アートサイエンス学科 新校舎/大阪芸術大学

大阪芸術大学アートサイエンス学科 新校舎



 大阪芸術大学は、15学科38コースを擁する総合芸術系大学である。大阪府南河内郡の緑豊かな丘陵を生かした広大な敷地にあるキャンパスで、多くの個性豊かな学生達が学んでいる。創立から70余年を経た2017年4月、「芸術」「情報」「社会」という3領域を柔軟に横断した新たなカリキュラムを体系化したアートサイエンス学科を新設。MIT MediaLab副所長・石井 裕氏、チームラボ代表・猪子寿之氏、NAKED Inc. 代表・松村亮太郎氏ら、第一線で活躍するクリエイターが客員教授を務めている。そして昨年11月、最先端の学びのさらなる実践の場として、「アートサイエンス学科新校舎(30号館)」が誕生した。

 設計者は、建築界のノーベル賞ともいわれる「プリツカー賞」をはじめ、数々の賞を受賞している妹島和世氏。海外においてはローザンヌ連邦工科大学建築の実績はあったが、日本国内において大学の建築設計を手掛けるのは、この新校舎が初だという。妹島氏はそのコンセプトについて、「特にこだわったのは、周囲との調和。入口から続く坂を上ると最初に目に入る位置に存在し、大阪芸術大学の顔となる建物になる。だからこそ、その先に続く敷地内の既存の建物や景観と一体化して見えるようにしたいと考えた」と言う。その言葉通り、コンクリートの外観は、一部は接地するように、別の一部は丘の隆起に沿って盛り上がるように、緩やかな曲線を描いて敷地全体の地形に自然に繋がっている。さらに妹島氏が設計のポイントとして挙げたのが、人々の交流が生まれる広場になるということ。「アートサイエンス学科の学生以外の人も気軽に立ち寄ることができる空間になるよう工夫した。色々な人が、制作の展示をしたり、ディスカッションやレクチャー等、多様な形で活用することがアートサイエンスという新しい分野の発展に繋がるのではないか」と話す。

 1階の共有スペース「アートサイエンスサロン」は、まさにその中心的な位置づけとなるエリアであり、様々な用途にフレキシブルに対応可能。そのエリアを囲むように、4つの講義室と8つの研究室が配されているが、いずれの部屋も屋外と直接繋がる出入口があり、建物の外との仕切りはガラスのため、開放的である。

 同大学副学長・塚本英邦教授は、「何かを組み合わせて全く新しいものを生み出す。そういった思想・思考能力は、どのような形でアウトプットをするにせよ、また学生が将来どういった道に進むにせよ、必要不可欠。その能力を培うために、新たな発想を可能にする刺激的な環境を提供したいと考えた。今後、この場所をどのように活用していくかは、学生達自身に自由に考えてもらいたい」と語る。

 学生達の新たな交流によって、アートサイエンスが織り成す化学反応がさらに加速する場となりそうだ。



大阪芸術大学アートサイエンス学科 新校舎の外観

鉄骨鉄筋コンクリート造・地上2階・地下1階の新校舎外観。緩やかな曲線が周囲の丘の景観へと繋がる。



大阪芸術大学アートサイエンス学科 新校舎1F研究室フロア

1階の研究室には全て外と中を繋ぐ出入口がある。外からも研究室内がガラス越しに見える。



大阪芸術大学アートサイエンス学科 新校舎の設計を担当した建築家・妹島和世氏

設計を担当した建築家・妹島和世氏。「色んな人が出会い、新しいことが起こる場所に」。



大阪芸術大学アートサイエンス学科 新校舎の外観(夜)

夜の幻想的な表情。



大阪芸術大学アートサイエンス学科 新校舎地下1Fギャラリー

地下1階にはギャラリーが3部屋。作品展示やイベントに活用予定。



大阪芸術大学アートサイエンス学科 新校舎地下1F工房

地下1階の工房は5部屋。アートサイエンス作品制作のための機器が充実。



大阪芸術大学アートサイエンス学科 新校舎内部の様子

広々とした内部空間。ワークショップや講演会、展示など多様な活用ができる。


(文/金剛寺 千鶴子)



【印刷用記事】
アートサイエンス学科 新校舎/大阪芸術大学