高校での文系出身者が多く、在学中の一級建築士合格学内第1号も商業高校出身者です。目標を持って臨めば誰でも建築士になれると言っても過言ではありません。

 KASDは4年制で得られる高度専門士号に加え、学士※2、建築士の資格が取得できる日本で唯一※3の教育機関です。私たちはそれを可能にするカリキュラムとノウハウ、そして情熱を持って全力でサポートします。



  • 放送大学 各分野のトップクラスの教員約2000人が、ハイレベルの授業を提供。4年以上の在籍期間にインターネット配信などにより、他大学と同様124単位を修得すれば、大学卒業資格が得られる。学問としての研究レベルや教材の難易度が高く、卒業率は30~40%(最短の4年間で卒業できるのは10%程度)と単位認定は厳格だが、KASDでは最短で無理なく卒業できるよう、単位の半数を内部の授業で修得できるカリキュラムを用意している。
  • 放送大学との併修修了により取得可能
  • 文部科学省HP「専修学校・各種学校一覧」より

(文/能地泰代 撮影/米本満穂)


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