【寄稿】大学・短期大学基準協会の評価基準の考え方と 変更のポイント/一般財団法人大学・短期大学基準協会 理事 短期大学認証評価委員会 委員長 (学校法人志學館学園 志學館大学・鹿児島女子短期大学 理事長) 志賀啓一


一般財団法人大学・短期大学基準協会 理事 短期大学認証評価委員会 委員長 (学校法人志學館学園 志學館大学・鹿児島女子短期大学 理事長) 志賀啓一


大学・短期大学基準協会の評価の特色と課題

 大学・短期大学基準協会の認証評価の仕組みは、米国西地区学校・大学基準協会(WASC)二年制高等教育機関認定委員会(ACCJC)のアクレディテーションの手法を取り入れており、第2評価期間以降はACCJCと連携協定を締結し、当協会の適格認定の国際通用性を担保している。評価基準については、学生の学習成果、三つの方針、PDCAサイクル等を取り入れ、教育の質保証においては学習成果を焦点にした査定(アセスメント)を向上・充実の手法として明確にすることを主軸とした4基準を設け、評価校に対しては、自らの経営分析による経営の健全化を図るとともに、各大学の建学の精神に基づいた特色ある教育について、より一層の向上・充実を図る自己点検・評価を求めた(図表1)。


図表1 教育の質保証のためのPDCA


 令和2年にまとめられた「教学マネジメント指針」にも高等教育機関の内部質保証の確立について言及されており、これら大筋の方針については、本協会が確立してきた質保証のあり方に通じるものであり、国の政策のほうが、本協会が基本方針としてきたグローバル・スタンダードに近づいてきたとすら感じるところもある。一方で学習成果(学修成果)という用語について、やや視点が異なるため、ようやく周知されてきた本協会の「学習成果」の定義について、評価員や評価校から様々なご意見を頂くところである。しかし、教学マネジメント指針をきちんと読み解くと大意は変わるところではないので、今後これらは丁寧に説明していく予定である。

 また、これまでは短期大学のみの評価を行っていたが、第3評価期間途中より四年制大学の評価も実施することとなった。第4評価期間以降は大学・短期大学を併設する場合はもちろん、四年制大学であっても本協会評価を受けることについて、非会員校にもより広く周知を行い、対応していく予定である。

第4評価期間の変更のポイント

 第4評価期間についても基本的な方針は変わることはないが、大学設置基準や私立学校法の改正に対応した様式の改定のほか、これまでの意見を踏まえて、一部基準を変更することとなった(図表2)。基準Iについては、「A 建学の精神」に社会貢献の項目が含まれていたが、これを大項目に独立させた。基準IIについては、これまでも主軸としてきた学習成果と、厳格な運用が求められる入学者選抜を大項目として独立させた。基準IIIについては、大項目の変更はないが、設置基準改正等に伴い、観点を変更している。基準IVは、法令改正に基づき、項目名を変更し、また「C ガバナンス」に含まれていた情報公開を大項目に独立させた。


図表2 評価基準の変更点


 その他、本協会では前述の通り、基準の細部項目として「観点」を設けており、これまでは評価の際には、必ずその観点に対応した記載を求めていたが、これらを参考的な項目と位置づけることとし、内容も改定している。これにより煩雑さを解消するとともに、評価が柔軟かつ効果的に行えるよう図るものである。これら細部の内容については、今後のマニュアルや会員校向けの説明会等で紹介していく予定である。

今後の認証評価のあり方~外部の活用の推進~

 話は変わるが、本誌239号(2024年1-3月号)の「理事長の視界から考える法人経営の課題」という特集で、「危機の時代の大学経営の課題について考える-『理事長調査』報告」という記事が掲載された。この調査は本学園にもアンケートが郵送されてきたが、淘汰を前提とした設問が多く、また理事長向けにも拘わらず大学の視点での設問が多く、とても答えられるものでなかったため、回答しなかった。果たして、回答率は24.4%にとどまっていた。ただ、その限られた回答であっても垣間見える傾向としては、現在の大学経営については強い危機感があり、様々な施策を検討・実施しているが、その効果が不透明と感じていることはみてとれるものであった。

 ではよりよい大学のあり方を模索できるツールがあるとすれば、それは認証評価機関で出されている評価結果ではないだろうか。認証評価は制度化されて20年を超えようとしている。この約20年間で、内部質保証へむけたPDCAサイクルの確立については、一定の効果が見受けられるが、他方外部への説明や情報共有のツールとして活用されていることは皆無といってよいだろう。

 そもそも認証評価は、政界や経済界からは、大学は何をやっているか、どんな人材を育成するつもりなのか分からないという批判があり、説明責任を果たすために整理されたという側面もあるはずなのに、評価結果はもちろんのこと、学習成果や三つの方針を読んで入学を判断したという高校生や、卒業生の採用に活用したという企業など聞いたことがない。

 また、各種雑誌においても、今や受験者数の減少によって必ずしも実態を表しているといいがたいにもかかわらず、未だに偏差値によるランクづけなどが行われており、ネットスラングではFラン大学とひとくくりにされているケースもみられる。確かに、相対的な位置づけが明確な数値に基づくランクづけの方が分かりやすいかもしれないが、そろそろこの数多くの大学・短期大学の評価結果から、各校の特徴を読み解き、紹介する報道があってもよいのではないだろうか。そのためにも、認証評価機関は、より外部への発信を強化し、説明責任を果たせるよう努力していかねばならないと、自戒を込めて思うところである。




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