SKY/高崎商科大学
高崎商科大学は、「自主・自立」の建学の精神のもと、「実学教育」「人間尊重」「未来創造」を教育理念とする、創立112年もの歴史ある大学である。2017年4月に商学部商学科を再編し、経営学科と会計学科の2学科体制としてスタートしている。2018年1月に誕生した新校舎「SKY」は、2014年に策定された中期計画の一環として建設が決定されたものである。「本学のシンボルとして、今までにない新しいコンセプトの建物にすることを目指した」(事務局長・鰐渕一夫氏)との言葉通り、学内における象徴的な位置づけとなっているのはもちろん、地域の中でも際立つ斬新な外観となっている。鉄筋コンクリート構造の外壁には、全324本のガラスルーバーが上方へと伸びるように設置され、縦の美しいラインが強調されている。
「学生時代は、何をするわけでなくただ考えごとをする時間も大切にしてほしい」という渕上勇次郎学長の思いを反映した建物内部には、学生達が語り合い、時に思索や内省できるような居心地へのこだわりがある。その象徴となるのが1階の「SKY ATRIUM」だ。一般に、広い学生向けラウンジや学食等は端から席が埋まり無味乾燥な場に見えることもあるが、「食事が終わっても、授業がないときでも、真ん中から人が集まって寛げるように、中央部を一段下げてホテル並みのゆったりしたソファやテーブルを配している」(前出・鰐渕氏)という。さらにこの場には250インチの特注スクリーンがあり、オープンキャンパス時の説明会や社内外の研修会等にも使用されている。「本学は地域に根差した大学。今後は地域の方を巻き込んだ学生主体の企画を実施する等、整備したハードの活用の幅を広げたい」(広報・入試室長・鈴木洋文氏)と話す。高崎商科大学は2015 年度に文部科学省「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業(COC+)」にも参加校として取り組んでおり、同大学の地域貢献・地元密着を推進する役割を果たす「地域連携センター」もこの校舎の中に置かれている。企業や自治体から提示されるボランティア情報等に対して、学生が企画の段階から主体的に関わり実現に向けて取り組めるような機会提供の交渉や促進を行っている。学生の成長機会が地域社会への貢献にも繋がるよう接続を行っている。
そして商学教育を究める大学としての独自性ある取り組みとして、同大学では2011年に「経理研究所」を設置し、公認会計士や税理士をはじめとする難関資格の取得や会計のプロを育成するための専門的教育を実施しており、この「SKY」最上階に経理研究所の自習室がある。日商簿記2級レベルの学生には座席が与えられ、個人ごとにその実力に合った学習を受けられる。さらに1級をクリアするレベルに達すると、パーテーションで仕切られた個人スペースという環境でさらなる実力向上を目指して学習に集中できる。
この新しい校舎の中で刺激を受け、日々考え、主体的に学んだ学生達が、地域社会や産業界の中でどのような活躍をするのか、今後も期待したい。
「SKY」という名称は一般公募し、高崎商科大学短期大学部の学生の案が選ばれた。
外壁のルーバーに使用されているガラスはドイツ製。1枚が長さ5m、厚さ8.4㎝ある。
夜間はLEDライトが灯り、幻想的な情景を作り出す。
学び合いの場として作られた2階のラーニングコモンズ。
1階「SKY DINNING」は60席。150円で提供される朝食が好評。
1階「地域連携センター」。地域の自治体や企業と学生を繋ぐ場として機能する。
3つある教室は、仕切り方によってサイズが可変となる。空調はソックダクト方式により、風が直接当たる不快感をなくし、部屋全体の温度を均一にする。
4階の「経理研究所」。日商簿記2級合格レベル以上に達すると座席を得ることができる。
「経理研究所」の個人ブースは簿記1級以上の学生のみが使用。並び合うブースの学生同士の目が合わないようなパーテーションの配置をするなど細部にも細かく配慮。
4階の「経理研究所」。日商簿記2級合格レベル以上に達すると座席を得ることができる。
「経理研究所」の講師控え室。経理研究所では、大学の教授職だけでなく、複数名の公認会計士が講師として指導に当たっている。
(文/金剛寺 千鶴子)
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