新世紀のキャンパス 東京あだちキャンパス/文教大学
新キャンパス開設の背景
文教大学は、埼玉県越谷市の越谷キャンパス(教育学部・人間科学部・文学部)、神奈川県茅ケ崎市の湘南キャンパス(情報学部・国際学部・健康栄養学部・経営学部)の2キャンパス体制であったが、特に越谷キャンパスの狭隘化が進行しており、教育力、競争力を高める学部学科の再編が困難であったこと、上記2キャンパスは距離的な面から連携を取ることが難しい状況であったことから、大学の中核的な拠点を作り、今後の環境変化や様々な課題(①マーケット環境の厳しさが激化(他大学の様々な改革、都心回帰の進行等)、②文部科学省の規制強化(補助金のカット、学部増や定員増などの認可申請の厳格化)により学生定員の抑制が始まったこと、③本学の競争力が低下してきたこと、④志願者の自宅からの通学志向が高まっていること)に対しての対応を図ることが目的である。これは学園の長期ビジョンである「教育リーディング・ユニバシティ文教」を目指したものでもあった。
新キャンパスの設計コンセプト
キャンパス・ビジョンは、①広げる・広がる、②深める・高める、③伝統から未来へとし、大学を50年100年先へと繋げる契機(将来的な備え)としたいと「東京あだちキャンパス」建設を計画した。
設計のコンセプトは、大学から街へ広がる学びの風景「ラーニングランドスケープ」を描く“3つのわ”をデザインするとしている。
- 地域、社会との“和”をデザインする
- 人と人との対“話”をデザインする
- 人と環境にやさしい循“環”をデザインする
新キャンパスの特徴
新キャンパスの特徴は、以下の5つである。
- 東西南北4方向どの面にも顔を持たせ、フェンスレスの開放的なキャンパスとしたこと。
- 地域へ配慮、連携したキャンパスをゾーニングにし、団地中央に向かってキャンパスの東側には開放性の高いスポーツ施設・食堂・カフェなどの厚生ゾーンを配置した。住宅地が多い西側には静寂な環境が望ましい教育研究棟を配置したこと。
- 中庭(ケヤキコート)を取り囲み、各棟を2階で繋いだアクティブリングを設置し、雨に濡れることなく各棟への移動を可能とした。また、学生の主要動線を2階に設定し、図書館、講堂、食堂、ラーニングコモンズなど、特徴的な施設にアプローチしやすくしたこと。
- 南北に2本、東西に1本、クロスした歩行用通路(クロスモール)により、キャンパス内の機能的な歩行動線の確保と地域へ開かれた通路となっている。南北通路の1本は24時間通行可能としたこと。
- 環境に配慮したキャンパスとし、ユニバーサル・デザインであり、車椅子での通行に配慮した通路や多目的トイレを校内に14カ所設置した。
また、ZEB(※1) Ready(一次消費エネルギーを省エネ基準から50. 5%削減)の認証を取得し、先進的な環境配慮型キャンパスを実現したこと。
独自性がある設備やフロア等について
FFE(※2)のコンセプトは、Comfortableで、Comfortable LearningとComfortable Lifeとし、快適な学習環境とキャンパスライフを演出したこと。これにより、学生の滞在時間を高め、学びの定着や学生の満足度向上に繋げたいと考えている。特徴は以下の3つである。
- 図書館棟2階や教育研究棟2階、3階の大通路(コンコース)に多様かつ充実したラーニングコモンズを配置している。
- 一人でもグループでも能動的な学習(学びのサイクル=みつける→知る→考える→つくる→広める)を促すとともに、くつろぐスペースにもなっている。
- このコンコースは長さ約77メートル、幅約9メートルあり、教育研究棟の2階、3階に配置。建物内の通路上にラーニングコモンズを配置することにより、身近に活用できるものとしている。
今後の展望について
文教大学は、この東京あだちキャンパスの開設を契機に、「もっと文教」になるために生まれ変わる。培ってきた人材・知識・経験を、キャンパスを越えて融合し、多様性と柔軟な発想を持ち、互いに支え合うキャンパスで、新たな展開をしていきたいと考えている。3つのキャンパスを柱にした一つの文教で社会的課題の解決に挑戦し、広く社会の発展に寄与していきたい。
- ZEBとはNet Zero Energy Building(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の略称
- FFEとは「Furniture(家具)」「Fixture(什器)」「Equipment(備品)」の略称
キャンパス 外観
エントランス
大学事務局や図書館へのアクセスをしやすく、広々としたエントランスホールとなっている。
講堂(AITADE HALL)
学会、シンポジウムや各種講演会等の実施を想定し、キャンパスから情報発信の拠点と位置付けている。大学の同窓会、藍蓼会の名前を使用。
アイデア・クロッシング
教育研究棟2階のインタープレイコンコース(コモンズエリア)にあり、ワールドファニチャー
デザインの家具を配置。学生がくつろぎながら、考えをまとめられるエリアとしている。
ディスカッションスペース
教育研究棟3階のレディネスコンコース(コモンズエリア)にあり、集中してグループでのディスカッション、グループワークに取り組めるよう、仕切られたセミオープンのソファブースを配置。
グローバル・ルーム
「グローバルラウンジ」「えんがわラウンジ」で「グローバルコモンズ」を形成。国際的なコミュニケーションを図り、語学学習の支援を行う。
はなはたステージ
教育研究棟2階のインタープレイコンコース(コモンズエリア)のメインとなるエリア。小型のシアターのようなスペースで、プレゼンテーションやポスターセッションなどに使用できるほか、通常はくつろぎのスペースとしても活用。
講義室
図書館
特徴のある家具を配置。グループワーク、プレゼンテーション、ひとりで落ち着いての学習など、様々な学びのシーンを演出できる図書館となっている。
カフェラウンジ
落ち着きのあるくつろぎの空間で、毛長川沿いの自然にひらけた憩いのカフェラウンジ。広々とした屋外テラスも併設。
食堂
体育館
(文/伊藤 諭( 学校法人文教大学学園 法人事務局経営企画室 課長))
【印刷用記事】
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