新世紀のキャンパス X(クロス)棟/大同大学

大同大学キャンパス



 大同大学は、1964年に中部産業界の支援を受け設置され、2021年度時点では、学生数約3500人、教職員数約200人からなる私立大学である。2学部、7学科で構成され、「実学主義」を理念としている。

 建築学科の建築、インテリアデザイン、土木・環境の3専攻は、学園本部や他学科が集まる滝春校舎からやや南に離れた白水校舎にあったが、他学科との連携が難しいうえ、築50年を経て老朽化が問題視されていた。そこで、それらを新築移転し、大学キャンパスの一体化を図ることを目的に造られたのがこのX(クロス)棟(以下X棟)である。

 前面道路を隔てた滝春校舎のB棟には、広場に抜ける4層のピロティ状の開口があり、双方を視覚的につなぎ一体感を醸成するため、そこからX棟側へと延ばした東西66m、4層吹き抜けのDクロスモールを新校舎の軸とし、上空通路を介してつながることで動線の要ともしている。

 このDクロスモールや中庭を中心に、スタジオや講義室、ゼミ室等が囲むロの字型の平面とし、随所にラウンジやラーニングコモンズを配置することで、学生や教員たちに交流が発生する仕掛けとしている。また、スタジオ、講義室、実験室、ゼミ室、研究室を全てガラス張りとすることで、他の学生や教員達の活動が垣間見え、互いに見る・見られる・刺激しあう関係を誘発する場としている。

 1階がスタジオ等の実験室群と学生ホール、上空通路を介してB棟とつながる2階は講義室、3階は建築専攻とインテリアデザイン専攻が、4階は土木・環境専攻が使用するフロアとなっている。教員の研究室と4年生のゼミ室を、廊下を介して配置することで、すぐそこに教員と学生の交流が生まれる環境としている。

 さらに、実際にモノを見る、触れる、作ることを原点とする「実学主義」を掲げる大学にふさわしい学びの教材となる校舎を目指し、床や壁等には、コンクリートや金属、木材等、多様な素材を使用しているほか、天井を設けず構造や設備が見えるゼミ室やガラス張りのエレベーターなどを、「生きた教材」として配置している。

 最大の特長となるのが、今後のアクティブラーニング化に向けて設けられた、ラウンジとラーニングコモンズである。広く開かれた席であったり、少し奥まって落ち着くような席であったり、窓際のカウンター席であったりと、様々な特徴を与えて、21カ所に分散配置した。ゼミ活動やグループワークなど大人数の活動に適している場、誰かに相談するときに適している場等、それぞれの空間の性格に合わせた使われ方が既に始まっている。

 学生からは「ガラス張りの校舎は、最初は落ち着かないかと思ったけれど、全然そんなことはなくて、逆に見られていると思ったほうが集中できる」、といった声や、近年は在籍者数が増加している女子学生からも、「講義室が全部外から見られているほうがむしろ安心できる」、とポジティブに受け止められている。

 供用開始直後は、リモートと対面が半々の状態で開講したが、点在しているラウンジやラーニングコモンズでリモート授業を受ける学生も多く、密にならないように、好きな場所で授業を受ける状況が見られ、当初コロナとは無関係にイメージしていた学生による空間の使い方が、むしろより鮮明に見えてきた。一方、リモート授業が主流になる中、学生が集い、共に学び、共に競い合う、構想した本来の「学びの場」が戻ってきたときこそが本当にX棟が完成したときだともいえる。

 今後、時代がどのように変わっても変わることのないものが、「実学主義」という本学の理念だが、その「実学」もまた進化させていくために、2030年に向けた行動指針としてDAIDO VISION 2030を策定した。そのタグラインは『自分が変わる、未来を変える。』である。

 このX棟の活用を通して、本学の「実学」がさらに進化し、建学の精神である「産業と社会の要請に応える人材の養成」に応えつつ、『自分が変わる、未来を変える。』環境としていきたい。




大同大学 キャンパス外観

X棟東側の外観。
「社会に開かれた大学」を表す大きな窓と水平に重なる深い軒庇が特徴で、東側を走る名鉄常滑線の車窓から良く見える。



大同大学 上空通路

X棟とB棟に挟まれた公道をキャンパスストリートと位置づけ、ガラス張りの講義室・実験室を通りに面して配置した。
道路の上部にはガラス張りの上空通路が架かる。



大同大学 X棟

B棟から見たX棟。
上空通路によって2棟はつながり、開口部をX棟側に延ばした筒状空間が「Dクロスモール」となる。



大同大学 Dクロスモール東側

4階レベルから「Dクロスモール」の東側をのぞむ。
2・3階の廊下をすり鉢状の構成とすることで、学生の活動がよく見渡せる。



大同大学 Dクロスモールスタジオ

Dクロスモールの2階レベルからスタジオをのぞむ。
学生のアクティビティを互いに見合い、学びの刺激を受ける環境が生まれている。



大同大学 Dクロスモール南東側

4階レベルから「Dクロスモール」の南東側をのぞむ。
Dクロスモールを中心として、中庭やスタジオ、ラウンジやラーニングコモンズが分散配置されている。



大同大学 Dクロスモールスタジオ2

中庭に隣接した2層吹き抜けのスタジオ。2階廊下から授業の様子を見下ろすことができる。
手前は展示やプレゼンテーションができる大階段スペース。



大同大学 Dクロスモール3階ラウンジ

Dクロスモール西側の3階ラウンジ。開放的な吹抜空間で、上空通路接続先のB棟越しにキャンパスを一望できる。
モノトーンの家具を配置することで、落ち着いたラウンジの性格を持たせている。



大同大学 Dクロスモール3階ラウンジ

Dクロスモール東側の2階ラウンジ。
リラックスでき、カラフルな家具を配置することで、にぎやかなラウンジの性格を持たせている。



大同大学 ゼミ室

天井を設けず設備が見えるゼミ室。予め設置したライティングダクトなどを利用し、
ゼミ室ごとにカスタマイズして各々ゼミの個性を出している。
ガラス張りの廊下からは、ゼミ室を介して中庭やテラスへと視線が抜ける。



大同大学 ゼミ室

Dクロスモール、スタジオ、ゼミ室、ラウンジがそれぞれ面する中庭。
各室が中庭側にも出入口を持ち、中庭も主動線となる。



文/大同大学工学部建築学科 学科長 武藤 隆・教授
撮影/鈴木 文人


【印刷用記事】
新世紀のキャンパス X(クロス)棟/大同大学