新宿キャンパス/桜美林大学

桜美林大学新宿キャンパス



 桜美林大学は、語学と国際教育を中心にした教育研究活動に力を入れるとともに、特定の分野にとどまらず隣接した分野も広く学ぶ「学群制」の導入が特長である。そして、5つある学群の一つであるビジネスマネジメント学群と大学院の経営学研究科が、この2019年4月より町田市から新宿区のキャンパスに移転した。ビジネスマネジメント学群は、経営学を共通して学びながら、一方で観光や流通等の特定の業種にフォーカスし双方を深くかつバランスよく学ぶほか、社会で求められる国際性、情報リテラシー、コミュニケーション能力についても身につけた「高度なビジネスパーソン」の育成を目指している。将来、自身がどんな業界でどんな仕事をしたいかにより異なる35の学習ストーリーがあり、学生はそれをモデルとしながら、あるいは自分なりのアレンジを加えながら、多様なカリキュラムを選択する。

 そんな独自性ある教育内容の成果をさらに高めることになるのが、この新宿キャンパスへの移転である。「ビジネスマネジメント学群は、町田キャンパスでも企業連携に力を入れてきたが、より企業の協力を得やすい都心部ならではの利点を生かし、リアリティある学修を推し進めていきたいと考えている」と、ビジネスマネジメント学群・学群長の山口有次教授は話す。特に着目すべきは、企業との連携におけるビジネス経験の深さであろう。例えば、旅行会社の近畿日本ツーリストとの連携では、建物1階に実店舗を開店し、モニターを通じて社員とコミュニケーションを取りながら、顧客対応を学生が取り仕切る。また、小田急百貨店との連携では、学生がマーケティング調査から商品企画し、採用が決まれば製造・販売まで携わる。あるいは、エントランス近くに併設されるカフェはゼロから経営内容を企画、アルバイトの調達や人員配置等も行う。食堂や売店についても、売り上げやメニューの人気度を分析し、会計的な視点から提言や改善を促す。

 「日本のインターンシップにおいては、学生が実習先で『お客さん』の立場から脱することは容易ではない。それならば、大学のほうに自ら実体験ができるシチュエーションを作ろうと考えた。学生達には、売り上げを上げたり、本格的な意思決定を迫られる重責を担いながら、リアルなビジネス体験を通じてより高度な学修につなげてほしい」と、山口教授は学びの狙いについて語る。

 さらに、このキャンパスの画期的な取り組みとして情報機器の活用がある。「最近は授業の出欠をICカードで取るケースは多いが、このキャンパスではビーコンを活用する。これにより、出欠確認だけでなく、学生達がキャンパス内のどこをどう使い、どう学んだかという学習量を図ることができるようになる。さらにそのデータを個人の学修ポートフォリオに記録し、個人の学修履歴と成績を関連づけることができる。さらに私達が手掛けようとしているのは『教育ビッグデータ』。学生達の活動プロセスと就職先の情報を結びつけることで、目標となる将来モデルにつながる学修のあり方を示すことができると考えている。

 ビジネスの研究をする私達としては、ビジネスでやっていることを教育界でも積極的に有効活用すべきだろうと考えている」(前出・山口教授)。

 ビジネスと教育の垣根を超えたキャンパスの挑戦はこれからも続きそうだ。



桜美林大学新宿キャンパス外観

高層ビルのビジネス街にほど近い立地ながら、喧騒を感じさせない新宿キャンパスの外観。



桜美林大学中央階段

2階に続く中央階段。踊り場はステージになるように設計。



桜美林大学電子図書館

完全ブックレス、完全電子化の図書館。利用する学生がつけているビーコンの情報により、ブースの満空情報も把握できる。



桜美林大学カフェテリア

カフェテリア。学生が企画・運営を全て行う学びの場でもある。



桜美林大学フード&カルチャーレクチャールーム

フード&カルチャーレクチャールーム。先生が作る料理を見て、食べながら、食に関する教養やビジネスマナーも身につける。留学生が自国の料理を作りパーティー会場として使用する等、多様な活用も想定。



桜美林大学研究室フロア

研究室フロア。壁が可動式になっており、ラーニングスペースと自由につなげられる。「ゼミの授業、卒業論文の指導も近い距離でできる。研究室という閉ざされたイメージだが、開放的な活用を目指したい」(山口教授)。



桜美林大学学習ブースと小教室

個人の学習ブースと小教室が並ぶ。



桜美林大学センテナリオホール

538人収容のセンテナリオホール。大人数での講義授業やチャペルアワー、講演会、学会等に活用される。



桜美林大学グローバルラウンジ

グローバルラウンジ。留学生との交流や語学学習が可能。



桜美林大学屋上庭園

屋上庭園。都心の真ん中にありながら広く空が望める。


(文/金剛寺 千鶴子)


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