静岡草薙キャンパス/常葉大学
常葉大学は、1980年に常葉学園大学として開学し、2013年に同一法人内の富士常葉大学、常葉学園大学、浜松大学の3大学が統合して誕生した総合大学である。2018年4月、そのフラッグシップキャンパスとして、JR草薙駅から徒歩4分の好立地に誕生したのが、静岡草薙キャンパスだ。主に教育学部、外国語学部、経営学部、社会環境学部、保育学部の5学部と短期大学部の2学科2専攻及び大学院3研究科の学生がこの新キャンパスで学んでいる。大学統合から5年、第2ステージを迎えるという機会に、ポーラ化成工業株式会社の工場跡地を譲り受けて建設したものである。
キャンパスのコンセプトは「GLOCAL KNOWLEDGE」。地域社会と協働し、世界にも視野を広げた教育研究の拠点となることを目指している。特に、同大学は教育理念の一つに「地域貢献」を掲げ、地域の発展成長に貢献してきたが、このキャンパスは、その拠点としての役割を強化している。副理事長の佐々木 弘氏は、「周辺地域との敷地の間に塀が全くない。学生食堂や図書館も一般に開放しており、町と一体化している。大学が生き残るには、地域から信頼される存在となることが不可欠」と語る。
そして同大学が、地域貢献を推進するために新設したのが「地域貢献センター」である。地域と大学との連携協力の総合窓口となることを目的とし、産学官の連携や、公開講座の実施、学生活動の支援等の取り組みを行う。なかでも多いのは学生に対するボランティア活動の支援要望だが、「学生が成長実感を得られるよう、企画運営も含めて一連のプロセスに携わる機会の提供や、活躍の成果をフィードバックしていただくことを地域の方には要望している」(地域貢献センター地域貢献課・課長 大石哲也氏)という。副学長の小田切真氏は「学生が企業と接するのはインターンシップぐらいしかない。大学内だけではできないことを、社会の現場で経験することで、就職活動においても良い影響があるだろうし、社会に出てから折れない心が培われる」と地域でのボランティアの意義について語る。
建築物は、A棟(ACT-SITE)・B棟(BASE‐SITE)・C棟(CREATIVESITE)・D棟(DISCOVERY-SITE)の4棟から構成され、ベースとなる空間を2階に設定し、キャンパス内を南北に貫く「トコハストリート」を北端のアリーナまでつなげている。「トコハストリート」は、各棟の間に設けた「スカイ・テラス」(写真)とともに学生の居場所となり、交流が生まれやすいよう工夫されている。また、学生の意向が随所に反映されており、「校舎が完成する前にワークショップを開き、キャンパス内をこのようにしたいという学生の要望も反映した」と教務部次長 河上泰秀英氏は話す。
今後に向けて、「本学は8割の学生が地元に就職する。いかに地域に貢献するのか、どのように静岡で生きていくのかを探す4年間にしてもらいたい」と佐々木氏(前出)は学生への期待を話す。さらに小田切氏は「学生主体、地域主体のキャンパスであることは変わらない。そのうえで、草薙という場が学園都市のように発展する中核となればと考えている」と語る。
キャンパス外観。JR草薙駅から徒歩4分で、国道にも面している。全ての階の東面から富士山を眺めることができる。
各棟の間をつなぐ開放的なスペース「スカイ・テラス」。お弁当を広げたり、放課後にダンスを踊ったりと、学生が自由に活用する。
図書館とラーニングコモンズのある「ナレッジスクエア」。経済産業省が推進するプレ金大学(社会人向け教育講座)や地域に向けた勉強会等も開かれている。
図書館内部。
900席ある学食「グラン・テーブル」は大勢で語り合える席から、おひとり様向けの席まで充実。ほかに500席を備えるカフェテリア「トコ・カフェ」もあり、学生はもとより近隣住民や会社員でにぎわう。
B棟にある吹き抜け部分。天井から明るい光が降り注ぐ。写真左側にある大学事務局には壁がなく、学生が問い合わせや相談をしやすい。
「アリーナ」は多目的に利用できる体育館。大きな階段は観戦席も兼ね、A棟からD棟を結ぶ2階の「トコハストリート」へとつながる。
400人収容の大教室。小規模の教室は可動式の什器。アクティブラーニング対応やICT対応に留意して整備している。
アイランド形式のトイレ。美しいトイレは女子学生からの評価が高い。
「地域貢献センター」。静岡草薙キャンパス開設と同時に作られた。学生ボランティア等地域の窓口となるほか、地元自治体や団体との連携・協力の推進、公開講座の開設等を担う。
(文/金剛寺 千鶴子)
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