新世紀のキャンパス 神戸三田キャンパス Ⅷ号館/関西学院大学
超長期ビジョンに基づく理系拡充
2022年9月に竣工した神戸三田キャンパス(KSC)の新校舎「Ⅷ号館」の建設の契機は、創立150周年に向けて策定された超長期ビジョン「Kwansei Grand Challenge 2039」(KGC2039)に始まる。KGC2039に基づいた長期戦略の中で理系充実が戦略的課題として設定され、2021年度よりそれまで理工学部1学部であったものを、理学部、工学部、生命環境学部、建築学部の4学部に拡充し、文系だけでなく理系にも強い総合大学としてのブランド力向上を目指す改革を行った。これによりKSCは、リニューアルした総合政策学部と合わせて5学部体制となり、不足する講義室を増設するために、Ⅷ号館建設が承認された。
建学の精神は形に宿る
KSC正門左手にあるランバスチャペルは、キリスト教主義教育を掲げる関西学院の象徴であるが、チャペルも含め建物は皆、スパニッシュ・ミッション・スタイルで統一され、新校舎も例外ではない。この関西学院の建築様式は日本の建築史に足跡を遺したヴォーリズに始まる。新設の建築学部には、「ヴォーリズ研究センター」が設置され、彼が建築に込めた想いを批判的に継承していこうとしている。これらの建物群は、単に機能的に存在しているだけでなく、原点である建学の精神に立ち戻る契機を与えてくれる。Ⅷ号館は、この精神を受け継ぎ、バスロータリーに隣接する形で正課外活動の拠点となるアカデミックコモンズ、学生生活を支える厚生棟と共に設置されている。
Ⅷ号館にはもう一つ見えないものを見る目が設置された。天体観望ドームである。ドーム内には主に新設の理学部物理・宇宙学科の学生が利用する反射型望遠鏡が設置されたが、現在学外利用も視野に入れて管理運営体制を検討している。
次世代のInnovatorを育てる教育
新学部設置に伴って、“Be a Borderless Innovator”をキャンパスのコンセプトとして、境界を越える革新者の育成を目指している。これを実現する教育研究として、①越境してくる世界的な課題に先進的研究による課題解決を提供するSustainable Energyの一大拠点形成、②海外学習科目による国境を越えるグローバルな学び、③学問の境界を越える分野横断型の教育プログラム、④大学の枠を超えて社会とつながるアントレプレナー育成プログラムの4つの柱を立てている。こうした教育・研究の一端を担うⅧ号館には可動式の教室を多く設置し、アクティブラーニングに対応できる構成としている。
今後新しい試みとして、キャンパス近隣にInnovator育成を視野に入れてインキュベーション施設と学生寮を併設する複合施設の建設を予定している。学生が日常的にイノベーションの現場に接することによって大きな刺激を受けることが期待され、Ⅷ号館も含めた既存の施設での教育との相乗効果を期待している。
事務統合によるサービス向上
Ⅷ号館のもう一つの特徴は、散在していた事務機能を集約した統合事務室の設置である。学生や教職員へのサービスをワンストップ化し、コンシェルジュ方式のカウンター対応で窓口を一元化した。パウダールームを設けたことも学生サービス向上の一環として位置づけられ、好評を得ている。事務機能自体の効率化・高度化も大きな課題であり、リラックスして打ち合せできるコミュニティラウンジや他に干渉しないでインターネット利用できるスペース等、各部署間の連携強化を意識した場が設置されている。今後、教職員、学生による境界を越えた相乗効果によって、KSCがさらに建学の精神を体現する場として活性化していくことを期待している。
(文/加藤 知 関西学院大学副学長・理学部教授)
キャンパス内に設置されたバスロータリーに隣接。
学生の多様な活動の場となるⅧ号館
屋上に設置された天体観望ドーム
キャンパス正門にあるアーチ。
スパニッシュ・ミッション・スタイルが、豊かな自然と調和する
1階統合事務室入り口。
コンシェルジュ方式のカウンターで教職員・学生サービスをワンストップ化
1階統合事務室のコミュニティラウンジ。職員同士が交流する場になっている
1階に設けられたパウダールーム
4階大教室。開放的な空間が広がる階段教室
次世代のInnovatorを育てる教育環境として、
アクティブラーニングに対応できる教室を整えている
理系にも強い総合大学としてのブランド力向上を目指す想いがこめられている。
屋上には天体観望ドーム。
天体観望ドーム内に設置された反射型望遠鏡。
今後は学外利用も視野に入れている
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