【TOP INTERVIEW】小規模総合大学として、世界と地域に貢献する「品格あるグローバル人材」を育成/麗澤大学 学長 徳永澄憲


徳永澄憲

麗澤大学 学長 徳永澄憲(とくなが すみのり)
1952年生まれ
1975年 東京教育大学農学部卒業
1982年 筑波大学大学院博士課程単位取得満期退学
1992年 ペンシルべニア大学大学院博士課程修了
1996年 インドネシア国家経済開発庁経済顧問
2014年 筑波大学名誉教授、麗澤大学大学院経済研究科教授、経済学部教授
2019年 麗澤大学学長
2021年 日本地域学会会長

道徳をベースとした国際教育が特色

 麗澤大学は千葉県柏市に所在し、国際、外国語、経済の3学部、1学年あたりの学生数600名を擁する小規模大学です。創立者の廣池 千九郎が1935年に開塾した「道徳科学専攻塾」を前身としています。道徳科学専攻塾は、男女共学の全寮制で道徳をベースに語学を学ぶというユニークな学校で、知識と道徳は一つに調和すべきとする「知徳一体」を教育理念に掲げました。これを実学的に展開した「道経一体」の理念と、自分と相手と第三者の全員が利益を得る「三方よし」の思想は、現在のSDGsにも通じ、本学の教育に生かされています。

 1959年の大学開学から60年以上の歴史を持つ外国語学部は、少人数による語学教育と充実した留学プログラムが特色です。国際寮「Global Dormitory」と2020年に開設した国際学部では、日本人学生と留学生が交ざり合う異文化体験の教育の場を実践する等、国際教育にこだわってきました。

新たな時代に向けた教育改革を推進

 2019年の学長就任を機に、グローバル化、Society5.0時代、コロナ禍と、先が見えない混沌とした時代を生き抜くために、世界と地域に貢献する「品格あるグローバル人材」の育成を始動しました。

 「グローバル教育」「道徳教育」「データサイエンス教育」「キャリア教育」の4本柱からなる全学基盤教育「麗澤スタンダード」の導入と併せ、2022年度から教育システムの大改革も始めています。集中的、濃密な学修機会と、多様なチャレンジ・チャンスの提供を目的に、①従来の90分授業から、反転授業とアクティブラーニングで構成する100分授業へ変更、②クォーター制(4学期制)の導入、③アクティブラーニング型授業・ゼミナールを実施しています。

 100分授業やクォーター制には教員の負担は増えるため様々な意見がありましたが、グローバル教育を目指す本学としては、出席すれば単位がもらえるようでは社会に申し訳ありません。クォーター制で授業が週2コマになれば、集中的かつ濃密な学修が期待できます。さらにクォーター制なら、5月の留学帰国後すぐに6~7月の授業を受けられるので、海外で涵養した英語力を落とさずに済む等、様々なメリットがあるのです。そこで教員には、1~3クォーターで集中して教育に従事して頂き、最後の4クォーターは研究休暇の取得等を提案したところ、実際に休暇を取る教員も現れ、徐々に理解が得られてきました。従来型の文系大学に対するアンチテーゼという思いで取り組んでいます。

グローバル教育やSDGsで教育成果

 これまでの成果として、グローバル教育においては、コロナ禍でも、ネイティブ教員が正課外で語学学修支援を行う「iFloor」や、「オンライン留学プログラム」による国際交流を続け、THE世界大学ランキング日本版2022の国際性部門で全国12位になることができました。さらに2011年から「全米模擬国連大会」に連続出場している「麗澤模擬国連団体」が、2016年からの連続受賞に加え、2019年には過去最高の4つの賞を受賞し、その後「ハーバード世界模擬国連大会」に参加するなど広がりを見せています。

 SDGsにおいては、2019年から取り組んできた「道徳×SDGs科目」が浸透し、「麗澤大学SDGsフォーラム」の開催につながっています。各分野の専門家による講演と、SDGsで社会的課題を解決するアイデアコンテスト「SDGs学生プレゼンテーションコンテスト」を実施し、2022年度は社会貢献部門では「ケニア・貧困×教育=貧困削減プロジェクト」、経済・ビジネス部門では「バナナdeビール」の発表をした2グループの学生に最優秀賞を授与しました。

2024年、文理融合・横断型の小規模総合大学へ

 2025年に創立90周年を迎えるにあたり、本学の生き残りをかけ、デジタル化の国際競争力低下と、カーボンニュートラルを実践するグリーン人材の不足に対応すべく「文理融合・横断型教育への転換」を新ビジョンに打ち出し、2024年4月に2つの新学部を設置構想中です。

 1つ目は工学部(定員100名)で、情報システム工学専攻とロボティクス専攻を設置予定です。「テクノロジーに、愛を。」をスローガンに、想像力と創造力を身につけ、人と地球に優しい明日をデザインできるエンジニアを育てます。

 2つ目は経済学部から経営学科を独立させ、経営学部(同140名)を設置します。「未来をデザインする実学」を掲げ、「実学×データサイエンス×デザイン×クリエイティビティ」で新ビジネスを創出する人材を育てます。2つの新専攻としてビジネスデザイン専攻、起業家精神を育む日本初のファミリービジネス専攻を設置し、先行国ドイツのヴィッテン・ファミリービジネス研究所と提携を結び、昨年は国際シンポジウムを開催する等、着々と準備を進めています。

 既存の学部にも文理融合の新組織として、経済学部に(仮)ソーシャルデータサイエンスコース、外国語学部に(仮)英語・デジタルコミュニケーションプログラムを開始します。他にも2022年度から安全保障の専門家によるオムニバス形式の安全保障科目を先行開講したところ、学生の関心も高く、100名が聴講しました。

 総合大学となっても、やはり小規模にはこだわり、全体の定員を工学部純増(100名)の700名に抑えます。文理5学部が同一キャンパスに集結する小規模大学だからこそ、学部の垣根を越えた教育ができると考えるからです。これに「麗澤スタンダード」、100分授業、クォーター制で教育力を強化します。文系の麗澤から、文理融合・横断型の小規模総合大学に変わっていく中で、世界と地域に貢献する「品格あるグローバル人材」を育てるには、教育システムも変える必要があるのです。

 麗澤大学は2024年より大きく生まれ変わります。これまでも、たとえ入学時に英語力が低い学生でも、探究心と夢があれば学生の心に火をつけられる大学だと自負してきました。今後も学生の心に火をつける小規模総合大学として、「変化を恐れず進化する大学へ」と邁進していきます。

(文/能地泰代)


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