GLOBAL LINKS/名古屋学院大学
名古屋学院大学の開学は55年前(1964年)であるが、その淵源は、1887年にアメリカ人宣教師・F.C.クライン博士が英語教育とキリスト教の伝道を目的として創立した名古屋英和学校まで遡り、大学の開学当初から、既に国際交流や英語教育に定評があった。1989年に外国語学部と留学生別科を開設してさらに英語教育を加速、現在では海外協定校は85校、送り出す留学生は毎年200名以上を数える。
そして2018年9月、新たな学びの拠点として開設したのが「GLOBALLINKS」である。
西中利也事務局長はその狙いについて、「国際教育推進のため、2010年に『i-Lounge』を開設し、外国語や異文化理解の学修を支援してきたが、非常に多くの学生の利用があり、キャパシティを超え、学修ニーズも多様化した。そこで全学部生がいつでも利用でき、あらゆる学修スタイルに対応する機能を充実させ、国際教育に関する全てを集約した施設を作りたかった」と語るとともに、この施設の特長として、大学と地域を繋ぐ社会連携の拠点という側面があることも強調する。国際教育と社会連携を併せ持つ意義について、長瀬賢俊国際センター課長は、「グローバル人材とは、自己のアイデンティティを持ち、国境を越えて自分の国や地域についてしっかり発信できる人。海外で自分と異なる価値観や文化の中で学ぶことと、地域において自分と違う世代や異文化に触れることは共通項がある。国際教育と社会連携を近づけることで、学生の多角的な学びを支援したいというのが根本的な思い」と話す。
「GLOBAL LINKS」を構成する2つの建物のうち、主に国際教育を担う3階建ての「言ことば館」に『i-Lounge』を刷新して開設。1階はコミュニケーションが生まれるような動的なフロア、2階は自学自習のための静的なフロア、3階は教室もあるテラスで、その3層を吹き抜けのイベントスペースである「コミュニティ・リンク」が縦に繋ぎ、建物全体に一体感を与えている。ここを中心に、ネイティブの講師と会話ができる英語ラウンジや、英語以外の言語や文化に触れることができる多言語・多文化ラウンジ、アクティブラーニングに適した教室等、多様な学修のスペースが広がる。「教室の形は全て円形。プレゼンテーションやグループディスカッションを行ううえで、自由なレイアウトが可能で、無駄な空間も生まれにくいという特長がある」と施設のハード面の検討を中心に行った箕浦太郎財務課長は話す。
今後の活用について西中氏は「全ての学生が『国際』というキーワードのもと、社会と交わりながら勉強する重要性に気づき、各学部での学修に結びつけてほしい」と期待する。
そして、『i-Lounge』の運営の主体者は、留学経験のある学生(TA)達だ。語学力や国際性を磨きたい学生を、先輩であるTAの学生が育て、自らも成長する場でもある。OBもそれを支援するという。「育てる学生をさらに育てていくという流れを大事にしていきたい」と、自身もOBの一人である長瀬氏は話す。箕浦氏も「学生がここで自由闊達に議論し、その知の波紋が社会に還元できるような機関でありたいと思う」と語る。
未来のグローバル人材への強い思いがあふれるキャンパスである。
150人収容可能な吹き抜けのイベントスペース「コミュ二ティ・リンク」。留学経験者が海外経験を話すイベントや、留学生のウエルカムパーティー、オリエンテーション、スピーチコンテスト等、多目的に活用。
GLOBAL LINKS外観。国際教育を担う「言ことば館」と、社会連携を担う「 恵めぐみ館」の2棟から成り、斜めに交差する渡り廊下で繋がる。デザイン的に変化に富むという観点と、様々な方向からの揺れに強いという耐震の観点がある。
社会連携センター。名古屋市、瀬戸市、多治見市、高山市等と連携し、学生達の地域での活動の橋渡し役を担う。社会連携センターのある「恵館」には、学生が運営するカフェも併設。
留学生と日本人学生、あるいは留学経験のあるティーチング・アシスタント(TA)と呼ばれる先輩学生と後輩達等、1階部分を中心に、多様なコミュニケーションが生まれる構造。i-StationはTAが常駐しており、何でも相談できる頼りになる存在。
(左)多言語・多文化ラウンジ。国際文化学部の教員や留学生が語学を教えるレッスン(サロン)を開く。中国語、韓国語、タイ語、インドネシア語、ポーランド語、スペイン語、ポルトガル語等、幅広い外国語を学べる。
(右)アカデミック・アドバイジング。外国人教員との自由な交流が生まれるスペース。画像センサーが機能し人が増えてくると照度を上げる。照明学会から優秀照明施設として表彰されている。
(左)木製の円形階段とカラフルなテーブルが楽しい雰囲気を醸し出す、ステップ・リンクは、個人でもグループでも自由に利用可能。コミュニティ・リンクとスピーカーが連動しており、イベントの様子をうかがうことができる。
(右)英語ラウンジ。中での会話は英語のみ。「SNS英語」「旅行英語」「発音指導」等、様々なトピックについて会話するランゲージ・テーブルという少人数のプログラムがあり、学生はWebから予約する。留学から帰った学生の学び直しのレッスンもある。
(左)アクティブ・リンクと呼ばれる教室は館内に7つあり、いずれも円形。透過性のガラス壁を多用することで、フロア全体には視界に動きが出るとともに、回遊性と賑わいが生まれている。音響面等、設備はアクティブラーニングのための機能を追求している。
(右)リーディング・スペース。ここも円形の造りで、包み込まれるような落ち着きがある。蔵書は洋書だが、学術書だけでなく、一般書店のような多様なジャンルがあり、好奇心が刺激されるラインアップが幅広く揃う。
(左)和のテイスト漂うジャパニーズ・ラウンジ。留学生が日本文化の体験をしたり、留学生と日本人学生が共に行う学外研修(エクスカーション)の発表をしたりと、ここも多文化多言語の交流の場の一つ。
(右)静かな個人学習スペース。個人ブースは語学で発音をチェックしたい人、スピーキングやリスニングを集中的に個人で学習したい人のための場所。
(文/金剛寺 千鶴子)
【印刷用記事】
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